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【大型参加型】何でも屋Absolute Vanta残り3枠

#38

零とフラッシュ

フラッシュ「そこの手下!……もとい、首領。[漢字]我の右腕[/漢字][ふりがな]エナジードリンク[/ふりがな]を持ってこい。魔力が底を突きかけているのだ」

組織のアジトの一角、大きなソファに深く埋もれていたフラッシュ・ハックが、オーバーサイズの黒いパーカーの袖をぶんぶんと振った。顎の下の黒いマスクを少しずらし、青いつり目で部屋の主を睨みつける。彼女の言う[太字]魔力[/太字]がただの[下線]寝不足と疲労[/下線]であることは、この部屋にいる零とこの場にはいない組織の全員が知っていた。

部屋の主であり、組織の首領である零は、200センチの巨躯に漆黒のロングコートを揺らしながら、振り返って基本の笑顔を浮かべた。

零「はいはい、フラッシュちゃん。エナドリだね。でも、冷たいのばかり飲むとお腹壊しちゃうよ?」

フラッシュ「フラッシュちゃんって呼ぶな!我は神を支配する真の神なのだ!……あと、お腹は壊さない。我が結界は完璧だからな」

強がる彼女の爪は、黒色の付け爪。威嚇するように突き出された萌え袖の先を、零は怒る風でもなく、ただ愛おしそうに見つめる。彼は手元にあった、自分が作ったばかりの焼き菓子を綺麗なガラス皿に並べ、フラッシュの前のローテーブルに置いた。

零「エナドリもいいけど、こっちも食べなよ。今日のおやつは、特製のフォンダンショコラ。中から温かいチョコレートがトロッと出てくるんだ。ほら、ご飯やお野菜は苦手でも、甘いものは別腹でしょ?」

フラッシュ「ぬ、温かいチョコレートだと……? 凡人間め、我の好みを完璧に把握しているな。……いや、これは我の精神操作による誘導の成果か」

零「あはは、そういうことにしておこうか」

零は微笑みながら、彼女の隣に腰を下ろした。大きな身体を折り曲げるようにして座る彼の左耳で、深紅の宝石が付いたひし形のピアスが揺れる。

フラッシュは安いナイフを懐に忍ばせたままで、警戒するようにフォンダンショコラをフォークで小さく崩していく。中から溢れる濃厚な甘さに、青い瞳がほんの一瞬、16歳の少女らしい純粋な輝きを取り戻した。

フラッシュ「……美味い。やるではないか、首領」

零「よかった。全部食べられたら偉いねぇ。あ、フラッシュちゃん、口の横にチョコがついてるよ。動かないで、僕が拭いてあげるから」

フラッシュ「ふぎゃっ!? あ、あまりくっつくな! 我の威厳が崩れる……!」

純白の手袋をはめた指先で優しく口元を拭われ、フラッシュは顔を真っ赤にしておなじみのセリフを叫んだ。

実際のところ彼女の"能力"はかなり危険なものだ。しかし、零の周囲に張り巡らされた見えない「糸」の結界のせいか、あるいは彼自身の卓越した体術によるものか、零は彼女の突発的な能力の波動を、いつも柳のように受け流してしまう。

フラッシュは、それが少しだけ悔しく、そして同時に、どうしようもなく安心できた。
暗殺者に親を殺され、孤独なホームレスだった自分を、あの貼り紙ひとつで拾い上げてくれた男。
「此処のみんなは家族だよ」と言って、自分の歪な世界観を、否定も笑いもしないでいてくれる場所。

フラッシュ「……なぁ、首領」

ふと、フラッシュがフォークを止め、少しだけ寂しげな声を漏らした。
一生懸命に虚勢を張っている彼女の、本来の「泣き虫で天然な」素顔が、一瞬だけ剥き出しになる。

フラッシュ「我は……我の世界を、一生懸命貫いている。周りが我を『日本語が通じないやつ』と思おうが、関係ない。だが、お前は……お前だけは、我を本当にただの『壊れた人形』だとは思っていないか?」

その問いに、零の群青色の瞳が、すっと細められた。
平和主義を謳い、普段はムードメーカーとして振る舞う彼の奥底にある、冷徹で、されど絶対的な執着。大切な人を絶対に守るという、狂気にも似た意思が、笑顔の裏側で静かに脈打つ。

零は、フラッシュの少し長めの、先端が青い黒髪にそっと手を置いた。

零「まさか。僕は君のそういうところ、すごく素敵だと思うよ。自分の世界を忘れないで、周りに流されない強さを持っている。それはとても貴いことさ」

零の声は、どこまでも優しく、そしてどこか逃れられない糸のように鼓膜に絡みつく。

「ねぇ、約束だよ。僕に内緒で勝手に怪我したり、死んだりしちゃダメ。フラッシュちゃんが自分の世界を貫くお仕事をするのはいいけれど……もし危なくなったら、すぐに僕を呼んでね? 君の痛みなら、僕が全部『比翼の連環』で貰ってあげるからね」

フラッシュ「……っ、我が死ぬわけなかろう! 神なのだからな! 痛みを他人に押し付けるような真似は、この我が許さん!」

フラッシュはぷいっと顔を背けた。
誰かを思いやるあまり、自分の身を削ろうとする首領の悪癖。相手を尊重できるフラッシュだからこそ、その優しさに含まれる危うさを感じ取って、彼女なりに精一杯の拒絶を見せる。

零「あはは、頼もしいね。じゃあ、神様。疲れたらしっかり寝るんだよ?」

フラッシュ「言われずともそうする!……ふあ。疲れた!!!寝る!!!邪魔するな!!!!」

本当に限界だったのか、フラッシュはソファの上に丸くなり、オーバーサイズのパーカーに身を包んで目を瞑った。

零「おやすみ、僕の可愛い家族」

零は、彼女が完全に眠りについたのを確認すると、起こさないように、そっと漆黒のロングコートを脱いで彼女の体にかけてあげた。

自分の世界を必死に守ろうとする小さな少女と、その箱庭を絶対的な糸で守護する首領。
二人の静かで、少し歪で、けれど確かに温かい午後は、ゆっくりと更けていった。

作者メッセージ

あ、2000文字超えました。
これ、全話合わせたら何文字に、、。
あ、本編そろそろ始まります。
掛け合いのやつ一瞬消えたりするかもしれませんが、あまり気にしないでください。すぐ復活するんで。あ、まだ参加枠空いてるんで待ってます!

2026/06/07 09:32


ID:≫ 8hMcn.vWKf9vE
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