始まった。
誰もいない交差点。
信号だけが、意味もなく点滅している。
焔「……僕の前に立つなら、覚悟はできているんだろうね。火傷じゃ済まないよ」
京「最初から、わかっとる」
その瞬間——
びゅんっ
京「うおっ」
焔が一気に距離を詰めた。
足音が遅れて届く。
焔「これが……僕の、能力だ」
拳が振り抜かれる。
空気が歪み、熱波が炸裂した。
じゅっ
京「あっつ……!
なんやこれ……せやったら、うちも——《徒然草》」
世界が、止まる。
音も、熱も、焔の呼吸さえも。
京は、ゆっくりと距離を取る。
京「ほなな。
うちは、熱いの嫌いやけん」
——五秒。
止まっていた時間が、再び流れ出す。
焔「……今、何が……?」
京「さあな。
なんやろな」
焔「……まあいい。
また近づけばいいだけだ」
次の瞬間。
びゅんっ
アスファルトを割って、草が伸びる。
がしっ
焔の身体を、絡め取る。
焔「……!?」
京「さっきのお返しや」
焔のマフラーに、土が跳ねた。
焔「……おい」
声が、低くなる。
焔「マフラーを汚すな……
これは、僕に残された唯一の『絆』なんだ」
京「……そんなボロ布、
汚れてもええやろ」
京自身も、言ってから気づいた。
踏んではいけない線だったと。
焔「……今、これをボロ布って言った?」
焔は、もう京を見ていない。
ただ、燃えていた。
焔「……取り消せよ」
京「……そんなに、怒るんか……」
焔「……取り消せと言っているんだ」
次の瞬間。
焔「君が今から味わうのは、
地獄よりも熱い——怒りだ!!」
ぶわっ
焔の全身から、熱が噴き出す。
草が、燃え落ちる。
建物の壁が、赤く焼ける。
京「あー……
地雷、踏んでもうたな……」
京は後ろに跳び、距離を取る。
京「正直言うと……
今のは、うちが悪いわ」
しかし。
焔は、もう返事をしなかった。
拳を握り、
一歩、踏み出す。
地面が、溶ける。
——これはもう、試合じゃない。
止めなければ、どちらかが死ぬ。
[水平線]
気づけば、景色が切り替わっていた。
さっきまでの街は消え、
代わりに現れたのは——巨大な円形の空間。
段状に並んだ席。
天井はなく、どこまでも白い。
京「……は?」
座席には、すでに人影があった。
金色の髪の少年。
アホ毛の飛び出した少女。
紫の長髪が、静かに揺れている。
京「……なんやここ。
映画館でもないし、闘技場でもないし……」
誰も、答えない。
全員が、前を向いていた。
——中央の、何もない空間を。
京「……あー……
もしかして、ここで……」
京は、言葉を飲み込んだ。
これから戦う“色”たちを、見る席。
逃げ場はない。
目を逸らすことも、許されない。
背後に、気配が立つ。
審判「ここは観客席です」
いつの間にか、審判が立っていた。
京「……さっきまで、そこおらんかったやろ」
審判「私は、気配を消すのが得意なので」
淡々とした声。
審判「ここにいる間、貴方は安全です。
ただし——」
審判の視線が、前方へ向く。
審判「観る義務があります」
京「……義務、ねぇ」
京は、小さく息を吐いた。
京「まあ……
焔ちゃんが生きとるなら、ええわ」
そのとき。
観客席のどこかで、
小さく、息を呑む音がした。
青い髪の少女が、
両手を胸の前で握りしめていた。
黒いコートの人物が、
何もないところをただ見つめていた。
まだ、何も始まっていない。
それなのに。
すでに、この場所は息苦しかった。
誰もいない交差点。
信号だけが、意味もなく点滅している。
焔「……僕の前に立つなら、覚悟はできているんだろうね。火傷じゃ済まないよ」
京「最初から、わかっとる」
その瞬間——
びゅんっ
京「うおっ」
焔が一気に距離を詰めた。
足音が遅れて届く。
焔「これが……僕の、能力だ」
拳が振り抜かれる。
空気が歪み、熱波が炸裂した。
じゅっ
京「あっつ……!
なんやこれ……せやったら、うちも——《徒然草》」
世界が、止まる。
音も、熱も、焔の呼吸さえも。
京は、ゆっくりと距離を取る。
京「ほなな。
うちは、熱いの嫌いやけん」
——五秒。
止まっていた時間が、再び流れ出す。
焔「……今、何が……?」
京「さあな。
なんやろな」
焔「……まあいい。
また近づけばいいだけだ」
次の瞬間。
びゅんっ
アスファルトを割って、草が伸びる。
がしっ
焔の身体を、絡め取る。
焔「……!?」
京「さっきのお返しや」
焔のマフラーに、土が跳ねた。
焔「……おい」
声が、低くなる。
焔「マフラーを汚すな……
これは、僕に残された唯一の『絆』なんだ」
京「……そんなボロ布、
汚れてもええやろ」
京自身も、言ってから気づいた。
踏んではいけない線だったと。
焔「……今、これをボロ布って言った?」
焔は、もう京を見ていない。
ただ、燃えていた。
焔「……取り消せよ」
京「……そんなに、怒るんか……」
焔「……取り消せと言っているんだ」
次の瞬間。
焔「君が今から味わうのは、
地獄よりも熱い——怒りだ!!」
ぶわっ
焔の全身から、熱が噴き出す。
草が、燃え落ちる。
建物の壁が、赤く焼ける。
京「あー……
地雷、踏んでもうたな……」
京は後ろに跳び、距離を取る。
京「正直言うと……
今のは、うちが悪いわ」
しかし。
焔は、もう返事をしなかった。
拳を握り、
一歩、踏み出す。
地面が、溶ける。
——これはもう、試合じゃない。
止めなければ、どちらかが死ぬ。
[水平線]
気づけば、景色が切り替わっていた。
さっきまでの街は消え、
代わりに現れたのは——巨大な円形の空間。
段状に並んだ席。
天井はなく、どこまでも白い。
京「……は?」
座席には、すでに人影があった。
金色の髪の少年。
アホ毛の飛び出した少女。
紫の長髪が、静かに揺れている。
京「……なんやここ。
映画館でもないし、闘技場でもないし……」
誰も、答えない。
全員が、前を向いていた。
——中央の、何もない空間を。
京「……あー……
もしかして、ここで……」
京は、言葉を飲み込んだ。
これから戦う“色”たちを、見る席。
逃げ場はない。
目を逸らすことも、許されない。
背後に、気配が立つ。
審判「ここは観客席です」
いつの間にか、審判が立っていた。
京「……さっきまで、そこおらんかったやろ」
審判「私は、気配を消すのが得意なので」
淡々とした声。
審判「ここにいる間、貴方は安全です。
ただし——」
審判の視線が、前方へ向く。
審判「観る義務があります」
京「……義務、ねぇ」
京は、小さく息を吐いた。
京「まあ……
焔ちゃんが生きとるなら、ええわ」
そのとき。
観客席のどこかで、
小さく、息を呑む音がした。
青い髪の少女が、
両手を胸の前で握りしめていた。
黒いコートの人物が、
何もないところをただ見つめていた。
まだ、何も始まっていない。
それなのに。
すでに、この場所は息苦しかった。