とある貴方のおはなしです。
#1
とあるカメラのおはなしです。
とあるカメラのおはなしです。
このカメラは、時間を翔けるカメラです。
過去、あるいは未来を写すかもしれません。
いろんな人の手に渡り、いま流れ着いている場所は、
大きな通りの、小さな中古店です。
そのカメラはもう埃を被り、レンズにはヒビが入っています。
そこに、とある写真家がやってきました。
写真家は、その古ぼけたカメラを見て言いました。
「そこのカメラを、買おうかな」
中古店の店主は目を見開きました。
「いやぁ、それを買ってくれる人がいたとはね…」
「まぁ、もう使えそうにはありませんしねぇ」
「ところで、お客さんは何故それを?」
一つ間が空いて、写真家は答えた。
「このカメラは、私がずっと探していたもの。」
「…?」
「ようやく見つかったので」
店主は首を傾げた。
…が、店主はわからないまま、
「そのカメラ、タダで譲るよ」
「…えっ?」
写真家は何故か、と尋ねた。
「っはは、ここは中古店。巡り巡って顔見知りに逢うこともあるモンだ」
「なんか事情があるんだろ?」
「…ありがとさん」
写真家は、そのカメラを持って店を出た。
[水平線]
とある写真家のおはなしです。
この写真家は、うだつの上がらない写真家です。
何を撮っても失敗し、どのカメラを使っても下手でした。
もう自分自身も、写真の道は諦めようと
別の道へ行こうとしているところでした。
その写真家は山のふもとで、一人さみしく暮らしています。
そこに、とある商人がやってきました。
その商人は写真家に尋ねました。
「写真家さん。どうだい、カメラをひとつ」
「…どうせまた、しょうもない商売だろう」
「冷やかしなら帰っておくれよ」
商人は少し怪しげに笑いました。
「はは、いやだなぁ。勘違いはよして下さいよ」
「じゃあ、なんだ」
一拍おいて、商人は言った。
「このカメラ、時間を翔けるカメラなんです」
「……は?」
写真家は度肝を抜かれて、しばらく何も言えませんでした。
「このカメラは過去、あるいは未来を写すかもしれません」
写真家は少し悩んだが、こう言った。
「…買おうじゃないか」
その写真家は、目が据わっていた。
「おや、買う気になってくれましたか」
「あぁ、何円だ?」
「叶うなら、全財産使って欲しいところだが…」
「払う」
写真家は、何の迷いもなかった。
「…ですが、タダで譲りましょう」
「…いいのか?」
「えぇ、構いませんよ」
こうして、写真家はそのカメラを手に入れた。
写真家はまず、家の近くの山を撮ってみた。
すると写真には、今と違って枯木でいっぱいの山がありました。
「…今は冬か?」
写真家の頬を、すずしい初夏の風が吹いた。
「いや、6月だよな…」
「これは、去年見た山だ…」
「そっくり、そのまま」
少し街に出て、まだ木造りの駅を撮ってみた。
そこには、空飛ぶ車と、ホログラムの広告があった。
「…駅の、未来…」
「このカメラが時間を翔けると言うのは、本当だったのか」
写真家は、いろんなものを撮りました。
民家、花、街、河川、花壇。
みな、未来や過去を写していた。
その写真は、どれだけうだつの上がらない写真家でも
美しく撮れていました。
「…私は何をしているんだ」
「こんなもの、撮って何になる」
「未来を知ったって、つまらないじゃないか」
「私が撮りたいのは写真だ。」
「未来じゃない、過去でもない。」
写真家は、そのカメラを捨てようとした。
だが、最後に一つ、自分の写真を撮った。
——そこにはみなに依頼を受け、忙しそうな写真家がいた。
何度も何度も撮って確認した。
やはりそこには、忙しく駆け回る写真家が。
「…嘘こけ。忙しくなれるほど上手かねぇよ」
[水平線]
とあるカメラのおはなしです。
そのカメラを譲ってもらった写真家は言いました。
「…このカメラ、まだこの世にあったんだ」
「こんな夢を見せるだけのカメラ、なくなればいい」
…写真家が最後に撮った写真は、写真家の人生を悩ませていた。
写真家は写真の道を諦めきれず、数十年。
「こんな、こんなカメラ…!」
その写真家は、今度は本当に捨てた。
時間を翔けるカメラを。
そのカメラが写したものは全てが真実かは分からないが、
「あれが、嘘じゃないと信じたい」
——写真家は、あの光景を胸に抱いて夢を目指した。
そうして、そのカメラは再び誰かの手を離れた。
また次の持ち主を探すように。
このカメラは、時間を翔けるカメラです。
過去、あるいは未来を写すかもしれません。
いろんな人の手に渡り、いま流れ着いている場所は、
大きな通りの、小さな中古店です。
そのカメラはもう埃を被り、レンズにはヒビが入っています。
そこに、とある写真家がやってきました。
写真家は、その古ぼけたカメラを見て言いました。
「そこのカメラを、買おうかな」
中古店の店主は目を見開きました。
「いやぁ、それを買ってくれる人がいたとはね…」
「まぁ、もう使えそうにはありませんしねぇ」
「ところで、お客さんは何故それを?」
一つ間が空いて、写真家は答えた。
「このカメラは、私がずっと探していたもの。」
「…?」
「ようやく見つかったので」
店主は首を傾げた。
…が、店主はわからないまま、
「そのカメラ、タダで譲るよ」
「…えっ?」
写真家は何故か、と尋ねた。
「っはは、ここは中古店。巡り巡って顔見知りに逢うこともあるモンだ」
「なんか事情があるんだろ?」
「…ありがとさん」
写真家は、そのカメラを持って店を出た。
[水平線]
とある写真家のおはなしです。
この写真家は、うだつの上がらない写真家です。
何を撮っても失敗し、どのカメラを使っても下手でした。
もう自分自身も、写真の道は諦めようと
別の道へ行こうとしているところでした。
その写真家は山のふもとで、一人さみしく暮らしています。
そこに、とある商人がやってきました。
その商人は写真家に尋ねました。
「写真家さん。どうだい、カメラをひとつ」
「…どうせまた、しょうもない商売だろう」
「冷やかしなら帰っておくれよ」
商人は少し怪しげに笑いました。
「はは、いやだなぁ。勘違いはよして下さいよ」
「じゃあ、なんだ」
一拍おいて、商人は言った。
「このカメラ、時間を翔けるカメラなんです」
「……は?」
写真家は度肝を抜かれて、しばらく何も言えませんでした。
「このカメラは過去、あるいは未来を写すかもしれません」
写真家は少し悩んだが、こう言った。
「…買おうじゃないか」
その写真家は、目が据わっていた。
「おや、買う気になってくれましたか」
「あぁ、何円だ?」
「叶うなら、全財産使って欲しいところだが…」
「払う」
写真家は、何の迷いもなかった。
「…ですが、タダで譲りましょう」
「…いいのか?」
「えぇ、構いませんよ」
こうして、写真家はそのカメラを手に入れた。
写真家はまず、家の近くの山を撮ってみた。
すると写真には、今と違って枯木でいっぱいの山がありました。
「…今は冬か?」
写真家の頬を、すずしい初夏の風が吹いた。
「いや、6月だよな…」
「これは、去年見た山だ…」
「そっくり、そのまま」
少し街に出て、まだ木造りの駅を撮ってみた。
そこには、空飛ぶ車と、ホログラムの広告があった。
「…駅の、未来…」
「このカメラが時間を翔けると言うのは、本当だったのか」
写真家は、いろんなものを撮りました。
民家、花、街、河川、花壇。
みな、未来や過去を写していた。
その写真は、どれだけうだつの上がらない写真家でも
美しく撮れていました。
「…私は何をしているんだ」
「こんなもの、撮って何になる」
「未来を知ったって、つまらないじゃないか」
「私が撮りたいのは写真だ。」
「未来じゃない、過去でもない。」
写真家は、そのカメラを捨てようとした。
だが、最後に一つ、自分の写真を撮った。
——そこにはみなに依頼を受け、忙しそうな写真家がいた。
何度も何度も撮って確認した。
やはりそこには、忙しく駆け回る写真家が。
「…嘘こけ。忙しくなれるほど上手かねぇよ」
[水平線]
とあるカメラのおはなしです。
そのカメラを譲ってもらった写真家は言いました。
「…このカメラ、まだこの世にあったんだ」
「こんな夢を見せるだけのカメラ、なくなればいい」
…写真家が最後に撮った写真は、写真家の人生を悩ませていた。
写真家は写真の道を諦めきれず、数十年。
「こんな、こんなカメラ…!」
その写真家は、今度は本当に捨てた。
時間を翔けるカメラを。
そのカメラが写したものは全てが真実かは分からないが、
「あれが、嘘じゃないと信じたい」
——写真家は、あの光景を胸に抱いて夢を目指した。
そうして、そのカメラは再び誰かの手を離れた。
また次の持ち主を探すように。