それは偶然だった。
夜明け前、私は村外れの小さな墓を見つけた。
苔に覆われ、誰にも覚えられていない。
木札が一本、倒れていた。
裏返すと、名前が書いてあった。
読めてしまった。
それが、自分の本名だとわかった。
胸の奥で、何かが落ちる音がした。
その瞬間から、“夜”の気配が変わった。
近い。
濃い。
私を避けなくなった。
本名を知るということは、
世界に交わることが許されるということだった。
そして同時に——
“夜”に見つかるということでもあった。
その夜、私は歩かなかった。
歩かなくても、“夜”は来た。
夜明け前、私は村外れの小さな墓を見つけた。
苔に覆われ、誰にも覚えられていない。
木札が一本、倒れていた。
裏返すと、名前が書いてあった。
読めてしまった。
それが、自分の本名だとわかった。
胸の奥で、何かが落ちる音がした。
その瞬間から、“夜”の気配が変わった。
近い。
濃い。
私を避けなくなった。
本名を知るということは、
世界に交わることが許されるということだった。
そして同時に——
“夜”に見つかるということでもあった。
その夜、私は歩かなかった。
歩かなくても、“夜”は来た。