美羽が蒼空に頭を撫でられ、顔を赤くしながら「おやすみ」を言おうとした、その瞬間――
「「やっほーー! 二人とも、仲良くしてるー!?」」
豪邸の静寂をぶち破るハイテンションな声と共に、部屋のドアが勢いよく開いた。
そこに立っていたのは、美羽の母・恵美と、蒼空の母であり咲城財閥の夫人・恋花の二人だった。
「……お、お母さん!? なんでここに!?」
「ゲッ……母さんたち。勝手に入ってくんなよ、今いいところだったんだから」
蒼空が露骨に嫌そうな顔をする。
が、お母さんたちは聞かない。
蒼空母は高そうなコートを身につけ、美羽母はスーパーの袋を下げたまま、二人をニヤニヤしながら観察している。
「あら、蒼空。今のいいところって何? 詳しく聞かせて? 婚約指輪のカタログなら、もう10冊用意できるよ?」
蒼空母が優雅に笑えば、美羽母も美羽の肩をバンバン叩く。
「美羽、あんた顔赤いじゃない! 蒼空くんに何か✖︎✖︎なことでもされた? 」
「お母さん、変なこと言わないでよぉ!」
美羽が叫ぶが、お母さんたちは止まらない。
この二人、高校時代からの大親友なだけあって、息がピッタリなのだ。
「いいじゃない、恵美。私たちの子供が結婚するなんて、最高の恩返しよね。美羽ちゃん、この家は広すぎて掃除大変でしょう? 遠慮なく使用人をこき使っていいのよ」
「いや、自分でやったほうが早いんで……。あ、お母さん、その袋どうしたの?」
「これ? 来る途中の商店街で安かったから。色々買ってきちゃったのよ。ここのシェフにもおすそ分けしちゃったわ」
「……うちのシェフがネギ握りしめて困惑してたのは美羽のお母さんの仕業かよ」
蒼空が額を押さえてため息をつく。
超セレブな咲城家と、超庶民な成宮家。
全く正反対の二人が、このお母さんたちの「友情」と「勢い」だけで結ばれたのだということを、美羽は改めて痛感した。