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大姫鎌倉日記

#12

小咄,鎌倉の恋人

義仲が倶利伽羅峠で大勝した頃。これは鎌倉でのひとときの平和である。

幡姫は今日も今日とて義高に遊んでもらっていた。
義高は草笛を吹いている。幡姫もやってみたのだがどうしても上手くできなかった。
(でもいいの、義高様と一緒にいるだけで)
御所の塀の奥に見える初夏の山は青々としている。木の葉は日光を反射して、風に吹かれてきらきら輝いていた。
「姫、少しよろしい?」
暖かい日差しの気持ちよさにうたた寝しかけた幡姫は政子の声に飛び起きた。
「あっ、母上」
義高の方をちらりと見ると、
「姫はいってらっしゃいませ、私はちゃんとここに待っていますから」
と言ってくれたので、幡姫は母の後を追って駆け出した。
「母上、どうしたのですか?」
「小菊がね、しばらく御所を下がるから」
「えっ?」
あまりに突然のことで幡姫は固まった。
すると小菊が奥から出てきて、濡れ縁に正座し、幡姫の方を向く。
「姫、今まで言わずにおりましたが、小菊は腹にやや(赤子)がおりまする」
「…えええっ!?」
そう言われれば心当たりのないこともない。が、全然気付かなかった。
「言ってくれれば良かったのに、大変だったでしょ?」
「姫様が心配なさることはありませんよ」
そう言って彼女は腹を撫でた。
(小菊はお母様になるのね…あれ?)
「小菊って誰のお嫁さんになったの?」
幡姫の質問に政子達が顔を見合わせる。
「そう言えば言っていなかったわね…小菊は小四郎の妻になったのよ」
「小四郎叔父上!?」
今日はなんだか驚くことが多すぎて驚き疲れてしまった。
「知らなかった…けど、近頃小四郎叔父上がふにゃふにゃしてたのはそのせい?」
「ええ、まったく。それにしてもいつの間にあの子は…色恋には奥手と思っていたのにね」
政子が半ば呆れ半ば面白そうに言うと、小菊は庭に降りて幡姫のそばまで来た。
「実を言うと、姫様が心配で言い出せなかったのですが、義高様がいらっしゃって姫様に遊び相手が出来たので、安心してお休みを頂けます」
幡姫は一瞬不安に駆られたが、すぐに思い直し笑顔で言った。
「小菊は心配しないで、元気なややこを産んできてね」
「幡姫様…」
照れ顔で幸せそうにうなずいた小菊を見て、幡姫も嬉しくなった。
小菊が産んだ赤子は、後に鎌倉幕府の名宰相、北条泰時として名を残す。

つづく

[水平線]
<注意>
「小菊が義時の妻となり北条泰時を産む」流れは作者の推測を元にした創作です。
阿波局っていう幕府の女官が泰時の母親らしいんですが、その人は本名不明、出自も不明。

作者メッセージ

今回も読んでいただきありがとうございます!
サブタイトル、お菓子の名前みたいになりましたね。
別に入れる必要のないエピソードだったのですが、これから義時が色々可哀想な目に遭うので彼にお嫁さんのプレゼントです。勿論、責任持ってストーリーに絡ませます。

2024/02/21 19:08

青葉よしまつ
ID:≫ 4eITYY1IIrji.
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歴史日本史鎌倉時代源平合戦恋愛

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