さて、木曽義仲はこのところ平家との一進一退の戦いを続けている。
五月の初め、義仲は奇襲攻撃により平家方を撤退させる。
平家はその後[漢字]志雄山[/漢字][ふりがな]しおやま[/ふりがな]、[漢字]砺波山[/漢字][ふりがな]となみやま[/ふりがな]に陣を敷いた。
同月十一日。夜のことであった。
「行家様!準備すでに整いましてございます!」
「あいわかった」
砺波山の平家軍を見据える軍勢。率いるのは源行家。
義仲に命を救われたあの男である。
「行家叔父上は志雄山に向かってほしい。」
「私は本軍を連れて砺波山へ行く。十一日の夜に奇襲する」
「まったく知略に長けた男よ、木曽義仲」
行家はふん、と鼻を鳴らして鞭を振るった。「[漢字]倶利伽羅峠[/漢字][ふりがな]くりからとうげ[/ふりがな]の戦い」の始まりである。
突如としてなだれ込んできた軍勢に平家軍の人々はなすすべも無く、慌てふためいた。
「に、逃げろ逃げろ!!」
「早く、早く行け!!」
義仲の作戦はこれだけではなかった。
「こっちもだ、こっちからも義仲軍が!!」
「挟み撃ちになるぞ!!」
大混乱に陥る平家軍。
義仲は先に回り込ませた別動隊とで平家軍を挟んだのだ。
「どうにか敵のいない方へ逃げ…あっ!」
義仲軍の猛攻を逃れた兵士たちは辿り着いた地に絶望した。
前方には切り立った崖。背後には源氏軍が迫る。
このまま転落か、引き返し源氏と戦うか。
しかし彼らは決断する前に倶利伽羅峠の崖の下へ転がり落ちていった。
先に何があるかなど、何も知らずに逃げてくる兵たちに巻き込まれて。
沢山の兵士が崖下に消え、この戦によって平家は一気に力を失った。
この時の義仲の勝利が素晴らしいものだったため、かの有名な「火牛の計」、牛に松明をくくりつけて放ったという戦術の逸話が残った。
「皆のもの!この波に乗り、次は上洛じゃ!京を目指すぞ!!」
義仲の進撃が始まる。
つづく
五月の初め、義仲は奇襲攻撃により平家方を撤退させる。
平家はその後[漢字]志雄山[/漢字][ふりがな]しおやま[/ふりがな]、[漢字]砺波山[/漢字][ふりがな]となみやま[/ふりがな]に陣を敷いた。
同月十一日。夜のことであった。
「行家様!準備すでに整いましてございます!」
「あいわかった」
砺波山の平家軍を見据える軍勢。率いるのは源行家。
義仲に命を救われたあの男である。
「行家叔父上は志雄山に向かってほしい。」
「私は本軍を連れて砺波山へ行く。十一日の夜に奇襲する」
「まったく知略に長けた男よ、木曽義仲」
行家はふん、と鼻を鳴らして鞭を振るった。「[漢字]倶利伽羅峠[/漢字][ふりがな]くりからとうげ[/ふりがな]の戦い」の始まりである。
突如としてなだれ込んできた軍勢に平家軍の人々はなすすべも無く、慌てふためいた。
「に、逃げろ逃げろ!!」
「早く、早く行け!!」
義仲の作戦はこれだけではなかった。
「こっちもだ、こっちからも義仲軍が!!」
「挟み撃ちになるぞ!!」
大混乱に陥る平家軍。
義仲は先に回り込ませた別動隊とで平家軍を挟んだのだ。
「どうにか敵のいない方へ逃げ…あっ!」
義仲軍の猛攻を逃れた兵士たちは辿り着いた地に絶望した。
前方には切り立った崖。背後には源氏軍が迫る。
このまま転落か、引き返し源氏と戦うか。
しかし彼らは決断する前に倶利伽羅峠の崖の下へ転がり落ちていった。
先に何があるかなど、何も知らずに逃げてくる兵たちに巻き込まれて。
沢山の兵士が崖下に消え、この戦によって平家は一気に力を失った。
この時の義仲の勝利が素晴らしいものだったため、かの有名な「火牛の計」、牛に松明をくくりつけて放ったという戦術の逸話が残った。
「皆のもの!この波に乗り、次は上洛じゃ!京を目指すぞ!!」
義仲の進撃が始まる。
つづく
- 1.序幕,伊豆国の姫君
- 2.突然の危機
- 3.伊豆山の女性たち
- 4.鎌倉入り
- 5.木曽の将軍
- 6.人質と姫君
- 7.若武者の正体
- 8.福始
- 9.義高の懐郷病(一)
- 10.義高の懐郷病(二)
- 11.躍進する義仲
- 12.小咄,鎌倉の恋人
- 13.幡姫の立ち聞き
- 14.旭日昇天
- 15.没落の始まり
- 16.決別と忠告
- 17.最悪の予感
- 18.そして日は沈む
- 19.矛盾した願い
- 20.恐ろしい計画
- 21.守りたいひと(一)
- 22.守りたいひと(二)
- 23.知らせ
- 24.それぞれの後悔
- 25.巴御前
- 26.義経の憂鬱
- 27.屋島
- 28.壇ノ浦の海
- 29.歓喜と不信
- 30.亀裂
- 31.不穏
- 32.別離の襲撃
- 33.すれ違いの果てに
- 34.囚われの白拍子
- 35.幡姫と静(一)
- 36.幡姫と静(二)
- 37.空蝉
- 38.奥羽の重鎮