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大姫鎌倉日記

#9

義高の懐郷病(一)

義高が鎌倉へ来てから早くも一週間が経った頃。
小菊は政子と話している。
「姫様は変わられました…義高様が来てからというもの、毎日外に出て走り回っておりまする」
「そう、案じていましたが、仲良くやっているようね」
庭に目をやると、今日も二人で遊んでいる。
このところ、幡姫は時間さえあれば義高と遊んで、口を開けば義高とのことばかり話していた。
「姫様は昨日ご飯もお代わりなさいましたよ」
「まあ、それは良いこと」
政子は嬉しそうに声をあげて笑った。

ところが、幡姫に対して義高は少し元気がなかった。
幡姫もそれに気がついた。
「義高様、どこかお悪いのですか?」
「あ…いえ…」
「水が合わないのかも知れません、しばらくすれば良くなりましょうが…」
そばにいた義時が心配そうに言った。
「早くも信濃が恋しくなったんじゃないのか?」
突然声が飛んできて振り向くと、背の低い、色白の美青年が塀に寄りかかっていた。
「義経!」
次に飛んできた声の主は義経を小突いて軽く頭を下げた。
「九郎殿、範頼殿!」
頼朝の弟の源義経、源範頼だ。幡姫には彼らも叔父にあたる。
「俺は京だの平泉だの転々としてたからまだいいけど、木曽冠者は、生まれてからずっと暮らしてた故郷を離れたんだろう?新しい暮らしに慣れた頃になりやすい」
義高は義経から目をそらした。図星だったようだ。
(そうか、義高様は人質だから、寂しくても信濃に帰れないんだよね…)
「…義高様、ごめんなさい」
「気にしないで、姫が謝ることは無いんですから」
「ところで義経殿、いつからいたんですか?」
「結構前から」
義時の問いかけにひょうひょうと答える義経。
「お前はほんとあちこちに動き回って油を売って、仕方のないやつだ」
範頼はそう言いつつも義経に振り回されるのを楽しんでいるようにも見える。
すると義高が口を開いた。
「姫、…信濃で過ごしていた時のことを話してもいいですか」
彼の予想外の言葉に一同が驚く。
「余計に寂しさが募りませんか?」
「いえ、話させてください」
義経も義高に賛成した。
「誰かに話を聞いてもらった方が落ち着くこともあるからな」
義経は幼くして父、母に別れている。誰かにそうしてもらったことがあるのかもしれない。しかし追求しようとすると義経はそっぽを向いてしまった。
「姫様達は信頼出来るので聞いてほしいです」
(…私のこと信頼できるの、義高様)
幡姫は嬉しくて妙に浮ついてしまったが、すぐに真摯な目つきでうなずいた。
義高は岩に腰掛けた。

つづく

作者メッセージ

今回も読んでいただきありがとうございます。
義経くんは言いたいこと言っちゃう自由奔放な子。
範頼さんは義経のストッパー。

2024/02/19 18:19

青葉よしまつ
ID:≫ 4eITYY1IIrji.
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歴史日本史鎌倉時代源平合戦恋愛

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