徳川家光の将軍就任の挨拶が終わる。
「上様、お疲れ様でございました」
「上様」になったばかりの家光を迎えたのは乳母の春日局である。しかし家光は落ち着き無くそわそわと部屋の中をうろつき回っていた。彼の頭は先ほど会った伊達政宗という男のことでいっぱいになっていたのだ。
(なんとしても彼と話してみたい!さて、どうやって政宗に近付こうか)
勿論、将軍がほいほいと城外に出ることは出来ない。しかしこの将軍は若君時代から随分と自由奔放で、度々奥を抜け出したことがある。その都度青山なにがしとかに叱られたというが。今回もさらりと城兵の目をかいくぐり、外の大名屋敷へ向かった。
しかし家光は伊達家の門番に止められてしまった。
「ここはお主のような若造の来て良いところではない!帰れ帰れ」
「若造とはなんだ!儂は…!」
と言いかけて言葉に詰まった。自分でやっておいて何だが、騒ぎになっては困る。
家光が困っていると表の騒ぎを聞きつけた政宗がやってきた。
「なにをしておる…」
家光の顔を見て政宗は一瞬驚いたが、何か思いついたようで、
「この若者は俺の知り合いだ、お通ししろ」
「…はっ」
かくして家光は伊達家の屋敷に入れてもらうことができた。
政宗は人払いをし、家光を部屋に通した。
「驚きましたな、上様。お一人でお出かけになるとは」
どうやら政宗は騒ぎにしたくないという家光の思いを汲み取ってくれたようである。
「どんなご用でいらっしゃったのでございますか」
「儂は…戦国の生き残りを探しているのだ」
「ほう」
「私のお祖父様(家康)が乱世を終わらせてから私は生まれた。故に戦を知らん。しかし戦を見てきた者は次々世を去り、このまま人々から乱世が忘れ去られればまた世は乱れてしまう。」
家光は一呼吸おいて言った。
「どうか、そなたから儂に戦国の話を、昔話を聞かせてほしいのだ」
「…」
「お祖父様はそなたを…伊達政宗を認めておった。私はお祖父様の影をそなたに見たのだ、お祖父様と戦国の昔渡り合った伊達政宗に!だから頼む!」
「お祖父様が大好きなのですね」
政宗は笑った。
「そうですね、私も乱世はもうたくさんですし。…家康公の話もして差し上げましょう、上様」
家光は飛び上がらんばかりに喜んだ。
「政宗!ありがとうまた来るぞ!」
大喜びで帰って行く家光を、政宗はまるで彼の父である様な気持ちで見送った。
さて、江戸城へ戻った家光を待ちかまえていたのは春日局である。彼女は家光を叱ろうとしていたのだが、彼があまりに悪びれた様子も無く、明るく目を輝かせているので見逃してしまった。
こうして家光と政宗の交流が始まった。
続く
「上様、お疲れ様でございました」
「上様」になったばかりの家光を迎えたのは乳母の春日局である。しかし家光は落ち着き無くそわそわと部屋の中をうろつき回っていた。彼の頭は先ほど会った伊達政宗という男のことでいっぱいになっていたのだ。
(なんとしても彼と話してみたい!さて、どうやって政宗に近付こうか)
勿論、将軍がほいほいと城外に出ることは出来ない。しかしこの将軍は若君時代から随分と自由奔放で、度々奥を抜け出したことがある。その都度青山なにがしとかに叱られたというが。今回もさらりと城兵の目をかいくぐり、外の大名屋敷へ向かった。
しかし家光は伊達家の門番に止められてしまった。
「ここはお主のような若造の来て良いところではない!帰れ帰れ」
「若造とはなんだ!儂は…!」
と言いかけて言葉に詰まった。自分でやっておいて何だが、騒ぎになっては困る。
家光が困っていると表の騒ぎを聞きつけた政宗がやってきた。
「なにをしておる…」
家光の顔を見て政宗は一瞬驚いたが、何か思いついたようで、
「この若者は俺の知り合いだ、お通ししろ」
「…はっ」
かくして家光は伊達家の屋敷に入れてもらうことができた。
政宗は人払いをし、家光を部屋に通した。
「驚きましたな、上様。お一人でお出かけになるとは」
どうやら政宗は騒ぎにしたくないという家光の思いを汲み取ってくれたようである。
「どんなご用でいらっしゃったのでございますか」
「儂は…戦国の生き残りを探しているのだ」
「ほう」
「私のお祖父様(家康)が乱世を終わらせてから私は生まれた。故に戦を知らん。しかし戦を見てきた者は次々世を去り、このまま人々から乱世が忘れ去られればまた世は乱れてしまう。」
家光は一呼吸おいて言った。
「どうか、そなたから儂に戦国の話を、昔話を聞かせてほしいのだ」
「…」
「お祖父様はそなたを…伊達政宗を認めておった。私はお祖父様の影をそなたに見たのだ、お祖父様と戦国の昔渡り合った伊達政宗に!だから頼む!」
「お祖父様が大好きなのですね」
政宗は笑った。
「そうですね、私も乱世はもうたくさんですし。…家康公の話もして差し上げましょう、上様」
家光は飛び上がらんばかりに喜んだ。
「政宗!ありがとうまた来るぞ!」
大喜びで帰って行く家光を、政宗はまるで彼の父である様な気持ちで見送った。
さて、江戸城へ戻った家光を待ちかまえていたのは春日局である。彼女は家光を叱ろうとしていたのだが、彼があまりに悪びれた様子も無く、明るく目を輝かせているので見逃してしまった。
こうして家光と政宗の交流が始まった。
続く