力を増す頼朝に押される平家。また、この頃平家の脅威となっていたのは源頼朝だけではなかった。
[漢字]源義仲[/漢字][ふりがな]みなもとのよしなか[/ふりがな]。別名木曽義仲である。頼朝のいとこにあたる、信濃の武将だった。挙兵して以来平家との攻防を続けている。
月日は流れ1183年。
義仲のもとにある知らせが届いた。
「源頼朝の軍勢が、我らを攻めようと進軍中にござる!」
「鎌倉の軍か…力をつける我らが気に入らんのだろう」
特に慌てる様子もなく堂々とした様子の、この男が義仲だ。
「いざ戦となればこの私にお任せください」
頼もしい言葉を発したのは義仲の隣に静かに佇む女だった。
「まあ、待て、巴よ」
巴と呼ばれた彼女こそ、女武将[漢字]巴御前[/漢字][ふりがな]ともえごぜん[/ふりがな]ー数々の伝説を残す強者である。身に付けている大鎧と長槍には不釣り合いなほど美しい。
義仲は家人皆に言った。
「今は平家打倒に力を入れるべき時。ここは退こう」
頼朝は思わぬ行動に驚いた。
(ただの猪武者ではないな)
彼はさらに義仲に要求する。
「戦わないという証しに、叔父[漢字]行家[/漢字][ふりがな]ゆきいえ[/ふりがな]を差し出せ」
源行家はあの以仁王の令旨を持ってきた男だったが、後に頼朝と対立し木曽へ逃げ込んでいた。
(ここで叔父上を渡せば鎌倉で殺されてしまうかもしれん…源氏同士で殺し合うなどあってはならん!)
義仲はここでも頼朝の考えつかぬ返答をする。
「義仲め」
頼朝は鎌倉に送られてきた人質を見て溜め息をついた。いや、喜ぶべきなのだろうか。
「鎌倉殿、これは」
義時も驚いている。それもそのはず、義仲が行家の代わりに差し出したのはまさかの嫡男、[漢字]木曽義高[/漢字][ふりがな]きそよしたか[/ふりがな]だったのだ。
「後継ぎを送ってくるとは大した度胸であることだ、殺されぬと見越してか」
「義に厚い男でございますな」
「なんだ小四郎、儂への当てつけか」
「とんでもない」
とにかく、人質を出したことでひとまずは和議が結ばれたのだった。
つづく
[漢字]源義仲[/漢字][ふりがな]みなもとのよしなか[/ふりがな]。別名木曽義仲である。頼朝のいとこにあたる、信濃の武将だった。挙兵して以来平家との攻防を続けている。
月日は流れ1183年。
義仲のもとにある知らせが届いた。
「源頼朝の軍勢が、我らを攻めようと進軍中にござる!」
「鎌倉の軍か…力をつける我らが気に入らんのだろう」
特に慌てる様子もなく堂々とした様子の、この男が義仲だ。
「いざ戦となればこの私にお任せください」
頼もしい言葉を発したのは義仲の隣に静かに佇む女だった。
「まあ、待て、巴よ」
巴と呼ばれた彼女こそ、女武将[漢字]巴御前[/漢字][ふりがな]ともえごぜん[/ふりがな]ー数々の伝説を残す強者である。身に付けている大鎧と長槍には不釣り合いなほど美しい。
義仲は家人皆に言った。
「今は平家打倒に力を入れるべき時。ここは退こう」
頼朝は思わぬ行動に驚いた。
(ただの猪武者ではないな)
彼はさらに義仲に要求する。
「戦わないという証しに、叔父[漢字]行家[/漢字][ふりがな]ゆきいえ[/ふりがな]を差し出せ」
源行家はあの以仁王の令旨を持ってきた男だったが、後に頼朝と対立し木曽へ逃げ込んでいた。
(ここで叔父上を渡せば鎌倉で殺されてしまうかもしれん…源氏同士で殺し合うなどあってはならん!)
義仲はここでも頼朝の考えつかぬ返答をする。
「義仲め」
頼朝は鎌倉に送られてきた人質を見て溜め息をついた。いや、喜ぶべきなのだろうか。
「鎌倉殿、これは」
義時も驚いている。それもそのはず、義仲が行家の代わりに差し出したのはまさかの嫡男、[漢字]木曽義高[/漢字][ふりがな]きそよしたか[/ふりがな]だったのだ。
「後継ぎを送ってくるとは大した度胸であることだ、殺されぬと見越してか」
「義に厚い男でございますな」
「なんだ小四郎、儂への当てつけか」
「とんでもない」
とにかく、人質を出したことでひとまずは和議が結ばれたのだった。
つづく
- 1.序幕,伊豆国の姫君
- 2.突然の危機
- 3.伊豆山の女性たち
- 4.鎌倉入り
- 5.木曽の将軍
- 6.人質と姫君
- 7.若武者の正体
- 8.福始
- 9.義高の懐郷病(一)
- 10.義高の懐郷病(二)
- 11.躍進する義仲
- 12.小咄,鎌倉の恋人
- 13.幡姫の立ち聞き
- 14.旭日昇天
- 15.没落の始まり
- 16.決別と忠告
- 17.最悪の予感
- 18.そして日は沈む
- 19.矛盾した願い
- 20.恐ろしい計画
- 21.守りたいひと(一)
- 22.守りたいひと(二)
- 23.知らせ
- 24.それぞれの後悔
- 25.巴御前
- 26.義経の憂鬱
- 27.屋島
- 28.壇ノ浦の海
- 29.歓喜と不信
- 30.亀裂
- 31.不穏
- 32.別離の襲撃
- 33.すれ違いの果てに
- 34.囚われの白拍子
- 35.幡姫と静(一)
- 36.幡姫と静(二)
- 37.空蝉
- 38.奥羽の重鎮