時は1178年。京の都では平家が絶頂を極めていた時代であった。
しかしこの物語は東国の隅、伊豆国で始まる。
この頃の坂東…今でいう関東では、小さな豪族たちが京の貴族や平家からの圧力を受けつつ暮らしている。その中のひとつ、北条家。今日は一族皆が集まっているようだ。
中心には気品のある顔立ちの男と若い女がいて、赤子を抱いてみせている。
「父上。これが我らの娘でございますよ」
赤子を女から受け取った男はこの家の大黒柱、北条時政である。
「まったく、源氏の落ちぶれ貴公子と駆け落ちしたと思えば子までつくっ……こりゃあなんと愛らしい!きっとお前のように麗しい娘になるぞ、政子!」
「まあ嬉しい、私が必ずや立派なおなごに育てましょう、頼朝様!」
そう、この赤子の両親こそ、恐らく日本人なら知らない者はいないであろう、北条政子と源頼朝である。
「この子の名はなんとしたんだね?」
「[漢字]幡[/漢字][ふりがな]はた[/ふりがな]、としました。幡姫にございますよ」
「そりゃまた良い名だなあ!」
はしゃぐ時政を横目に、頼朝も娘を愛おしそうに見つめて言った。
「この子が幸せに生きられるように儂も頑張らねばのう」
幡姫は父、源頼朝の政略に巻き込まれ、翻弄され続ける人生を送ることとなる。それは幡姫に限らず、源頼朝の子に生まれた者の宿命といえるかもしれない。しかしこの場にいる人々にはそんなことは想像できるはずもなかった。
つづく
しかしこの物語は東国の隅、伊豆国で始まる。
この頃の坂東…今でいう関東では、小さな豪族たちが京の貴族や平家からの圧力を受けつつ暮らしている。その中のひとつ、北条家。今日は一族皆が集まっているようだ。
中心には気品のある顔立ちの男と若い女がいて、赤子を抱いてみせている。
「父上。これが我らの娘でございますよ」
赤子を女から受け取った男はこの家の大黒柱、北条時政である。
「まったく、源氏の落ちぶれ貴公子と駆け落ちしたと思えば子までつくっ……こりゃあなんと愛らしい!きっとお前のように麗しい娘になるぞ、政子!」
「まあ嬉しい、私が必ずや立派なおなごに育てましょう、頼朝様!」
そう、この赤子の両親こそ、恐らく日本人なら知らない者はいないであろう、北条政子と源頼朝である。
「この子の名はなんとしたんだね?」
「[漢字]幡[/漢字][ふりがな]はた[/ふりがな]、としました。幡姫にございますよ」
「そりゃまた良い名だなあ!」
はしゃぐ時政を横目に、頼朝も娘を愛おしそうに見つめて言った。
「この子が幸せに生きられるように儂も頑張らねばのう」
幡姫は父、源頼朝の政略に巻き込まれ、翻弄され続ける人生を送ることとなる。それは幡姫に限らず、源頼朝の子に生まれた者の宿命といえるかもしれない。しかしこの場にいる人々にはそんなことは想像できるはずもなかった。
つづく
- 1.序幕,伊豆国の姫君
- 2.突然の危機
- 3.伊豆山の女性たち
- 4.鎌倉入り
- 5.木曽の将軍
- 6.人質と姫君
- 7.若武者の正体
- 8.福始
- 9.義高の懐郷病(一)
- 10.義高の懐郷病(二)
- 11.躍進する義仲
- 12.小咄,鎌倉の恋人
- 13.幡姫の立ち聞き
- 14.旭日昇天
- 15.没落の始まり
- 16.決別と忠告
- 17.最悪の予感
- 18.そして日は沈む
- 19.矛盾した願い
- 20.恐ろしい計画
- 21.守りたいひと(一)
- 22.守りたいひと(二)
- 23.知らせ
- 24.それぞれの後悔
- 25.巴御前
- 26.義経の憂鬱
- 27.屋島
- 28.壇ノ浦の海
- 29.歓喜と不信
- 30.亀裂
- 31.不穏
- 32.別離の襲撃
- 33.すれ違いの果てに
- 34.囚われの白拍子
- 35.幡姫と静(一)
- 36.幡姫と静(二)
- 37.空蝉
- 38.奥羽の重鎮