[太字]━━━━━━┓ ┏━━━━━━━━━━━━━
啓蟄┃ ┃弐章
━━━━━━┛ ┗━━━━━━━━━━━━━[/太字]
いつの間にか桜と共に落ちる[漢字]霙[/漢字][ふりがな]みぞれ[/ふりがな]は[漢字]温[/漢字][ふりがな]ぬる[/ふりがな]くなり、暗く生暖かい[漢字]雨水[/漢字][ふりがな]うすい[/ふりがな]と成って、まだ白く[漢字]極光[/漢字][ふりがな]きょっこう[/ふりがな]を反射する地平線へと春風を泳ぐ。身を寄せ合う[漢字]丘陵[/漢字][ふりがな]きゅうりょう[/ふりがな]は、私のする様に、果てし無い[漢字]宙[/漢字][ふりがな]そら[/ふりがな]を見上げ、涙の乾いた星とピントを合わせる。カップを手に取り、湿った白い毛布を放す。既に冷えた身体を持ち上げて扉へと向かう。扉は閉まっていた。
私が彼を呼ぶより素早く、彼は言うのだった。
「来た」
……来た? なんと。
雨水はつらら型に捻じ曲げられ、[漢字]紫電[/漢字][ふりがな]しでん[/ふりがな]を[漢字]纏[/漢字][ふりがな]まと[/ふりがな]う突風が私の背後から襲い掛かる。
しまった、目を付けられていたのだ。
暖炉やランタンの灯りは吹き消え、夜の闇が部屋へ滲みだす。 [漢字]蹌踉[/漢字][ふりがな]よろ[/ふりがな]めきながらも立ち直すが振り返る間も無く外に放り出され、山小屋の周には、机に在った[漢字]筈[/漢字][ふりがな]はず[/ふりがな]の書類やら何やらが渦を巻く。存外強力である。
「今日は君がしてくれ。見てみたい」
[漢字]蜷局[/漢字][ふりがな]とぐろ[/ふりがな]巻く乱気流に呑み込まれていながらも、冷静沈着な影型の様子は、少し滑稽であった。荒れ狂う冬の[漢字]跫音[/漢字][ふりがな]あしおと[/ふりがな]……しかし、冷静にならなくてはいけない。[漢字]こ[/漢字][ふりがな]これ[/ふりがな]は、ある意味試されてもいるのだろう。
[大文字]〔[明朝体][太字][漢字]夅梦[/漢字][ふりがな]こうむ[/ふりがな][/太字][/明朝体]──弐・[明朝体][太字][漢字]煌湿穀雨[/漢字][ふりがな]カフシツコクユ[/ふりがな][/太字][/明朝体]、[明朝体][太字][漢字]瑠璃鶲[/漢字][ふりがな]ルリヒタキ[/ふりがな][/太字][/明朝体]〕[/大文字]
……私の付喪は[明朝体][太字]桜[/太字][/明朝体]である。
辺りはしんと静まり、[漢字]薄明光線[/漢字][ふりがな]はくめいこうせん[/ふりがな]が、透き通る枝先を照らす中、激しく飛び交う桜色の[漢字]花弁[/漢字][ふりがな]はなびら[/ふりがな]に縁取られ、竜巻はゆっくりとばらけていく。湯気の様に立ち昇るホワイトピンクの渦は、呼び戻されたかの様に、徐々に散り散りに成って行き、幾千もの地衣をびっしりと生やした、年老いた桜の樹々を露わにした。
[漢字]望楼[/漢字][ふりがな]ぼうろう[/ふりがな]は八方に裂け、米の字形に広がっている。書物が[漢字]総[/漢字][ふりがな]すへ[/ふりがな]て飛出し、もはや埃すら残ら無い木製の本棚やら無茶苦茶に割れた[漢字]真鍮[/漢字][ふりがな]しんちゅう[/ふりがな]の洋風ランプやら、息絶えたガラス枠の[漢字]絡繰時計[/漢字][ふりがな]からくりとけい[/ふりがな]やらが、その交点から[漢字]梁[/漢字][ふりがな]はり[/ふりがな]先に掛けて、指関的に高くなるような形にばらけた[漢字]淡紅色[/漢字][ふりがな]たんこうしょく[/ふりがな]の[漢字]斑尾[/漢字][ふりがな]まだら[/ふりがな]模様の乾いた地面。一つ一つの芝生まで細かく手入れされて居るが、よく見るとただ精巧に出来ただけの、柔らかいプラスチックの人工芝で在った。マグカップを其の[漢字]梁[/漢字][ふりがな]はり[/ふりがな]の中心に置く。ひどく[漢字]罅[/漢字][ふりがな]ひび[/ふりがな]割れしまい、塗装は全て剥がれてしまった。古そうな外観だ。霧のかかった南側から、未だ見慣れない鉄の器具を持ち、歩いて来る光がある。
こちらに差出す様だ。
「あっ、頂きます……有り難うごさいます、毎回」
「お疲れ様。[漢字]抹茶拉鉄[/漢字][ふりがな]まっちゃらて[/ふりがな]、用意してる。」
『[明朝体][太字][漢字]縞栗鼠[/漢字][ふりがな]しまりす[/ふりがな][/太字][/明朝体]』──時を操り”狩”をする、[明朝体][太字][漢字]桜系蛞蝓[/漢字][ふりがな]おうけいかつゆ[/ふりがな][/太字][/明朝体]の戦闘民族。
[太字] ┏━━━━━━━━━
┃END☆
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啓蟄┃ ┃弐章
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いつの間にか桜と共に落ちる[漢字]霙[/漢字][ふりがな]みぞれ[/ふりがな]は[漢字]温[/漢字][ふりがな]ぬる[/ふりがな]くなり、暗く生暖かい[漢字]雨水[/漢字][ふりがな]うすい[/ふりがな]と成って、まだ白く[漢字]極光[/漢字][ふりがな]きょっこう[/ふりがな]を反射する地平線へと春風を泳ぐ。身を寄せ合う[漢字]丘陵[/漢字][ふりがな]きゅうりょう[/ふりがな]は、私のする様に、果てし無い[漢字]宙[/漢字][ふりがな]そら[/ふりがな]を見上げ、涙の乾いた星とピントを合わせる。カップを手に取り、湿った白い毛布を放す。既に冷えた身体を持ち上げて扉へと向かう。扉は閉まっていた。
私が彼を呼ぶより素早く、彼は言うのだった。
「来た」
……来た? なんと。
雨水はつらら型に捻じ曲げられ、[漢字]紫電[/漢字][ふりがな]しでん[/ふりがな]を[漢字]纏[/漢字][ふりがな]まと[/ふりがな]う突風が私の背後から襲い掛かる。
しまった、目を付けられていたのだ。
暖炉やランタンの灯りは吹き消え、夜の闇が部屋へ滲みだす。 [漢字]蹌踉[/漢字][ふりがな]よろ[/ふりがな]めきながらも立ち直すが振り返る間も無く外に放り出され、山小屋の周には、机に在った[漢字]筈[/漢字][ふりがな]はず[/ふりがな]の書類やら何やらが渦を巻く。存外強力である。
「今日は君がしてくれ。見てみたい」
[漢字]蜷局[/漢字][ふりがな]とぐろ[/ふりがな]巻く乱気流に呑み込まれていながらも、冷静沈着な影型の様子は、少し滑稽であった。荒れ狂う冬の[漢字]跫音[/漢字][ふりがな]あしおと[/ふりがな]……しかし、冷静にならなくてはいけない。[漢字]こ[/漢字][ふりがな]これ[/ふりがな]は、ある意味試されてもいるのだろう。
[大文字]〔[明朝体][太字][漢字]夅梦[/漢字][ふりがな]こうむ[/ふりがな][/太字][/明朝体]──弐・[明朝体][太字][漢字]煌湿穀雨[/漢字][ふりがな]カフシツコクユ[/ふりがな][/太字][/明朝体]、[明朝体][太字][漢字]瑠璃鶲[/漢字][ふりがな]ルリヒタキ[/ふりがな][/太字][/明朝体]〕[/大文字]
……私の付喪は[明朝体][太字]桜[/太字][/明朝体]である。
辺りはしんと静まり、[漢字]薄明光線[/漢字][ふりがな]はくめいこうせん[/ふりがな]が、透き通る枝先を照らす中、激しく飛び交う桜色の[漢字]花弁[/漢字][ふりがな]はなびら[/ふりがな]に縁取られ、竜巻はゆっくりとばらけていく。湯気の様に立ち昇るホワイトピンクの渦は、呼び戻されたかの様に、徐々に散り散りに成って行き、幾千もの地衣をびっしりと生やした、年老いた桜の樹々を露わにした。
[漢字]望楼[/漢字][ふりがな]ぼうろう[/ふりがな]は八方に裂け、米の字形に広がっている。書物が[漢字]総[/漢字][ふりがな]すへ[/ふりがな]て飛出し、もはや埃すら残ら無い木製の本棚やら無茶苦茶に割れた[漢字]真鍮[/漢字][ふりがな]しんちゅう[/ふりがな]の洋風ランプやら、息絶えたガラス枠の[漢字]絡繰時計[/漢字][ふりがな]からくりとけい[/ふりがな]やらが、その交点から[漢字]梁[/漢字][ふりがな]はり[/ふりがな]先に掛けて、指関的に高くなるような形にばらけた[漢字]淡紅色[/漢字][ふりがな]たんこうしょく[/ふりがな]の[漢字]斑尾[/漢字][ふりがな]まだら[/ふりがな]模様の乾いた地面。一つ一つの芝生まで細かく手入れされて居るが、よく見るとただ精巧に出来ただけの、柔らかいプラスチックの人工芝で在った。マグカップを其の[漢字]梁[/漢字][ふりがな]はり[/ふりがな]の中心に置く。ひどく[漢字]罅[/漢字][ふりがな]ひび[/ふりがな]割れしまい、塗装は全て剥がれてしまった。古そうな外観だ。霧のかかった南側から、未だ見慣れない鉄の器具を持ち、歩いて来る光がある。
こちらに差出す様だ。
「あっ、頂きます……有り難うごさいます、毎回」
「お疲れ様。[漢字]抹茶拉鉄[/漢字][ふりがな]まっちゃらて[/ふりがな]、用意してる。」
『[明朝体][太字][漢字]縞栗鼠[/漢字][ふりがな]しまりす[/ふりがな][/太字][/明朝体]』──時を操り”狩”をする、[明朝体][太字][漢字]桜系蛞蝓[/漢字][ふりがな]おうけいかつゆ[/ふりがな][/太字][/明朝体]の戦闘民族。
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