村を出てから半日がたった頃、ようやくココロが口を開いた。
「ねぇ、女神様。」
「ルーチェでいいよ。で、何?」
「何処に向かってるの?」
ココロには目的地を言っていない。感情がほとんどないココロをビックリさせる為だ。もしかしたら知っているかもしれないが、あえて言わない方がワクワク感も出るだろう。
「ふふ…秘密。」
ココロは口をポカンとさせ、私の方をじっと見ていた。
「なによ、その驚いた顔は。」
「いや、女神さ……ルーチェがいつもと違うから、なんか不思議だなって思って。」
今の素の私より、村にいた頃の"いい子"の私がいいとでも言うような言い方だった。ちょっとした陰口では傷つくことがない私だが、流石に傷ついた。
ココロと話しているうちにだんだん目的地に近づいてきた。この辺りの家の特徴である、木造の家がポツポツと見えてきて、だんだん楽器の音色が大きくなっていく。流石、音楽の都だ。
「さ、着いたよ。」
「ここが…?」
目の前には楽器を持った人たちがたくさんいて、繊細な音色を奏でていた。町の雰囲気がとても明るく、ココロの表情まで明るくなっていた。
「綺麗…」
そう言いながらココロが都へと足を踏み入れると、楽器の音が突然止み、皆がココロを見つめていた。
[小文字]「あの子と後ろの女の人……耳が長いわ…」「女神様のお仲間か?」[/小文字]
その視線は私にまで向けられていた。
そして一番重要な言葉を聞いた。「女神様」。やはり、この都にいるらしい。私は思いきって都の者に聞いた。
「この都には女神がいるのか?」
「え、えぇ、居りますよ。音楽の女神、ミューズ様が…。」
私のような女神が他にいるのを知らなかったのか、かなり怯えている。
それにしても、懐かしい名を聞いた。……ミューズ。6大女神が1人。1000年前に一緒に戦った仲間だ。
彼女は誰よりも優しい女神だった。
初めて見たのは、まだ神殿が美しかった頃、グレース様と一緒に会いに行ったときだ。
その時は、彼女の愛用の楽器、ハープを弾いていた。ミューズはこちらに気がつくと、微笑んでくれた。
「ミューズは怖くないのですか…?」
邪悪なる者を封印するため、6大女神を決めたとき、グレース様がミューズにお聞きになられていた。
「本当は、とても怖い。でも…グレース様がいるから…私を支えてくれる人たちがいるから…だから、私は怖くない。……グレース様もそうでしょう?」
グレース様はふふ、と小さく笑った。
「ミューズに隠し事は禁物ですね!」
大女神として振る舞い、日に日に笑顔が少なくなっていたグレース様に、笑顔を与えてくださった彼女の親しみ易さは今でも覚えている。
「その女神に会うことはできるか?」
「も、もちろん出来ますよ。向こうに見える大聖堂に女神様が居られます。会いに行かれるのでしたら、司教様に事情を伝えておきますが…それで宜しいですか?」
「ありがとう。都を散策しながら行こうか、ココロ。」
ココロは頷き、一緒に都の店を見回った。
「ここが大聖堂か…。」
夕方になる頃、私たちは大聖堂に着いた。お城並の大きさで、門には美しい彫刻が施されていた。そして、入り口には司教が出迎えていた。
「貴女たちが噂の女神様ですね。お待ちしておりました。」
司教は一礼をし、私たちをミューズのところへと、案内してくれた。
「さ、着きましたよ。ここが、ミューズ様の居られる聖堂でございます。」
ステンドグラスに夕日が射し込み、聖堂の床は色とりどりになっていた。そして、祭壇には彼女がいた。
オレンジ色で、一つにまとめてあるものの、途中で二つにわかれた髪。短いパンプキンスカート。
そして聖堂に響くハープの音色。
間違いなく彼女、私の知るミューズだった。
ハープを奏でる手が止まり、こちらに振り向いた瞬間、夕刻を告げる鐘が鳴った。
鐘の音が鳴り響く中、彼女は優しく微笑んだ。
「1000年ぶりだね、ルーチェ。」
「ミューズ‼」
私はミューズのもとへ駆け寄り、力一杯に抱きしめた。
「苦しいよ…。」
「ご、ごめん‼」
「会いたかったんだよね。私を探しだしてくれてありがとう。」
ミューズはにっこり笑うと、興味津々な様子でココロに近づいた。
「この子は?耳を見た感じ、女神みたいだけど…」
「ココロって言うんだ。グレース様に似ていたから、連れてきちゃった。」
ミューズはココロの頭を撫でながら、確かに似ているね、と返した。ココロは頭を撫でられて、すこし照れていた。
「んで?他の女神たちにも会いに行くの?」
「居場所もだいたい掴めてるし、もちろんそのつもりだけど…」
ココロの方をチラッと見る。ココロは首を傾げている。ミューズへ視線を戻すと、優しく頷かれた。
「ココロは旅の目的、村の者から何か聞いた?」
うん、と頷く。
「今から、本当の事を話すからよく聞いて。……村に説明したことは全部嘘。本当は、女神たちに会いに行くの。私たちの故郷、ヴェルトリーべを取り戻す為、そして…大女神グレース様を取り戻す為。…嘘をついてごめんなさい。」
ココロは首をゆっくりと横に振った。
「ルーチェは、悪くない。それに、どんな目的だったとしても、私は…ルーチェについていくから。」
なんていい子なんだろう。少し泣きそうになった。
ココロから了解を得た後、ココロを大聖堂の外で待たせ、ミューズと大聖堂の屋根に登り、詳しい話を聞いた。
「封印の日のこと、途中までしか覚えてないの?」
「うん。…何者かに胸を刺されて…それから覚えてないなぁ…気がついたら、この大聖堂に来ていて崇められてた。ごめんね…ルーチェ、情報が少なくて。」
ミューズは困った顔をした。
「大丈夫だよ。あと、気になることがあるんだけど…」
「……そうだよね。……うんうん……。私も調べてみる。でも、ノーレッジに聞いた方が早いかも。それかエーテル。」
「分かった。でも此処からだったらエーテルの方が近いから、エーテルに聞いてみる。もし、その間に情報があれば私に伝える。これでいい?」
「オッケー。ルーチェ、気をつけてね。」
「分かった。ありがとう、ミューズ。」
別れの挨拶をし、待たせていたココロと合流する。
「次は科学の町に行くよ。準備は出来てる?」
ココロは元気よく頷いた。
科学の女神 エーテル 待ってて…今会いに行くから。
「ねぇ、女神様。」
「ルーチェでいいよ。で、何?」
「何処に向かってるの?」
ココロには目的地を言っていない。感情がほとんどないココロをビックリさせる為だ。もしかしたら知っているかもしれないが、あえて言わない方がワクワク感も出るだろう。
「ふふ…秘密。」
ココロは口をポカンとさせ、私の方をじっと見ていた。
「なによ、その驚いた顔は。」
「いや、女神さ……ルーチェがいつもと違うから、なんか不思議だなって思って。」
今の素の私より、村にいた頃の"いい子"の私がいいとでも言うような言い方だった。ちょっとした陰口では傷つくことがない私だが、流石に傷ついた。
ココロと話しているうちにだんだん目的地に近づいてきた。この辺りの家の特徴である、木造の家がポツポツと見えてきて、だんだん楽器の音色が大きくなっていく。流石、音楽の都だ。
「さ、着いたよ。」
「ここが…?」
目の前には楽器を持った人たちがたくさんいて、繊細な音色を奏でていた。町の雰囲気がとても明るく、ココロの表情まで明るくなっていた。
「綺麗…」
そう言いながらココロが都へと足を踏み入れると、楽器の音が突然止み、皆がココロを見つめていた。
[小文字]「あの子と後ろの女の人……耳が長いわ…」「女神様のお仲間か?」[/小文字]
その視線は私にまで向けられていた。
そして一番重要な言葉を聞いた。「女神様」。やはり、この都にいるらしい。私は思いきって都の者に聞いた。
「この都には女神がいるのか?」
「え、えぇ、居りますよ。音楽の女神、ミューズ様が…。」
私のような女神が他にいるのを知らなかったのか、かなり怯えている。
それにしても、懐かしい名を聞いた。……ミューズ。6大女神が1人。1000年前に一緒に戦った仲間だ。
彼女は誰よりも優しい女神だった。
初めて見たのは、まだ神殿が美しかった頃、グレース様と一緒に会いに行ったときだ。
その時は、彼女の愛用の楽器、ハープを弾いていた。ミューズはこちらに気がつくと、微笑んでくれた。
「ミューズは怖くないのですか…?」
邪悪なる者を封印するため、6大女神を決めたとき、グレース様がミューズにお聞きになられていた。
「本当は、とても怖い。でも…グレース様がいるから…私を支えてくれる人たちがいるから…だから、私は怖くない。……グレース様もそうでしょう?」
グレース様はふふ、と小さく笑った。
「ミューズに隠し事は禁物ですね!」
大女神として振る舞い、日に日に笑顔が少なくなっていたグレース様に、笑顔を与えてくださった彼女の親しみ易さは今でも覚えている。
「その女神に会うことはできるか?」
「も、もちろん出来ますよ。向こうに見える大聖堂に女神様が居られます。会いに行かれるのでしたら、司教様に事情を伝えておきますが…それで宜しいですか?」
「ありがとう。都を散策しながら行こうか、ココロ。」
ココロは頷き、一緒に都の店を見回った。
「ここが大聖堂か…。」
夕方になる頃、私たちは大聖堂に着いた。お城並の大きさで、門には美しい彫刻が施されていた。そして、入り口には司教が出迎えていた。
「貴女たちが噂の女神様ですね。お待ちしておりました。」
司教は一礼をし、私たちをミューズのところへと、案内してくれた。
「さ、着きましたよ。ここが、ミューズ様の居られる聖堂でございます。」
ステンドグラスに夕日が射し込み、聖堂の床は色とりどりになっていた。そして、祭壇には彼女がいた。
オレンジ色で、一つにまとめてあるものの、途中で二つにわかれた髪。短いパンプキンスカート。
そして聖堂に響くハープの音色。
間違いなく彼女、私の知るミューズだった。
ハープを奏でる手が止まり、こちらに振り向いた瞬間、夕刻を告げる鐘が鳴った。
鐘の音が鳴り響く中、彼女は優しく微笑んだ。
「1000年ぶりだね、ルーチェ。」
「ミューズ‼」
私はミューズのもとへ駆け寄り、力一杯に抱きしめた。
「苦しいよ…。」
「ご、ごめん‼」
「会いたかったんだよね。私を探しだしてくれてありがとう。」
ミューズはにっこり笑うと、興味津々な様子でココロに近づいた。
「この子は?耳を見た感じ、女神みたいだけど…」
「ココロって言うんだ。グレース様に似ていたから、連れてきちゃった。」
ミューズはココロの頭を撫でながら、確かに似ているね、と返した。ココロは頭を撫でられて、すこし照れていた。
「んで?他の女神たちにも会いに行くの?」
「居場所もだいたい掴めてるし、もちろんそのつもりだけど…」
ココロの方をチラッと見る。ココロは首を傾げている。ミューズへ視線を戻すと、優しく頷かれた。
「ココロは旅の目的、村の者から何か聞いた?」
うん、と頷く。
「今から、本当の事を話すからよく聞いて。……村に説明したことは全部嘘。本当は、女神たちに会いに行くの。私たちの故郷、ヴェルトリーべを取り戻す為、そして…大女神グレース様を取り戻す為。…嘘をついてごめんなさい。」
ココロは首をゆっくりと横に振った。
「ルーチェは、悪くない。それに、どんな目的だったとしても、私は…ルーチェについていくから。」
なんていい子なんだろう。少し泣きそうになった。
ココロから了解を得た後、ココロを大聖堂の外で待たせ、ミューズと大聖堂の屋根に登り、詳しい話を聞いた。
「封印の日のこと、途中までしか覚えてないの?」
「うん。…何者かに胸を刺されて…それから覚えてないなぁ…気がついたら、この大聖堂に来ていて崇められてた。ごめんね…ルーチェ、情報が少なくて。」
ミューズは困った顔をした。
「大丈夫だよ。あと、気になることがあるんだけど…」
「……そうだよね。……うんうん……。私も調べてみる。でも、ノーレッジに聞いた方が早いかも。それかエーテル。」
「分かった。でも此処からだったらエーテルの方が近いから、エーテルに聞いてみる。もし、その間に情報があれば私に伝える。これでいい?」
「オッケー。ルーチェ、気をつけてね。」
「分かった。ありがとう、ミューズ。」
別れの挨拶をし、待たせていたココロと合流する。
「次は科学の町に行くよ。準備は出来てる?」
ココロは元気よく頷いた。
科学の女神 エーテル 待ってて…今会いに行くから。