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雨の中の静寂

 雨の中を歩く時、一瞬静かになることがある。私はそれを、「雨の中の静寂」と呼ぶ。私は、あの瞬間が好きだ。
 私と同じく、雨が好きな人を見つけた。彼女は、雨にぬれることが好きだ。雨の中ではしゃぐ彼女を、私はたまに、雨の精霊だと錯覚してしまう。それほどまでに、彼女は美しい……、雨と同じぐらい。

「わ〜……、雨降ってるよ!」
 高校から家に帰ろうと玄関まで来ると、雨が降っていた。
「えっ、傘持ってきてないのに……」
「折りたたみ傘あるけどいる?私はぬれて帰るから」
「貸してもらおうかな……。雨にぬれるの、本当に好きだね」
「うん!楽しいからね」
「あれ?じゃあ、ぬれるならどうして傘を持ってきたの?」
 彼女は、金曜日の帰りに雨が降っていると、ぬれて帰る。彼女いわく、「制服は乾きにくいから、雨にぬれるのは金曜日だけなんだよ!」だそうだ。
 彼女はいつも傘を持ってきていない。なぜわざわざ……。
「だって、傘持ってきてないんでしょ?天気予報は見ないって聞いてたから…。困るかなって」
 私は、いつも天気予報は見ない。雨が降る時間は、わからない方が面白いのだ。
 しかし、私も傘をいつも持っている訳では無い。そのため、傘を忘れて困ることがよくある。
 その話を、彼女は覚えていた。それどころか、私のためにわざわざ持ってきてくれたのだ。
「ありがとう……。いいの?」
「うん!わたしが勝手にしたことだし」
 彼女の気遣いに感謝しながら傘を受け取る。
「それじゃあ、帰ろうか」

 雨が傘に触れ、ポツポツと音がなる。そんな雨の音を聞きながら、彼女を見る。そこには、笑いながら、くるくるとはしゃぎまわっている姿があった。
 そこまで面白いか?と疑問に思うが、見ているだけで楽しくなるから良しとしよう。
 初めて見た時は、正直引いた。あの子は何をしているんだろう、と。あきらかにおかしかった。でも、そんな姿を見ていたら、だんだん楽しくなってきた。いつしか、いつも目で追うようになった。
 雨の音、彼女の笑い声。だんだん音が馴染んで、小さくなって……、最終的に、音が無くなる。
 私はそれを、「雨の中の静寂」と呼ぶ。私は、この瞬間が好きだ。彼女と過ごす、この瞬間が大好きだ。
 彼女にも、この気持ちが伝わっていてほしいと思わない。
 ただ、彼女にも、この気持ちがあってほしいと願う。

作者メッセージ

風景描写の練習として書きました。
改善点などを教えていただけるとうれしいです。

2026/03/07 16:36

楓ひなた
ID:≫ 72f7ySuR6WeuU
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小説読切高校生風景描写

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