おうちゃんとは、小さい頃から仲良しの、幼なじみだ。
僕とおうちゃんは、2人とも本が好きだった。いつも学校が終わると、図書館へ走って向かっていた。
「あおくん!はやくついてこないと、置いてっちゃうよー?」
僕のことを「あおくん」と呼ぶのは、おうちゃんだけだ。
「待ってー!」
おうちゃんの、大きな背中を追いかけた。
おうちゃんは、好奇心旺盛で、よくいろんなところを走り回っていた。
「ねえねえ、あおくん、これ読んでみて?」
いつもおうちゃんは、僕にいろんな本をすすめてきた。
「『くまくんとケーキ』……。くまくんシリーズ、有名だよね」
「そう!特に、この話はおもしろいんだよー。くまくんがケーキを食べるだけの話なんだけど、ケーキは生きてるんだよ?それを食べるくまくん、すごくない?」
「そうだね、すごいね。ところでそれ、ネタバレじゃない?」
「えっ、……だいじょーぶだよ!」
「怪しいけど……。まあ、読む気ないし良いか」
「えー、読まないの?なんで?おもしろいよ?」
「絵本って、短くってすぐ読み終わっちゃうから、あんま好きじゃない……」
「んー、じゃあ、こっちはどう?」
「数学の専門書……、法律の本……。こんな難しそうなの、読めないよ」
「あおくんなら理解できるって!」
「無理だよ……。学校の先生ですら、読めないって言ってたよ」
「えー……。どんな人でも、何度も読めば、わかるのに……」
「何度も読むことが、普通は難しいんだよ、おうちゃん」
「そんなものかなあ……。でも、あおくん、その図鑑しか見ないんだもん。図書館には、いっぱい本があるのに。もったいないよ!」
「そう?図鑑だって、おもしろいよ?ほら、たとえば、この花」
「んー?『キバナコスモス』?きれいだけど、それがなに?」
「きれいでしょ?眺めてると、楽しいよねってこと。それだけ」
「それだけ?なら、外で観察してればいーじゃんか」
「あ……、えっと、図鑑だったら、見た目だけじゃなくて、豆知識も知ることできるよ」
「へえ。たとえば、どんなの?」
「んー、例えばキバナコスモスなら、『道路で普通に見かけることができる』って」
「へえー!帰り道に、あるかなあ?」
「帰るときまで、覚えておこう」
「うん!」
「じゃ、僕、本読むから」
「はーい。……でも、やっぱり、他の種類もいろいろ読んでほしいなあー。あっ、そうだ!いいこと思いついた!」
おうちゃんは、どこからかかわいらしい紙を取り出して、何かを書き始めていた。
問題は、その日の帰り道のことだった。
「あっ!あおくん、キバナコスモス?って、あれのことじゃない?」
おうちゃんに言われて見てみると、確かに、図鑑通りの花が、道路に咲いていた。
「たぶん、そうだね」
「わー!本にのってるものが、まさか実際に見れるなんて!」
すごーい!とはしゃぎながら、おうちゃんは、反対側に咲いていたキバナコスモスに向かって走っていった。
……どれだけ後悔したことか。
この時。この時、僕がおうちゃんを止めていれば。図鑑なんて、見せていなければ。そうしたら、おうちゃんは、今も生きていたのかな。
僕の記憶は、突然現れた車がおうちゃんに触れたところで途切れた。
それからのことは、あまり覚えていない。ずっと、かなしい感情に飲まれ、頭に霧がかかったようにぼんやりとしていた。
元から話があったのか、流れるように知らない場所へと引っ越しをした。
霧が晴れた頃には、僕の記憶はなくなっていた。
それでも。なぜか、僕はもう一度、おうちゃんに会うことができた。忘れていたのに、思い出すことができた。
はやく、おうちゃんに会いたい。
また、あの笑顔を見たい。
「……戻ろう」
おうちゃんに、会いに行こう。
僕とおうちゃんは、2人とも本が好きだった。いつも学校が終わると、図書館へ走って向かっていた。
「あおくん!はやくついてこないと、置いてっちゃうよー?」
僕のことを「あおくん」と呼ぶのは、おうちゃんだけだ。
「待ってー!」
おうちゃんの、大きな背中を追いかけた。
おうちゃんは、好奇心旺盛で、よくいろんなところを走り回っていた。
「ねえねえ、あおくん、これ読んでみて?」
いつもおうちゃんは、僕にいろんな本をすすめてきた。
「『くまくんとケーキ』……。くまくんシリーズ、有名だよね」
「そう!特に、この話はおもしろいんだよー。くまくんがケーキを食べるだけの話なんだけど、ケーキは生きてるんだよ?それを食べるくまくん、すごくない?」
「そうだね、すごいね。ところでそれ、ネタバレじゃない?」
「えっ、……だいじょーぶだよ!」
「怪しいけど……。まあ、読む気ないし良いか」
「えー、読まないの?なんで?おもしろいよ?」
「絵本って、短くってすぐ読み終わっちゃうから、あんま好きじゃない……」
「んー、じゃあ、こっちはどう?」
「数学の専門書……、法律の本……。こんな難しそうなの、読めないよ」
「あおくんなら理解できるって!」
「無理だよ……。学校の先生ですら、読めないって言ってたよ」
「えー……。どんな人でも、何度も読めば、わかるのに……」
「何度も読むことが、普通は難しいんだよ、おうちゃん」
「そんなものかなあ……。でも、あおくん、その図鑑しか見ないんだもん。図書館には、いっぱい本があるのに。もったいないよ!」
「そう?図鑑だって、おもしろいよ?ほら、たとえば、この花」
「んー?『キバナコスモス』?きれいだけど、それがなに?」
「きれいでしょ?眺めてると、楽しいよねってこと。それだけ」
「それだけ?なら、外で観察してればいーじゃんか」
「あ……、えっと、図鑑だったら、見た目だけじゃなくて、豆知識も知ることできるよ」
「へえ。たとえば、どんなの?」
「んー、例えばキバナコスモスなら、『道路で普通に見かけることができる』って」
「へえー!帰り道に、あるかなあ?」
「帰るときまで、覚えておこう」
「うん!」
「じゃ、僕、本読むから」
「はーい。……でも、やっぱり、他の種類もいろいろ読んでほしいなあー。あっ、そうだ!いいこと思いついた!」
おうちゃんは、どこからかかわいらしい紙を取り出して、何かを書き始めていた。
問題は、その日の帰り道のことだった。
「あっ!あおくん、キバナコスモス?って、あれのことじゃない?」
おうちゃんに言われて見てみると、確かに、図鑑通りの花が、道路に咲いていた。
「たぶん、そうだね」
「わー!本にのってるものが、まさか実際に見れるなんて!」
すごーい!とはしゃぎながら、おうちゃんは、反対側に咲いていたキバナコスモスに向かって走っていった。
……どれだけ後悔したことか。
この時。この時、僕がおうちゃんを止めていれば。図鑑なんて、見せていなければ。そうしたら、おうちゃんは、今も生きていたのかな。
僕の記憶は、突然現れた車がおうちゃんに触れたところで途切れた。
それからのことは、あまり覚えていない。ずっと、かなしい感情に飲まれ、頭に霧がかかったようにぼんやりとしていた。
元から話があったのか、流れるように知らない場所へと引っ越しをした。
霧が晴れた頃には、僕の記憶はなくなっていた。
それでも。なぜか、僕はもう一度、おうちゃんに会うことができた。忘れていたのに、思い出すことができた。
はやく、おうちゃんに会いたい。
また、あの笑顔を見たい。
「……戻ろう」
おうちゃんに、会いに行こう。