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遥か昔、海は青かった 《夏の人魚》

#1

第一話

いつかの、近い未来のお話


むかし、
海は、青かった
水は底まで透き通り、
色とりどりの「サカナ」が泳ぎ、
「サンゴショウ」に隠れます
ウミガメ、イルカ、クジラなどもいます
あげればきりがありません
何百、何千万というたくさんの生き物の
大きなすみかだったんです。

─────そこまで昔の話じゃ、ないんだぞ。」

佐藤先生が付け足す。

「先生もよく、汚染が進んで無い海にわざわざ連れて行ってもらったものだ。懐かしい。」

窓から差す光が眩しい。
目を細めて、私は小さく溜息を吐いた。先生は一体何十、何百年前の話をしてるんだか。
教室の生徒全員が、おそらく同じことを思った。
海の話は、小学校に入って初めて、本格的に聞いた。
ソーダ味のゼリーのようにキラキラ透き通る青を、カラフルなキャンディーのようなヒレつきの生き物が泳ぎ回るのを想像して、私含むみんなが目を輝かせた。
ただ、中学3年にもなってこの話を聞くと、やっぱりあきる。
御伽話を聞かされている感覚だ。
先生の言っていることは、もちろん間違いじゃない。だって、「青い海」は本当に存在したから。
存在した、というのも大袈裟な気がする。そこまで昔の話じゃないらしいし。
私だって、おばあちゃんが持ってる写真を見たことがある。その頃には海の汚染は進んでたらしい、目に見えなかっただけで。
でも、少なくとも私たち子供は、青い海を自分たちの目で見たことがない。
今の海を昔の人たちに見せたら、どんなに驚くだろう。見慣れた私だって、みていて気持ちがいいものではない。透き通った美しい青とは反対の、どす黒いヘドロのようなもの。怪物に近い。
生きた生き物は、いない。
それに、海は巨大なゴミなどを飲み込んでいて、近づくのは危険だ。
どうしてこうなったか。
人間が、不要となったゴミや汚染物質を、自分たちの都合で捨てたのが問題だったらしいと、教科書に書いてあった。
昔の人は、危機感が無かったわけじゃないらしい。一般市民は協力する人、しない人がいた。しかし、科学者たちががどれだけ警告しようが、政府がどれだけ対策しようが、「大きな一歩」を踏み出す人がいなければ、誰も同じように踏み出せない。それがいけなかった。
その後、汚染がずいぶん進んだ後、急いで世界中の科学者たちが集まり、極力環境を破壊、汚染しない生活方法を最新の科学技術を駆使して編み出し、今までの過ちと向き合った。つもりだ。
でも、私は小さい頃から知っている。
テレビでメガネと白衣の人が言っていた。ここからどれだけ科学技術を発展させようが、もう「青い海」は戻らないと。汚染が進み切ったんだ。
前の男子があくびする。
もう遅かったんだなぁ、と私もあくびしながらぼんやり考えた。



「他に連絡はないなー。じゃあ挨拶するぞー。起立。」
ガタガタ と椅子をしまう。
「礼。さようなら。」
「「さようなら」」

「今日も疲れたー。明日もだりぃー。」
「じゃあね!」
「今日放課後空いてる?」
「部活部活。」
礼をした瞬間、教室中にクラスメイトの声と足音が響く。
そして、いつも通り私の席に来る私の友達。
「紗渚ー!帰ろ!」
「わかったわかった。ちょっと待ってね。」
「早く早くー!」
急かして来る杏をスルーして、教科書をバッグに詰め込んで席を立った。
杏と他愛のない会話を交わして、気づけばいつもの別れ道。
「じゃあねー!また明日ー。」
「うんー。」
わかれた後、少し歩けば私の家だ。
一軒家で、ネームプレートには「青宮」の文字。
駆け足でドアまで行って、開ける。
靴を適当に揃えて、リュックを置く。
キッチンからの「お帰りなさい。」
それに応える私の「お母さんただいま」の声。
景色から音まで、全部いつも通り。
私の毎日だ。
4つ下の弟湊斗と母、私で食卓を囲む。空けてあるお父さんの椅子。
「「「いただきます。」」」
ちゃんといったか怪しい湊斗。バクバク白米を口に運んでいる。サッカーの習い事でお腹が空いたんだと思う。
「あ、そうそう。」
弟を眺めていた私に向けてか、母が口を開く。
「もうすぐ夏休みでしょう?」
「そーだね。」
「最初の一週間、旅行に行こうと思うの。」
「いいね。」
楽しそう。心の中で呟く。
「それで、おばあちゃんが湊斗と紗渚に会いたいって言ってたから。お父さんとお母さんは別のところに行って、2人きりでおばあちゃんの家、泊まってきたらって思ったの。」
「2人きりで?」
なんだかんだで2人きりでは泊まったことない。
「ばーちゃんの家かー。へー、さんせー。」と、呑気に答える弟。
おばあちゃんの家は、自然が豊かで、海の近くにある。私は数回泊まったことがあるけど、海の以外は綺麗なところだ。
「大丈夫?一週間は、流石に長いかなとも思うけど。」
「大丈夫。湊斗は私が見ておく。お母さんも楽しんできなよ。」
お母さんの不安を拭うように言った私の横で、「もう世話される歳じゃねーし。」と機嫌を悪くする弟がいた。





次回予告っ!
ポチャン
「…..へ?」

スィースィー
「あなた、
もしかして、 
      ─────
             …?」

ザー、ザー…
海の音が、聴こえた。
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作者メッセージ

また近々投稿します!

2024/01/13 21:52

しらたま 。
ID:≫ 67xWe9Dp8.c5k
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