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感情を失ったとある女の子の話

#4

3話

倉央が愛機に昔ばなしをしてから4年後、それぞれ20歳と22歳と10歳になった田里弥と倉央と愛機。
その日は全員休みを与えられていたので、3人で村に行っていた。それで帰る途中、物音がしたのでそちらを振り返ると、突然十数人の山賊が飛び出してきた。
「!?」
「おいてめぇらぁ!そのガキよこしやがれ!!」
(ガキ…!?愛機が狙いか!)「…チッ、倉央!」
「分かってる!」
田里弥が合図すると、倉央が向かっていった。
だが…
「そんな弱い突進効かねぇよ!」
「なっ!?」
倉央の攻撃は、あっさりかわされてしまった。
(くそっ、こいつら相当な手練れだ!…せめて愛機だけでも…!)
「愛機!」
「何だ」
「俺らだけじゃこいつらには勝てない!ましてやこいつらの狙いはお前だ!…俺が合図をしたらお前は逃げろ!とにかく遠くに!いいな!!」
「…わかった」
それから田里弥は、タイミングを見計らって合図を出した。
「…今だ!」
その合図と同時に、愛機は駆け出した。
「おい、ガキが逃げたぞ!」
「追え!追え!!」
「チッ、なんだこいつすばしっこいな!」

愛機は逃げた。とにかく逃げた。

今思うと、その時の早さはそのとき愛機がだせる全力を越えていたかもしれない。
山賊に虐げられた記憶が、無意識に愛機のリミッターを外していたのだろう。
しばらく走ると、辺り一面真っ黒なところについた。
(…随分不気味なところだな)
愛機は注意深く回りを見渡した。
そのとき、遠くから剣劇の音が聞こえた。
ガン!ガッ!
その場所の近くに行き、物陰から様子を伺うと、ぼろ布の服を着た少年が、全身赤装束の男と戦っていた。
その側には高貴そうな出で立ちの少年が立っている。二人は同じくらいの年に見えた。
しばらく観察していると、あっという間にぼろ布の少年が男を倒し、高貴そうな少年が止めを差した。
(…あの二人、かなりの手練れだな。年は…私より2、3ほど上だろうか)
そこで愛機が物陰から出て近づいていくと、ぼろ布の少年が敵襲と勘違いして剣に手を掛けたが、愛機が事情を説明すると手をおろした。
それから3人は名乗り合った。
ぼろ布の少年は信、高貴そうな少年は嬴政と名乗った。(嬴政…いかにも高貴そうな名前だ)
そして、嬴政は秦王であるとも言った。
その時に、愛機はわずかに目を見開いた。
(…秦王だと?秦王はたしか反乱を起こされて窮地にいると…それに、なぜこのような身なりの少年と行動をともに…?…もしかして、そういうことか?)
「…秦王様でありましたか。私は愛機と申します。右も左も分からぬ不束者ですが、どうか行動を共にさせて頂きたく…」
愛機が名前を名乗ると、嬴政の顔が若干強ばったと思ったのは気のせいとすることにした。
それから軍が来、3人でむかって行こうとすると目の前に河了貂という少女が降ってき、四人で洞窟を抜け、森を抜けると、あっという間に400年前の秦王の避暑地、昌文君という名の臣下との最後の合流場所についたのだった。
そこで暫く休んでいると、愛機は河了貂に呼ばれた。
そこに行くと、豪勢な飯がたくさんあった。
信がとても上品とは言えない食べ方をし、河了貂に怒られ、信が大量の食事に疑問を抱いたところで、嬴政による400年前の秦王、穆公と山の民の話が始まった。
そして話が終わり部屋に戻ろうとすると、愛機は嬴政に呼ばれた。
「…愛機」
「なんでしょうか」
「愛機という名前は、誰につけられた?」
「…5年前、私を拾ってくれた恩人達です」
その言葉に、嬴政は反応した。
「…恩人」
「はい」
「その者達は、山賊に虐げられていた私を拾い、暖かい飯を食べさせ、武術と戦術を教えてくれました」
「そうか…」
「…なぜそのような話を?」
「いや…お前は、俺が異母弟に反乱を起こされていることは知っているな?」
「はい」
「そいつの名前は成嶠というのだが、俺には成嶠の他にもう一人、[漢字]異母妹[/漢字][ふりがな]いぼまい[/ふりがな]がいたと聞いた」
「…そうですか」
「ああ」
「そして、その者の名前は…愛機、というらしい」
「なるほど…妙なこともあるものですね」
「…お前ではないのか?」
「と、いいますと?」
「俺は、お前が俺の異母妹ではないかと思っている」
「…それは異なことを。私の愛機という名前は私を拾った者達がつけた名前…それが私の母親がつけた名前と同じだと?」
「確証はないが…俺とお前は、なんとなく雰囲気が似ている気がする。それに…俺は、お前を見たことがある気がする」
「…左様でございますか」
「…まぁ、気がする、と言うだけの話だ。何もなければ、忘れてしまっても構わない」
「分かりました」
そうして時間は過ぎていった。

次の日…
ドガァ!!という音を聞いて、愛機は目を覚ました。
向かうと、信と謎の男が対峙していた。
男はムタといい、王弟・成嶠の刺客で、嬴政を始末するために送られてきた者らしい。また、その男は毒矢をもっていた。
そして戦闘が始まった。
最初ば五分五分、いや少し圧され気味だった信だが、嬴政の渇で前に出始め、最終的にはムタを倒してしまった。(…どのような敵相手でも前に出ていく精神力は立派だが、大分戦い方が滅茶苦茶だな…今はまだいいが、いつか強敵が現れたときにはどうなるか…)
と、愛機は冷静に分析した。
しかし、ムタはふらふらしながらも立ち上がり、嬴政にむかって毒矢を向けた。だが、背後から現れた昌文君が毒矢を取り上げ、止めを指した。
(…あれが、嬴政様の唯一臣、昌文君とその手勢か…今はあの者達だけが頼りと言うことか…なるほど、なかなか頼りになりそうだ。少なくとも、今は)
愛機は、またも冷静に昌文君達を分析した。
それから昌文君は、漂は死んだという信を無視し、嬴政の目の前で跪いた。そしてこうなったのは全て自分のせいだといい、しかしまずは嬴政の無事を泣いて喜んだ。
そしてその後、信、河了貂、愛機はそれぞれ昌文君に自己紹介した。
「…大王様、少し宜しいでしょうか」
「なんだ」
「信と言う者と河了貂という者の経緯は分かりましたが、愛機と言う者だけあの二人と雰囲気が違いすぎまする。あの者は一体何者なのですか?」
「…分からぬ」
「…はい?」
思わず昌文君でも聞き返してしまった。
「俺と信が会って信が朱凶と戦ったあとに会った者だ。名前以外のことはほとんどなにも話さなかった故、それ以外のことは分からぬ。」
「左様…ですか」
「あぁ」
それから、嬴政は一呼吸おいて話し始めた。
「…俺は、愛機が行方不明になった俺の異母妹ではないかと思っている」
「!?…大王様の異母妹様…確かに名前はあの者と同じですが…」
「…あの佇まい、ただの庶民という言葉では説明がつかぬ。それに、なぜだか俺とあの者は雰囲気が似ている気がする。…ただの他人ではない気がするのだ。」
「…確かにあの者からはとても普通の者とは思えない武の才を感じまするが…あの者が大王様の異母妹様であるとするなら、あの者は…」
「…あぁ、まだ齢十に行くか行かないかくらいだ」
「それであの静かな佇まいと落ち着きすぎている口調…山賊に虐げられていたと言っていたが、あれが本当である可能性が高まってきたな…」
「山賊に、ですか…」
「…それで、とある者達に拾われたらしい。常人ではない武の才と知性を感じるのは、そのせいでもあるやも知れぬ。」
だが、二人とも確信には至れぬまま、会話を終了させるのであった。

それから昌文君の手勢たちに河了貂が料理を振る舞い、政が昌文君から脱出劇について聞くと、昌文君はおもむろに王騎という将軍達と交戦したと言った。
そこからは壁という昌文君の副官が話を引き継ぎ、漂という信の親友であり大王の影武者となっていた者が皆に渇をいれ、壁達を率いて王騎軍を突破したと言った。
それからしばらくして、呂氏という後ろ楯が実は敵であったことが判明し、万策尽きたかと思われたその時、昌文君がとある案を出した。
「可能性は低いが会いに行くしかない…」
          山の王に!

作者メッセージ

お久しぶりです。
なぜかテスト期間なのに小説書いてる人です。
やっと信達を出すことができました。
ちょっと短めかもしれませんが区切りがいいので(自分のなかで)ここで一話としようと思います。
続きをおたのしみに!

2026/07/26 14:24

りーか
ID:≫ 6.HoR4v8S2hQk
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