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殺しの要素が少しあります。そこまでグロくはないですが、苦手な方は気をつけてください。
王を変えた一夜(走れメロス)
「走れメロス」には邪智暴虐の王と呼ばれるほどに多くの人を殺めた国王がいる。
これは彼が人を信じられなくなるまで、つまり暴君ディオニス誕生の物語である。
この物語の舞台、シラクスの国王であるディオニスは、誰にでも穏やかな笑顔で手を差し伸べる優しい国王だった。そのため彼は国民から愛され、信頼されていた。
多くの人が彼を支持するなかで、そんな彼をよく思わない人も少なからずいる。ルシウスもそのうちの一人だ。
ルシウスはディオニスの妹婿である。彼は教養や武術の才に長けていた。さらに妹のことを心から愛しているルシウスをディオニスも信頼と安心を持っていた。
だが、ルシウスは次第にディオニスに対して自分への譲位継承を強く要求するようになった。しかし、ディオニスには正式な継承者がいた。加えて、妹のエレーナには身分を気にせず自由に生きてほしいと願っていたため、ルシウスの要求を拒み続けた。
しかし、そんなディオニスの考えを知る由もないルシウスは、自分が王になることを嫌っていると思い込み、ディオニスを暗殺しようと考えていた。
ルシウスは妻であるエレーナにもその計画を言うことはなく、密かに着々と実行への準備を進めていた。
ルシウスが決断を下したのは、ある静かな晩のことだった。ディオニスがまさに眠りにつこうとしたとき、召使を通じてエレーナからの呼び出しを受けた。普段から様々な相談を持ちかけてくる彼女のことだ。ディオニスは何の疑いも抱かず、リビングへ向かった。
しかし、そこは闇に包まれていた。召使の手にした蝋燭の淡い光が、わずかに足元を照らしているだけ。ディオニスは手探りでなんとかソファまで辿り着き、腰を下ろした。
その瞬間、背後で剣が抜かれる音が響いた。
咄嗟に護身用の短刀を振るう。次の瞬間、何かを深く貫く感触があった。
直後、重たいものが床に倒れ込む音。そして、視界の隅に広がる鮮やかな赤。
照らさずとも理解できた。自分がしてはならないことを、人を殺めてしまったという事実を。
この出来事は瞬く間に国中に広まっていった。
あの後、逃げるようにして自室に戻ったディオニスは翌日の朝、賢臣のアレキスからの報告により、ルシウスが亡くなったことを知った。そして自分が命を奪ってしまったことも。
あれは誰が関わっていたのだろうか。呼び出したのはルシウスの工作か、エレーナまでもが騙したのか。ルシウスを突き刺した短刀はアレキスから持たされたものだ。彼はここまでも計画していたのだろうか。いくら考えても答えが出てくるはずがない問の答えを必死に考える。そしてディオニスは一つの答えに辿り着く。それが「人を疑う」ことだった。
この出来事を境に、ディオニスは変わってしまった。
かつてのように優しく、誰にでも手を差し伸べる彼の姿はもうない。人を疑い、誰も信じることができず、最後には手にかけてしまう。そうして、暴君ディオニスが生まれた。
もはや、誰にもディオニスを止める術はない。この国は邪智暴虐の王の手に落ちた。そして今日も、また人が殺された。
それは、あまりに突然の出来事だった。
ある青年が、短刀ひとつで王城に踏み入ったという。誰もが思った。またひとり、無残に命を落とすのだと。
だが、違った。青年は王城を後にし、駆け去った。人々はざわめき、彼の正体を知りたがった。王城に入り、生きて帰った者の名を。
彼の名はメロス。彼こそ、後にこの国の勇者となる者である。
これは彼が人を信じられなくなるまで、つまり暴君ディオニス誕生の物語である。
この物語の舞台、シラクスの国王であるディオニスは、誰にでも穏やかな笑顔で手を差し伸べる優しい国王だった。そのため彼は国民から愛され、信頼されていた。
多くの人が彼を支持するなかで、そんな彼をよく思わない人も少なからずいる。ルシウスもそのうちの一人だ。
ルシウスはディオニスの妹婿である。彼は教養や武術の才に長けていた。さらに妹のことを心から愛しているルシウスをディオニスも信頼と安心を持っていた。
だが、ルシウスは次第にディオニスに対して自分への譲位継承を強く要求するようになった。しかし、ディオニスには正式な継承者がいた。加えて、妹のエレーナには身分を気にせず自由に生きてほしいと願っていたため、ルシウスの要求を拒み続けた。
しかし、そんなディオニスの考えを知る由もないルシウスは、自分が王になることを嫌っていると思い込み、ディオニスを暗殺しようと考えていた。
ルシウスは妻であるエレーナにもその計画を言うことはなく、密かに着々と実行への準備を進めていた。
ルシウスが決断を下したのは、ある静かな晩のことだった。ディオニスがまさに眠りにつこうとしたとき、召使を通じてエレーナからの呼び出しを受けた。普段から様々な相談を持ちかけてくる彼女のことだ。ディオニスは何の疑いも抱かず、リビングへ向かった。
しかし、そこは闇に包まれていた。召使の手にした蝋燭の淡い光が、わずかに足元を照らしているだけ。ディオニスは手探りでなんとかソファまで辿り着き、腰を下ろした。
その瞬間、背後で剣が抜かれる音が響いた。
咄嗟に護身用の短刀を振るう。次の瞬間、何かを深く貫く感触があった。
直後、重たいものが床に倒れ込む音。そして、視界の隅に広がる鮮やかな赤。
照らさずとも理解できた。自分がしてはならないことを、人を殺めてしまったという事実を。
この出来事は瞬く間に国中に広まっていった。
あの後、逃げるようにして自室に戻ったディオニスは翌日の朝、賢臣のアレキスからの報告により、ルシウスが亡くなったことを知った。そして自分が命を奪ってしまったことも。
あれは誰が関わっていたのだろうか。呼び出したのはルシウスの工作か、エレーナまでもが騙したのか。ルシウスを突き刺した短刀はアレキスから持たされたものだ。彼はここまでも計画していたのだろうか。いくら考えても答えが出てくるはずがない問の答えを必死に考える。そしてディオニスは一つの答えに辿り着く。それが「人を疑う」ことだった。
この出来事を境に、ディオニスは変わってしまった。
かつてのように優しく、誰にでも手を差し伸べる彼の姿はもうない。人を疑い、誰も信じることができず、最後には手にかけてしまう。そうして、暴君ディオニスが生まれた。
もはや、誰にもディオニスを止める術はない。この国は邪智暴虐の王の手に落ちた。そして今日も、また人が殺された。
それは、あまりに突然の出来事だった。
ある青年が、短刀ひとつで王城に踏み入ったという。誰もが思った。またひとり、無残に命を落とすのだと。
だが、違った。青年は王城を後にし、駆け去った。人々はざわめき、彼の正体を知りたがった。王城に入り、生きて帰った者の名を。
彼の名はメロス。彼こそ、後にこの国の勇者となる者である。
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