気がついた瞬間、「これは夢だ」ってわかった。
なんでかって言われたらなんとも言えない。
強いて言えば、周りが暗い。さっきまではこんなに暗くなかった。
私がいるのは商店街じゃなく、どこかわからない獣道になっていた。
足音に気付き、向こうを見ると、誰かがこちらに来る。
近づくにつれ、それが大人の男性で、寝ている小さな赤ちゃんがいることもわかった。
「これが向こうの姫、[太字][漢字]零月[/漢字][ふりがな]れいげつ[/ふりがな][/太字]……。やっと手に入れた」
レイゲツ、と聞いた時、何か違和感を覚えた。
既視感というか、デジャヴというか……。
彼に聞いてみようと思い、足を踏みだそうとする。
が、体が動かなかった。
普通、夢で自分が動けないなんてことない。
直感で、普通の夢じゃないことを感じた。
そのとき、眠っていた赤ちゃんが、薄く目を開く。
知らない場所なのだろうか。大きな声で泣き始めた。
「あっ⁉︎ こら、泣きやめ。誰にも見つかるわけにはいかないんだ」
男が慌て始める。
次の瞬間、私は信じられないものを見た。
赤ちゃんが、アスファルトに落ちていた。
ずっと見ていたけど、落ちる瞬間はわからなかった。
まるで、最初から地面で寝ていたように。
落ちる音だけ、大きく響いた。
相当痛かったらしく、赤ちゃんは更に大きな声で泣き喚く。
「今、俺は何も……うわぁあぁあ!」
彼は[漢字]狼狽[/漢字][ふりがな]うろた[/ふりがな]え、腰を抜かす。
男は叫びながら、今来た道を走って行った。
「ちょっと! 待って!」
私は呼び止めようとしたけど、言葉にならなかった。
しばらく何も起こらず、ただ景色を見ていた。
風が草を揺らす音と、遠くから虫の鳴き声が聞こえてくる。
赤ちゃんはずっと泣いていたが、しばらくすると泣き止んで眠ってしまった。
どれだけそうしていただろうか。向こうから人影が見えてきた。
それは、だんだんと私——というより赤ちゃんだろう——に近づいていく。
「あれ、何か落ちて……。赤ちゃん?」
そう言いながら赤ちゃんに駆け寄る人を見る。
女性だとはわかったが、顔はぼやけてよく見えない。
声がどこかで聞いたことがある気がするんだけど……。
どこか懐かしさを感じる声だった。
まるで、毎日聞いている声みたいだ。
「大変! 風邪引いたら……。明日警察に届けましょう」
彼女は赤ちゃんを抱いて去って行った。
結局誰だったんだろう。私は何を見せられたんだろうか。
そう思ったところで、私の意識は現実へと昇って行った。
[水平線]
目が覚めると、私は空を見ていた。
どこまでも青い、澄み切った空だった。
私は、琴葉と最初に会った公園にいた。
でも、どこか違う。
ベンチが歪んでいる。
全体的に色彩がくすんで色褪せていた。
近くに誰かがいるっぽい。
晴かな。2人とも無事かな。
横を見ると、琴葉の顔があった。
でも、晴はいない。
「……あれ。天音ちゃん、起きたんだ」
琴葉が私を見て言う。
その声を聞いて、どきりとした。
冷たくて、機械的な声。
人間味を感じさせない声だった。
「……は、晴は?」
「晴くん? ……さぁ。今頃あたしたちを探して駆け回ってるんじゃない?」
え? どういうこと?
琴葉が大きくため息をつく。
「まだわからない? 天音ちゃん、あたしは迎えにきたんだよ。向こう側から」
空の色が、濁って見えた。
なんでかって言われたらなんとも言えない。
強いて言えば、周りが暗い。さっきまではこんなに暗くなかった。
私がいるのは商店街じゃなく、どこかわからない獣道になっていた。
足音に気付き、向こうを見ると、誰かがこちらに来る。
近づくにつれ、それが大人の男性で、寝ている小さな赤ちゃんがいることもわかった。
「これが向こうの姫、[太字][漢字]零月[/漢字][ふりがな]れいげつ[/ふりがな][/太字]……。やっと手に入れた」
レイゲツ、と聞いた時、何か違和感を覚えた。
既視感というか、デジャヴというか……。
彼に聞いてみようと思い、足を踏みだそうとする。
が、体が動かなかった。
普通、夢で自分が動けないなんてことない。
直感で、普通の夢じゃないことを感じた。
そのとき、眠っていた赤ちゃんが、薄く目を開く。
知らない場所なのだろうか。大きな声で泣き始めた。
「あっ⁉︎ こら、泣きやめ。誰にも見つかるわけにはいかないんだ」
男が慌て始める。
次の瞬間、私は信じられないものを見た。
赤ちゃんが、アスファルトに落ちていた。
ずっと見ていたけど、落ちる瞬間はわからなかった。
まるで、最初から地面で寝ていたように。
落ちる音だけ、大きく響いた。
相当痛かったらしく、赤ちゃんは更に大きな声で泣き喚く。
「今、俺は何も……うわぁあぁあ!」
彼は[漢字]狼狽[/漢字][ふりがな]うろた[/ふりがな]え、腰を抜かす。
男は叫びながら、今来た道を走って行った。
「ちょっと! 待って!」
私は呼び止めようとしたけど、言葉にならなかった。
しばらく何も起こらず、ただ景色を見ていた。
風が草を揺らす音と、遠くから虫の鳴き声が聞こえてくる。
赤ちゃんはずっと泣いていたが、しばらくすると泣き止んで眠ってしまった。
どれだけそうしていただろうか。向こうから人影が見えてきた。
それは、だんだんと私——というより赤ちゃんだろう——に近づいていく。
「あれ、何か落ちて……。赤ちゃん?」
そう言いながら赤ちゃんに駆け寄る人を見る。
女性だとはわかったが、顔はぼやけてよく見えない。
声がどこかで聞いたことがある気がするんだけど……。
どこか懐かしさを感じる声だった。
まるで、毎日聞いている声みたいだ。
「大変! 風邪引いたら……。明日警察に届けましょう」
彼女は赤ちゃんを抱いて去って行った。
結局誰だったんだろう。私は何を見せられたんだろうか。
そう思ったところで、私の意識は現実へと昇って行った。
[水平線]
目が覚めると、私は空を見ていた。
どこまでも青い、澄み切った空だった。
私は、琴葉と最初に会った公園にいた。
でも、どこか違う。
ベンチが歪んでいる。
全体的に色彩がくすんで色褪せていた。
近くに誰かがいるっぽい。
晴かな。2人とも無事かな。
横を見ると、琴葉の顔があった。
でも、晴はいない。
「……あれ。天音ちゃん、起きたんだ」
琴葉が私を見て言う。
その声を聞いて、どきりとした。
冷たくて、機械的な声。
人間味を感じさせない声だった。
「……は、晴は?」
「晴くん? ……さぁ。今頃あたしたちを探して駆け回ってるんじゃない?」
え? どういうこと?
琴葉が大きくため息をつく。
「まだわからない? 天音ちゃん、あたしは迎えにきたんだよ。向こう側から」
空の色が、濁って見えた。