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夜の桜は散る運命にある

#4

3.

 ——それから、10分。
 3人で歩いて向かったのは、小さなカフェだった。
 1番奥の、話し声が聞こえなさそうな席に座る。

「天音ちゃん、スマホある?」

 頷いて、ピンクのカバーのスマホを取り出す。

「天音ちゃんのお母さんに連絡しよう。んー、なんて言ったらいいかな。『友達の家に泊まる』じゃ重いか。『遅くなる』ってだけ打っといて」

 言われた通りにメッセージを送信すると、すぐに既読がついた。『今どこにいる?』とだけ返信が来る。

「今どこにいる?って聞かれてるけど、カフェって言っていいの?」

 私が聞くと、琴葉は少し逡巡したあとに頷いた。
 カフェだと伝えると、『今から行く』と返ってきた。

「お母さん、今から来るの⁉︎」

 嘘!
 私は2人の方を振り向く。

「それでいいんだ。夜桜の親を待つ」

 晴が言った。焦りなんて微塵もない、落ち着いた声だった。

[水平線]
 向こうから走ってくる女の人がいる。

「お母さんっ!」

 お母さんは、私を見るなり抱きついてきた。
 その手は、少し震えていた。

「無事でよかった……」
「えっ、何⁉︎ 恥ずかしいからやめてよ」

 混乱している私たちに、2人が近づいてくる。

「[漢字]茉白[/漢字][ふりがな]ましろ[/ふりがな]さん、来てよかったんですか?」
「ええ、いいの。いっそのこと、伝えるのがこの子のためだから」

 琴葉とお母さんが話している。
 どう言うこと? 2人は、いや、晴も含めて3人は知り合いだった?

「天音。あなたにとって、家はもう安全じゃない。だから、晴くんと琴葉ちゃんにお願いしたの」

 え?

「ま、待って。話が読めない。うちが安全じゃない? なんで? そもそも晴と琴葉はなんなの?」

 私が聞くけど、お母さんは悲しげに俯くだけ。

「天音、お願い。一週間、一週間だけ。あなたの誕生日まで、あいつらから2人と逃げて」

 それだけ言うと、お母さんはカフェを出て行ってしまった。

 一週間……? それまで逃げたとして、何があるの……?

 晴が「行くぞ」と小さく言って、私たちもカフェを出た。
[水平線]
 カフェを出ると、足元はもう水に覆われていた。
 目の前には、人型の影と、巨大なガマガエル。

「琴葉、行けるか?」
「もち。晴くんこそ、足引っ張んないでよね!」

 そう言うと、2人は私そっちのけで走り出す。
 晴は最初に見たような札を、ガマガエルに押し当てる。
 よくわからない呪文を唱えると、ガマガエルの体が泡立ち、蒸発するみたいに掻き消えた。

 琴葉は……って!

「刀⁉︎ 銃刀法違反⁉︎」

 琴葉が持ってるのは、小ぶりな日本刀だった。
 人型の影に斬り込むと、割れた影は次々にくだけて消える。

「あっ!」

 2人の上を飛び越えて、ガマガエルが私の方へ飛んでくる。
 生理的な嫌悪感に思わず鳥肌が立つ。

「嫌っ!」

 お願い、止まって——!
 カチッと音が鳴る。

[水平線]
 ——その瞬間、時計の針が砕けた。

2026/03/04 16:30

雨坂結侑
ID:≫ 0pdtWgWyzpc/U
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和風ファンタジー陰陽師生贄

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