文字サイズ変更

夜の桜は散る運命にある

#3

2.

「選ぶって……え、聞けるんじゃなくて?」
 なんなんだこの人たち。説明後回しにし続けて、挙げ句の果てには聞くか逃げるか?

「ここで聞き逃したら、もう2度とわからないとかじゃないよね?」
「……それについて、あたしは保証しかねる。でも、逃げなかったら、向こう行き」

 だから、その向こうがなんなのか教えてほしいのに!
 でも。
 怖いけど。
 逃げなきゃ終わりなんだ。

「でもわかった! なら逃げる!」

 私の判断が意外だったのか、2人は少し驚いたような顔を見せる。

「じゃあ走るぞ。遅れるなよ」

 え、さっき思ったけど晴ってめちゃくちゃ足速いよね? 遅れると思うけどなぁ……。

 こんなわけわかんない状況下で何考えてんだろ。
 ちょっと笑えてきた。

「すごいね、天音ちゃん。こんな状況で笑えるんだ」

 琴葉が言う。皮肉とかがない、シンプルに感心した時の言葉。

「なんでだろ! とにかく、2人足速い!」

 ——あれ?
 2人とも、足速いはずなのに。
 なんで私、[太字]2人に並べてるの?[/太字]

 考えてるヒマはない。
 角を曲がって、曲がって、曲がって……。

 え?

「通学路……?」

 でも、異常だ。
 違う。
 ここは通学路じゃない。

 眼前に広がる住宅街。
 買い物帰りのおばさん。
 笑って歩く小学生。

 一人一人の目に映っているのは、目の前の道じゃない。
 話してる友達でもない。
 晴でも、琴葉でもない。
 全員が[太字]私を見ていた。[/太字]

 その中に知っている顔を見つける。
 近所のおしゃべり好きの佐藤おばさん。
 そのおばさんが私を見たまま笑う。

「あら天音ちゃん。オカエリ」

 すかさず琴葉が「返事しちゃダメ。目を合わせるのも」と囁く。
 でも、遅かった。
 佐藤さんと目が合う。
 頭の中に霞がかかった感覚。

[右寄せ] あ。
 佐藤さん、まばたきしてない。[/右寄せ]

 あれ?
 私なんでこんなとこにいるんだっけ。
 もう帰んなきゃ。
 そもそも、こんなのも夢なんだよ。
 空だって夕焼けなのに夜みたい。

[右寄せ] 私はゆっくり頷いて、佐藤さんの方に歩いて行く。
 うん。こっちが正解。[/右寄せ]

[中央寄せ]「ょ……[小文字]く[/小文字]……[大文字]夜桜![/大文字]」

 低い声。
 ものすごい力で腕を引かれる。[/中央寄せ]

 何。
 私はこっちに帰るの。
 なんだったの、向こう側とかガマガエルとか。

「晴くん、これもう……」
「仕方ない。[太字]トホカミエミタメ[/太字]!」

 その声が頭に響いた瞬間、頭の中の霞が晴れた。

「は、え? ……キャアアアアア!」

 視界に映ったのは、佐藤さんでも小学生でもない。
 人の形をした真っ黒い影だった。

「天音ちゃん、走って!」

 琴葉に腕を引かれる。
 私は彼女に引っ張られながら、呆然と考えていた、

 さっき私が思ったのは、本心だった。本音だった。
 でも、夢じゃないのかもしれない。

「[小文字]どうしたらいいの……[/小文字]」

 私の呟きは誰の耳にも入ることなく、風の中に掻き消えた。

2026/02/08 14:19

雨坂結侑
ID:≫ 0pdtWgWyzpc/U
コメント

この小説につけられたタグ

和風ファンタジー陰陽師生贄

通報フォーム

お名前
(任意)
Mailアドレス
(任意)

※入力した場合は確認メールが自動返信されます
違反の種類 ※必須 ※ご自分の小説の削除依頼はできません。
違反内容、削除を依頼したい理由など※必須

盗作されたと思われる作品のタイトル

どういった部分が元作品と類似しているかを具体的に記入して下さい。

※できるだけ具体的に記入してください。

《記入例》
・3ページ目の『~~』という箇所に、禁止されているグロ描写が含まれていました
・「〇〇」という作品の盗作と思われます。登場人物の名前を変えているだけで●●というストーリーや××という設定が同じ
…等

備考欄
※伝言などありましたらこちらへ記入
メールフォーム規約」に同意して送信しますか?※必須
タイトル
URL

この小説の著作権は雨坂結侑さんに帰属します

TOP