「夜桜天音。おまえはこのままだと、もう戻れない」
思考が一瞬停止した。
……………………は?
[水平線]
——って言われる10分前。
私がいたのは学校の屋上だった。
「……えっと、あのぉ?」
「…………」
さっきからずっとこんな調子。
話しかけても答えない。
何の説明もなし。
目線を合わせようとすらしない。
っていうより、合わせられない、というか……?
助けてもらったんだから命の恩人?
いやいやいや、あれが何なのか教えてくれないし……。
謎の自問自答をしていると男子がスマホをいじり出した。
しばらくしてやめると、男子は私に向き直る。
そして、言った。
「夜桜。説明は後だ」
は、後? 普通、今だよ?
「後って、いつですか」
「今は話せない」
私が明らかに困惑してるのに気付いたのか、男子は大きくため息をついた。
「……三つだ。今言えるギリギリ。
まず一つ。おまえは狙われている。理由は後だ」
うん、狙われてるのはわかったから理由教えてよ。
「二つ。さっきの奴らは人間じゃない」
そこ? どう見ても人間じゃないしょ。
「三つ。……ここは安全じゃない」
え?
私が聞き返すより先に、屋上のフェンスの向こうから影が見えた。
「……来たな」
男子はまるで知っていたかのように——いや、確定で知ってたな、これ——立ち上がり、ついでに私も立たせる。
影と思っていたそれは、影じゃなかった。
「カエル……」
「ガマガエルだ」
そこ訂正する必要ある?
とにかくそのガマガエルは……デカかった。
ゴールデンレトリバーかってぐらい。
そんなやつがデカい舌をこっちに向けてくる。
今目合ったし。普通に怖い。無理。
「逃げるぞ」
男子が短く言う。
「え? でもここ屋上だよ⁉︎ 逃げるって……」
「暴れんなよ」
私の言葉を遮って男子は私の背中と膝裏に手を回す。
「えっ……」
「舌噛むなよ」
へっ? ここ3階、え⁉︎
それだけ言うと男子はフェンスに近づいて、[太字]跳んだ[/太字]。
「え、ちょ、え、ま⁉︎」
訳のわからないことを言いながら重力に引っ張られていく。胃が浮いた。
「キャアアアアアアアアアア‼︎」
とん、と。
彼の着地するおとは、猫みたいに静かだった。
「走れるか?」
「えっ今? はい!」
また走る。どこへかもわからないけど。
[水平線]
着いたところは小さな公園。
誰もいない寂しい公園だった。
でも、それがちょっと安心した。
「ここなら、細かい説明してくれますか?」
「あぁ、その前に……[小文字]そろそろくるはずなんだけどな……[/小文字]」
「そろそろ?」
「まあいいか。……夜桜天音」
名前を呼ばれてなんとなく居住まいを正す。
何か言いかけて、やめて。
男子は小さく息を吸って続ける。
「おまえは……このままだと、向こう側に連れて行かれる」
頭が真っ白になる。
思考回路が繋がる。
……は?
向こう側?
連れて行かれる?
「え、ちょっ、どういうことですか⁉︎」
「どういうことも、こういうことで、事実だ」
「そうじゃなくて!」
え、どういうこと?
完全パニックに陥る。
「あ、いた。[漢字]晴[/漢字][ふりがな]はれ[/ふりがな]くん! ごめん、遅くなった」
明るい声がして振り向くと、制服を着たショートボブの女子がいた。
誰? さっきから訳のわからないことばっかりでパニック状態になっている。
「えーと? 晴くん?」
彼女は何かを察したようで、にっこりと男子——晴?——を見る。
にっこり笑っているのに、目だけが動かなかった。
「また何の説明もなしでド直球に事実だけ言ったしょ! パニクってるよ、この子!」
晴は露骨に目を逸らす。
あ、この人ちゃんと人間なんだ(?)。
変なことを考えていると、
「ごめんね天音ちゃん! うちのバカ従兄弟が変なこと言ったね⁉︎」
「え、名前……」
「詳しい説明、していいかな?」
「あ、はい……」
「ああ、あたしは[太字][漢字]琴葉[/漢字][ふりがな]ことは[/ふりがな][/太字]! で、こっちが従兄弟の[太字]晴[/太字]くんね!」
琴葉が口を開きかけ、それを止める。
ブランコがきぃと軋む。
晴が「来たか」と小さくつぶやく。
「夜桜、選べ。
全部聞くか、逃げるか」
思考が一瞬停止した。
……………………は?
[水平線]
——って言われる10分前。
私がいたのは学校の屋上だった。
「……えっと、あのぉ?」
「…………」
さっきからずっとこんな調子。
話しかけても答えない。
何の説明もなし。
目線を合わせようとすらしない。
っていうより、合わせられない、というか……?
助けてもらったんだから命の恩人?
いやいやいや、あれが何なのか教えてくれないし……。
謎の自問自答をしていると男子がスマホをいじり出した。
しばらくしてやめると、男子は私に向き直る。
そして、言った。
「夜桜。説明は後だ」
は、後? 普通、今だよ?
「後って、いつですか」
「今は話せない」
私が明らかに困惑してるのに気付いたのか、男子は大きくため息をついた。
「……三つだ。今言えるギリギリ。
まず一つ。おまえは狙われている。理由は後だ」
うん、狙われてるのはわかったから理由教えてよ。
「二つ。さっきの奴らは人間じゃない」
そこ? どう見ても人間じゃないしょ。
「三つ。……ここは安全じゃない」
え?
私が聞き返すより先に、屋上のフェンスの向こうから影が見えた。
「……来たな」
男子はまるで知っていたかのように——いや、確定で知ってたな、これ——立ち上がり、ついでに私も立たせる。
影と思っていたそれは、影じゃなかった。
「カエル……」
「ガマガエルだ」
そこ訂正する必要ある?
とにかくそのガマガエルは……デカかった。
ゴールデンレトリバーかってぐらい。
そんなやつがデカい舌をこっちに向けてくる。
今目合ったし。普通に怖い。無理。
「逃げるぞ」
男子が短く言う。
「え? でもここ屋上だよ⁉︎ 逃げるって……」
「暴れんなよ」
私の言葉を遮って男子は私の背中と膝裏に手を回す。
「えっ……」
「舌噛むなよ」
へっ? ここ3階、え⁉︎
それだけ言うと男子はフェンスに近づいて、[太字]跳んだ[/太字]。
「え、ちょ、え、ま⁉︎」
訳のわからないことを言いながら重力に引っ張られていく。胃が浮いた。
「キャアアアアアアアアアア‼︎」
とん、と。
彼の着地するおとは、猫みたいに静かだった。
「走れるか?」
「えっ今? はい!」
また走る。どこへかもわからないけど。
[水平線]
着いたところは小さな公園。
誰もいない寂しい公園だった。
でも、それがちょっと安心した。
「ここなら、細かい説明してくれますか?」
「あぁ、その前に……[小文字]そろそろくるはずなんだけどな……[/小文字]」
「そろそろ?」
「まあいいか。……夜桜天音」
名前を呼ばれてなんとなく居住まいを正す。
何か言いかけて、やめて。
男子は小さく息を吸って続ける。
「おまえは……このままだと、向こう側に連れて行かれる」
頭が真っ白になる。
思考回路が繋がる。
……は?
向こう側?
連れて行かれる?
「え、ちょっ、どういうことですか⁉︎」
「どういうことも、こういうことで、事実だ」
「そうじゃなくて!」
え、どういうこと?
完全パニックに陥る。
「あ、いた。[漢字]晴[/漢字][ふりがな]はれ[/ふりがな]くん! ごめん、遅くなった」
明るい声がして振り向くと、制服を着たショートボブの女子がいた。
誰? さっきから訳のわからないことばっかりでパニック状態になっている。
「えーと? 晴くん?」
彼女は何かを察したようで、にっこりと男子——晴?——を見る。
にっこり笑っているのに、目だけが動かなかった。
「また何の説明もなしでド直球に事実だけ言ったしょ! パニクってるよ、この子!」
晴は露骨に目を逸らす。
あ、この人ちゃんと人間なんだ(?)。
変なことを考えていると、
「ごめんね天音ちゃん! うちのバカ従兄弟が変なこと言ったね⁉︎」
「え、名前……」
「詳しい説明、していいかな?」
「あ、はい……」
「ああ、あたしは[太字][漢字]琴葉[/漢字][ふりがな]ことは[/ふりがな][/太字]! で、こっちが従兄弟の[太字]晴[/太字]くんね!」
琴葉が口を開きかけ、それを止める。
ブランコがきぃと軋む。
晴が「来たか」と小さくつぶやく。
「夜桜、選べ。
全部聞くか、逃げるか」