「…ホントにやるんですか、リカ様」
夜闇に紛れてこそこそと塀の裏を伝い走る、2つの黒い影。うちひとつが、もうひとつに向かって囁いた。
「やる、しかないだろう。お前が倒した台車を倉庫に隠してから、誰もあそこには入っていない。まだ悪事が露呈していないんだから…」
塀に背中をぴたりとつけて、守衛の姿をちらりと確認する。錫杖の先に燃えるかがり火が、中庭に繋がる西門の前にふたつ、優秀な番をしていることを表すように陣取っていた。
「作戦を確認するぞ」
真っ黒な覆面で口元を覆ったリカが、視線だけをククに向けた。
先ほどの謁見室にて。
「…それでは、実行は今夜、と」
「ああ。タイムリミットが明日だからな。屋敷は入り組んでいるから、夜の暗がりに隠れながら行けばそう見つかることはないだろう」
ククが描いた、巨大な屋敷の地図を床一面に広げながら、二人は話し合っていた。
「まずは第一の関門。ここから中庭までの最短ルートに位置する、西門だ」
リカが、ほっそりとした指で地図の一地点を指した。
「手始めに、守衛の右だ。作戦その一、開始」
ククが素早く門の横を走り抜け、そのうしろ、菜園の近くにある檻…うさぎ小屋の鍵を開いた。
その様はまさに脱兎。中から大量の白いもふもふした塊が飛び出してくるのを見計らって、リカは叫ぶ。
「きゃーっ、うさぎたちが脱走してるー!」
リカは首に手を当て指をコキコキ…と鳴らし、小屋を管理する[漢字]園女[/漢字][ふりがな]そのめ[/ふりがな]である、クメに似た声を上げた。リカの特技である変声術。ちなみに本日本物のクメが暇を貰い、里帰りしていることは調べ済みである。
二人の守衛がわらわらと庭園へ駆け出していく。その隙にククは西門の屋根の上に飛び上がり、リカを手招きした。
ククが伸ばした手をリカが掴み、そのまま軽やかに[漢字]櫓[/漢字][ふりがな]やぐら[/ふりがな]へと引き上げられる。
瓦屋根の波の中を走りながら、ククは言った。
「あの…さっき仰られてたことの続きは」
「なんだっけ?…ああ。まだ悪事が露呈していないんだから、隠蔽できるものはじゃんじゃん隠蔽してこうってことだよ」
「…とても為政者とは思えない悪徳発言ですが」
第一関門を突破した二人は、星のない暗雲の下を駆け抜けていった。
夜闇に紛れてこそこそと塀の裏を伝い走る、2つの黒い影。うちひとつが、もうひとつに向かって囁いた。
「やる、しかないだろう。お前が倒した台車を倉庫に隠してから、誰もあそこには入っていない。まだ悪事が露呈していないんだから…」
塀に背中をぴたりとつけて、守衛の姿をちらりと確認する。錫杖の先に燃えるかがり火が、中庭に繋がる西門の前にふたつ、優秀な番をしていることを表すように陣取っていた。
「作戦を確認するぞ」
真っ黒な覆面で口元を覆ったリカが、視線だけをククに向けた。
先ほどの謁見室にて。
「…それでは、実行は今夜、と」
「ああ。タイムリミットが明日だからな。屋敷は入り組んでいるから、夜の暗がりに隠れながら行けばそう見つかることはないだろう」
ククが描いた、巨大な屋敷の地図を床一面に広げながら、二人は話し合っていた。
「まずは第一の関門。ここから中庭までの最短ルートに位置する、西門だ」
リカが、ほっそりとした指で地図の一地点を指した。
「手始めに、守衛の右だ。作戦その一、開始」
ククが素早く門の横を走り抜け、そのうしろ、菜園の近くにある檻…うさぎ小屋の鍵を開いた。
その様はまさに脱兎。中から大量の白いもふもふした塊が飛び出してくるのを見計らって、リカは叫ぶ。
「きゃーっ、うさぎたちが脱走してるー!」
リカは首に手を当て指をコキコキ…と鳴らし、小屋を管理する[漢字]園女[/漢字][ふりがな]そのめ[/ふりがな]である、クメに似た声を上げた。リカの特技である変声術。ちなみに本日本物のクメが暇を貰い、里帰りしていることは調べ済みである。
二人の守衛がわらわらと庭園へ駆け出していく。その隙にククは西門の屋根の上に飛び上がり、リカを手招きした。
ククが伸ばした手をリカが掴み、そのまま軽やかに[漢字]櫓[/漢字][ふりがな]やぐら[/ふりがな]へと引き上げられる。
瓦屋根の波の中を走りながら、ククは言った。
「あの…さっき仰られてたことの続きは」
「なんだっけ?…ああ。まだ悪事が露呈していないんだから、隠蔽できるものはじゃんじゃん隠蔽してこうってことだよ」
「…とても為政者とは思えない悪徳発言ですが」
第一関門を突破した二人は、星のない暗雲の下を駆け抜けていった。