むかしむかしの、お話です。
土地が痩せ、作物の育たなかったある荒野を、一羽のうさぎが訪れました。
その年から、この地は。
土は肥え、水は澄み、作物が生い茂り。
あたたかな日の光に風が吹き、花のそよぐ…そんな、豊かな国になりました。
そのうさぎは、豊穣の神様だったのです。
時は経ち…
死の間際、うさぎは自らの子に、とあるものを遺しました。
“このろうそくをお前たちにやろう”
…子孫代々ロウを継ぎ足していき、炎を決して絶やさないように、と。
それよりうさぎの子孫たちは代々、そのろうそくの炎と国家の安寧を守り続け…
「豊穣の神の加護で、国は栄え続けました…」
朱色の巫女服を纏った年若い姫は、そう[漢字]諳[/漢字][ふりがな]そら[/ふりがな]んじた後、目の前に平伏する従者の方に視線を落とした。
「…ってのが、お祖母様から聞いた、国の伝説だが」
従者の少年は、がたがたと震えながら、彼女の口から紡がれる玉音を甘んじて受け入れる。
なすすべもなく、とうとう彼女は言った。
「間違えて、ろうそくの火を消しちゃったって…?」
少年が、覚悟を決めたように唇を噛む。
姫が、息を大きく吸い込んで、そして。
「アホおおおおおぉぉぉ!!!!」
姫の叱責の叫びは、夕暮れの都の空にこだました。