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【参加型〆】プチウィッチフォーチュンテーラー

#8

無気力ワットエバー・後編 担当占い師:ミゼ

彼女が言うには。
3つの宝玉には、術者と呼応して引き出される、魔力が込められているそうだ。今テーブルに置いてある3つは、全て“心の中を映す”力があるらしい。
俺でも聞いたことのある“水晶玉”は、「現在」を。
“翡翠玉”は、「過去」を。
“珊瑚玉”は、「未来」を、それぞれあらわしているのだと。
「人間界には“石言葉”というものがあるのでしょう?こちらのお仕事の界隈では、石は単なる魔力の媒介物です。魔力を込めやすいというだけの、ただの無機物ですから」
「真珠と、琥珀と…珊瑚は、有機物じゃなかったっすか」
「もう…博識アピールしないでください!魔道具的には“命があるか、ないか”が重要なんですよ。私にあまり化学の知識がなくって、適当に話していることがバレるじゃないですか…」
苦笑しながら、ミゼさんは茶目っ気たっぷりに言った。



「えー…結果が出ましたね。まずは“過去”から見ていきましょうか。…おや、変動が比較的激しめになっていますね。もしかして、いじめられる前…つまり小学校前半は、かなり明るい性格でいらっしゃった?」
「そうかもしれないす」
他の人と関わることが好きだったし、友達を作るのも嫌いじゃなかった、と思う。
「では次に、“未来”を見てみましょう」
「え…“現在”ではなく?」
「ええ。このまま一切の分岐なしに進んだ場合の、未来です。私から占いの結果をお伝えしたのち、おそらく見えるものも変化していると思われます。ので、後でもう一度見ましょうね」
そう言ったミゼさんは、つやつやとした赤茶の宝玉を覗き込み、…無言になった。


「もしかして…!」
彼女が慌てはじめる。一体何が見えたのだろうか。


…二人して覗いた水晶玉には、木に括られた縄を、首にかけようとする俺が映っていた。







「岳人さん。大変申し上げにくいのですが、このまま行くと、あなたは近いうちに自らの命を絶ってしまうようです」
「…っす」
「ただその根本的な原因は…おそらく、苦痛な思い出そのものではなく、その思い出によって変えられてしまった岳人さんの無気力さ。もしや、今も自らの人生の意味を、疑問に感じてらっしゃるのでは?」
…彼女は、占い師としても、カウンセラーとしても、非常に優秀なようだ。
俺も、うすうす感じてはいた。このまま人生を歩んでいけば、普通の方法では天寿をまっとうしそうにはないな、と。
「この場合、報酬である“いじめの記憶”をいただいたとしても、岳人さんはそのうち自らを手にかけてしまうでしょう。
…そこで、提案があるのです」
ミゼさんが、身を乗り出してきた。


「…依頼人さんにあまり肩入れしすぎると、シーラさんには怒られてしまうでしょうが。残念ながら、私は目の前で命を終えようとしている方をみすみす見逃すほど、ドライにはなれません。ですから、なるべく前向きに検討していただきたいのですが」

明るい憩いの場のようなこの部屋に似つかわしくない、真剣な、しかしどこか危なっかしい不安定さをはらんだような瞳で、彼女は俺を見つめる。

「シーラさんは、予言と賢哲の魔女。リーエさんは、念動と博愛の魔女。この二人は“完璧なハッピーエンド”を目指す方々ですから、きっと私のやり方は気に食わないでしょう。私の得意魔法は、魔法薬制作をはじめとする付与魔法と…」




「呪いです」
今までに見たどの瞬間よりも、愛らしい笑みをうかべながら、彼女は言った。







「おっ、迷子にならなかったな夜坂!」
「遅かったな、心配してたんだぞ」
名前も知らないヤツらだけど、その言葉は確かに嬉しい感情として、俺の中に染み込んでくる。
「悪ぃ悪ぃ。ちょっと占ってもらってたんだよ」
「え、お前そういうの信じるタイプなのな」
「意外!」

はしゃぐこいつらも、きっと俺の中ではこれからの人生を生きる意味のひとつだ。
夕暮れの中、観光地の町並みは夜を迎える準備をするように、その灯りをひとつひとつ点けていく。
俺たちが喋りながらホテルに向かう道の向こうに、一番星が瞬いていた。







「…だめですね。私は、いつまで経っても二人のような“清らかな幸福”を与えてあげられません」
ミゼは夕食の準備をしながら、先ほど帰っていった依頼人の青年を思い出す。


「岳人さん、まず1つ目の提案です。あなたをいじめた張本人を、呪いましょう。覚えているだけ、この紙に名前を書いていってください」
羊皮紙と万年筆をテーブルに出すと、青年はうろたえた。
「えっ…ちょっとそれは…もうそいつらに対しても、何も思ってないですし」
「そうですよね。ただ、岳人さんの性格をそこまで歪ませ、人生を狂わせる原因になった人たちには、それなりに報いてやるべきです。…それにあまり心配なさらないでください、人間界では“人を呪わば穴二つ”という言葉があるのでしょう?正確に言うとこれは呪いではありません。あくまで“呪い返し”です」
ミゼの言葉に、青年は困惑した表情を見せた。
「岳人さんの依頼内容を、“コミュニケーション能力の向上”から“過去の因縁に決着をつける”と変更しましょう。人の道を外れた、人を害する行為は、問答無用で“呪い”にあたります。彼らに、あなたにしたことをお返ししてあげるだけですよ」
「…だけど」
「2つ目の提案です。報酬の内容を、“過去のいじめ”から“私が彼らを呪い返したこと”に変更しましょう。…あなたは、私と会ったとき、私のことを“苦手だ”と感じませんでしたか」
はっとしたように、青年が顔をあげる。間違いないとは思っていたが、どうやら図星だったらしい。
「岳人さんはきっと、自分より弱そうな人が苦手なのですよね。だから、華奢…ともすれば頼りなさすぎる私を、敬遠しようとした。…それはきっと、あなたの過去のように、自分が弱い人を傷つけることを、恐れているからなんです。岳人さんの本来の性格は、とっても優しい方だから…きっと私が彼らを呪ったら、罪悪感を感じてしまうでしょう。だから記憶を、消させてください。そうすれば、手を汚すのは私だけで済みますもの。…まあ、とうにこの両手は汚れきっているのですが」

「…どうして、俺のためにそこまで」
「言ったでしょう。私は完璧なハッピーエンドは作れませんが、そこまでドライにもなりきれない、中途半端な魔女です。あなたとおそろいで、自分のことなんてどうでも良いんです。…ただ、岳人さんのような優しい人を、放っておけないだけ。いわば私のエゴです。どうか受け取っていただけませんか。完璧ではない、汚らしくてつぎはぎだらけの幸福が、私の作り出せる最大限のハッピーエンドです」




彼の了承ののち、ミゼの秘密の提案を忘れた彼に、「あなたを思っている人は、案外身近にいるのかもしれない」と伝えた。
先ほどは何も映っていなかった「未来」を表す珊瑚玉に、彼を必死で探す友人たちが見えたから。それを伝えると、彼は少しだけ、和らいだ表情になった。帰っていく彼は、来た時よりも背筋がのび、上の方を見ているように感じた。


「私も、あの1番星のように、シーラさんやリーエさんのように、清らかな幸福を与えられる存在になれたら良かったのに」
人知れず彼女が呟いた声は、宵の明星の浮かぶ夜空に、儚く溶けて消えていった。


担当占い師:ミゼ
依頼人:夜坂 岳人、17歳の青年。
消した記憶:与えられた幸福のどこかに彼女が隠した、見てはいけない汚れ。
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作者メッセージ

よし、順調に2話目を書き終えることができました。
すい様、二度目のリクエストありがとうございました!

●依頼人の名前 夜坂 岳斗(よさか がくと)
●年齢 17(高3)
●性別 男
●一人称 俺
●性格 無愛想で基本無口。弱い人と関わり合いになりたがらない。
●お悩み 小学生5年の頃クラスメイトにいじめられて6年になる前に転校。転校先の学校では嫌われないように、いじめられないように愛想良くしていたが、うまく利用されるだけだった。断れない性格故に中学に入ってからも、仕事を押し付けられたり遠回しないじめを受けていた。高校は通信制に行き、人との関わりをなくすために現在の性格になった。弱い人が苦手なのは昔の自分と重なるから。
●消したい記憶やトラウマ いじめられていた記憶全て。
●何をしていたらこの森にたどり着いた? 修学旅行で森の中を探索していたら。
●相談したい魔女の名前 ミゼ
●「信じられないモノ」を目の前にしたら、どんな反応をする?
 何事も「そうすか」で済ませる。無関心。
●口調、サンプルボイス、相手の呼び方 「人の名前覚えるの苦手なんで」
●名前をどのように呼ばれたい? さん付け
●その他 通信制高校なので私服。オーバーサイズのパーカー。

2025/02/03 16:41

団栗きんとん
ID:≫ soHtg8UkVbFiM
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