こうして、Iは夏とは思えぬようなむさ苦しい形でタオルケットにくるまることとなったのである。ひとえに、オバケが怖いというただ一つの理由によって。
しかし、Iはまだちょっと不安だった。夏掛けのタオルケットは、涼しさを重視しているのだからもちろん薄い。これではおそらく物の怪の類は、こちらの築いた[漢字]結界[/漢字][ふりがな]タオルケット[/ふりがな]など意にも介さず襲ってくるだろう。というわけで、「ちゃんと布団を被る」という、Iの戦いフェーズ2の火蓋が切って落とされた。
一応そのベッドには、夏でも普通の布団が掛けられていた。ただだ誰も使う人がいないので、折りたたまれて足元に置かれていたのだ。
…非常にまずい…
ちゃんと布団を掛けるには、どうしても一旦タオルケットをめくり上半身を起こして、足元に畳まれて置いてある布団に手を伸ばさなければいけない。しかしそんな大それたことをしてこの脆弱な結界をひとたび崩せば、ヤツラは気づいて襲いかかってくるだろう。そこでIは、とある方法をとった。
「…こう、身体にタオルケットを巻きつけたまま起き上がって、生きる巻き寿司みたいにぴょこぴょこぴょこぴょこと…」
「あーっはっはっは!はっはっ…うはっ!ふふふ…あーはははははっ!」
「んでトビウオを狩るカツオドリのように、こう巻き寿司状態でばさっ!と布団を狩って」
「ふあっふぁ!はーっははははははは!うふっ…うはははほほほほ!ウホホホホ!」
もはや姉は、永遠に笑うゴリラと化していた。
アネゴリラ・イン・ザ・カフェである。しかもなんかバナナジュース飲んでるし。美味しそうだし。
まあ、というわけで、Iは無事結界強化に成功した。安心できたところでそろそろ寝ようとしたのだが、
…Iは、ある可能性を思いついてしまった。いや、今までもちらついてはいたが、認識してしまわないようにわざと目を背け続けていた、という方が正しいだろう。ではその可能性とは何か。両手両足を[漢字]タオルケット+布団[/漢字][ふりがな]強化された結界[/ふりがな]にしまい込んだこの状態で、これ以上この熱帯夜に、彼は何をしなければならないのか。
(顔は出してていいのかな?)
…完全に、Iはそれを、認識してしまった。
(いやダメだダメださすがにこの蒸し暑い夜に!顔までなんて無理だ!潜り込むわけにはいかなっ…)
彼は、全身潜り込んだ。
あえなく重装備の中で蒸し焼きになり、案の定寝不足になったI。翌日は地獄を見た、と彼は語った。
カフェで彼の小さな戦いについて聞いたのち、彼はどこかに泊まって翌日帰っていった。いとこの姉とはよく気が合う。クーラーという文明の利器に感謝した時、特にそう強く思ったが、それよりも、
「どんなクソな怪談でも、受け取り手の感受性によってものすごい悪夢を生み出すことがあるんだね」
という見解が一致した時、私たちは改めて血縁の絆を感じたのであった。
しかし、Iはまだちょっと不安だった。夏掛けのタオルケットは、涼しさを重視しているのだからもちろん薄い。これではおそらく物の怪の類は、こちらの築いた[漢字]結界[/漢字][ふりがな]タオルケット[/ふりがな]など意にも介さず襲ってくるだろう。というわけで、「ちゃんと布団を被る」という、Iの戦いフェーズ2の火蓋が切って落とされた。
一応そのベッドには、夏でも普通の布団が掛けられていた。ただだ誰も使う人がいないので、折りたたまれて足元に置かれていたのだ。
…非常にまずい…
ちゃんと布団を掛けるには、どうしても一旦タオルケットをめくり上半身を起こして、足元に畳まれて置いてある布団に手を伸ばさなければいけない。しかしそんな大それたことをしてこの脆弱な結界をひとたび崩せば、ヤツラは気づいて襲いかかってくるだろう。そこでIは、とある方法をとった。
「…こう、身体にタオルケットを巻きつけたまま起き上がって、生きる巻き寿司みたいにぴょこぴょこぴょこぴょこと…」
「あーっはっはっは!はっはっ…うはっ!ふふふ…あーはははははっ!」
「んでトビウオを狩るカツオドリのように、こう巻き寿司状態でばさっ!と布団を狩って」
「ふあっふぁ!はーっははははははは!うふっ…うはははほほほほ!ウホホホホ!」
もはや姉は、永遠に笑うゴリラと化していた。
アネゴリラ・イン・ザ・カフェである。しかもなんかバナナジュース飲んでるし。美味しそうだし。
まあ、というわけで、Iは無事結界強化に成功した。安心できたところでそろそろ寝ようとしたのだが、
…Iは、ある可能性を思いついてしまった。いや、今までもちらついてはいたが、認識してしまわないようにわざと目を背け続けていた、という方が正しいだろう。ではその可能性とは何か。両手両足を[漢字]タオルケット+布団[/漢字][ふりがな]強化された結界[/ふりがな]にしまい込んだこの状態で、これ以上この熱帯夜に、彼は何をしなければならないのか。
(顔は出してていいのかな?)
…完全に、Iはそれを、認識してしまった。
(いやダメだダメださすがにこの蒸し暑い夜に!顔までなんて無理だ!潜り込むわけにはいかなっ…)
彼は、全身潜り込んだ。
あえなく重装備の中で蒸し焼きになり、案の定寝不足になったI。翌日は地獄を見た、と彼は語った。
カフェで彼の小さな戦いについて聞いたのち、彼はどこかに泊まって翌日帰っていった。いとこの姉とはよく気が合う。クーラーという文明の利器に感謝した時、特にそう強く思ったが、それよりも、
「どんなクソな怪談でも、受け取り手の感受性によってものすごい悪夢を生み出すことがあるんだね」
という見解が一致した時、私たちは改めて血縁の絆を感じたのであった。