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ねえねえ聞いて聞いて!

#4

【閑話】真夏の夜の葛藤 中編

8月中旬の、ギラギラと太陽の照りつける土曜日、午後1時。I(意味怖だとずっと思っていた彼)が来るというので、その日暇していた私といとこの姉は2人して、ひいひい言いながら夏の真っ昼間を歩いていた。最寄り駅に着いた途端、下を向いて歩いていた私たちは、視界いっぱいに広がる地面が、ギラついた暴力的な日差しを反射するアスファルトからひんやりとつややかなタイルに変わったのに気がついた。顔を上げると、いつのまにか身体をひんやりとした25度の空気が包んでいた。駅すごい、クーラーすごい…オフショルダーのシャツの肩が熱くない。頬が火照らない。前髪が汗でシャワー直後みたいにならない。
「クーラー、愛してる…」
姉がつぶやいた。私は無言のままだが、視線によって全力で同意した。顔を見合わせた2人は、今この瞬間、自分たちが世界中の誰よりも文明の利器に感謝していることを強く感じていたのである。

Iが無事合流した後、3人ともお昼を食べていなかったため、付近のカフェに直行した。カフェでもやはり私たちは、クーラーを拝まんばかりの低姿勢で席についた。

これは、Iから聞いた、あの夜の話である。


Iはその日、パーティーの後、親戚の家に泊まったそうだ。Zからは意味怖ではなかったことを既に知らされており、その時点での彼の中でもZの話は、私たちと同じ「クソ話」として認識されていた。ところが彼が歯を磨き、風呂に入り、空き部屋のベッドに入った11:30、
…事件は、起こった。

Zの話が、怖くなってきたのである。


「アッハッハ!ひゃっははははっ…ンハァっ…はーっはっはっは!」
Iがそこまで話した時、姉は爆笑し始めた。
カフェの店内に、ちょっと尋常じゃないほどヘンな笑い声が響く。周りのお客さんの目を気にした私は慌てて彼女をなだめたが、「アノ話が怖くなってきた」というのがよほどツボにクリーンヒットしたのだろうか、姉の爆笑は止まらなかった。
とりあえずどうしようもなく、私は笑いすぎてややむせている彼女の背中を叩きつつ彼に続きを促した。

カーテンの隙間から僅かに月明かりが差す、蒼い夜に満ちた部屋。最後の灯りであるダウンライトを消した後、その恐怖は唐突に訪れ、ベッドの中の彼の頭を完全に支配してしまった。寝ている人の脚をつかんで引きずっていってしまう女…というのがZの話。Iはその話について1人で悶々と考えていたところ、ふと恐ろしくなってしまったというのだ。自分のところにも、もしかしたら…と。
(…布団の中は安全だ!)
彼は真夏にもかかわらず、タオルケットの外に投げ出していた半身と両足を、超光速で中に縮ませた。もしあれが漫画だったら、絶対に集中線バシバシで「バビュンッ!」という効果音がついていたであろう…とIは語った。

布団の中は安全。なんとなく分からないでもない。幽霊とか物の怪の類は、ベッドや布団の中には入り込んでは来なさそうだ。なぜかは分からないがそう思ってしまう。なお全く根拠はないため、読者の皆様はいつかオカルト的な恐怖体験をした時、布団に潜り込むだけで「うーんこれで安心」と思ってはならない。せめてニンニクの欠片を握りつつお経のひとつでもとなえておくべきである。布団がニンニク臭くなろうが知ったこっちゃない。命が守れるのなら、魔除けだとでも思っておくのだ。安いモンであろう。

作者メッセージ

思ったより長くなっちゃった。次回、後編でラストです。

2025/01/25 11:21

団栗きんとん
ID:≫ soHtg8UkVbFiM
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