月明かりの差し込む蒼い夜。暗い部屋の中、クーラーの稼働する、僅かな音が聞こえる。
これは、“彼”が体験したとある7月の夜の、小さな戦いの物語である。
夏休みだった。私はいとこたちに誘われ、バーベキューパーティーに参加していた。大人16人、子ども8人。年齢や性別はそれぞれバラバラ。開始は夕方からだったが、日が落ちてからもまあ盛り上がるわ盛り上がるわ。unoをするやらスマブラをするやらさんざん遊んだ後、外でキャンプファイヤーをし、付近を肝試しと称し探索した。懐中電灯を持っているのは、遠方に住む同い年の男の子。はりきって行った割に些細な虫にまで悲鳴をあげるので、皆でさんざんからかってやった。
結局肝試しは途中で散歩と化した。コンビニまで歩き、全員分のアイスを買って帰宅した後、ろうそくを持ち出してきた例の“虫ビビリざこざこ男子”が、電気を消し「怖い話をしよう」と言い出したのである。ビビリのくせに。ビビリざこざこのくせに。
…そして彼は、普通に怖い話が下手くそであった…
ビックリするほどに誰も怖がらない。ろうそくに暗幕まで用意したのに、誰も怖がらない。かわいそうな程に誰も怖がらないのだ。
私の隣に座っていた関東住みのはとこ(2歳年下の弟)は、ざこざこ男子に対し「それ、意味怖かなんか?全然わかんない。すごい」と言う。感心しているところ悪いが、あいにく意味怖ではない。つまりろうそくや暗幕を持ち出し満を持して語った彼の話は、「意味がわかると怖い話」にすらなり損ねた、「意味わかんないし怖くない話」という、おおよそ「話」として聞くに値しないものだったのである。ちょうど茹ですぎた上にソースを何もかけないで食べるパスタと同じようなものだ。貧相で味もなく、キレが悪いクセにやたらと長いのである。
というわけで、ざこざこ男子発案の怪談会は、あえなく意味のない時間と化した。ただその例の弟だけは感心したままで、Z(ざこざこ男子の略)に何やら質問をしていた。
「わかった!Zくん、その脚掴んできた女が幽霊じゃなくて、ストーカーかなんかだったんでしょ!」
だから意味怖ではないというに。
ダダ滑りした直後に立て続けに的外れな質問をされるZはちょっと恥ずかしそうであった。そりゃその状況なら誰でも恥ずかしいだろうが、ビビリで口下手なクセに怖い話など披露するのが悪い。少なくとも私ならもうちょっとは怖くなった。口が上手いいとこの兄ならば、そのエピソードでも最大限の恐怖を植え付けられたことであろう。Zが助けを求めるように私をちらっと見ていたが、私は無視して暗幕を片付けていた。
さて、長々と書いてしまったが、ここまでが前置きである。この戦いは、この夜のおよそ1ヶ月後に、例の「あの話が意味怖だとずっと思っていた弟」とお茶をした時に聞いた、彼自身の体験の話なのである。
これは、“彼”が体験したとある7月の夜の、小さな戦いの物語である。
夏休みだった。私はいとこたちに誘われ、バーベキューパーティーに参加していた。大人16人、子ども8人。年齢や性別はそれぞれバラバラ。開始は夕方からだったが、日が落ちてからもまあ盛り上がるわ盛り上がるわ。unoをするやらスマブラをするやらさんざん遊んだ後、外でキャンプファイヤーをし、付近を肝試しと称し探索した。懐中電灯を持っているのは、遠方に住む同い年の男の子。はりきって行った割に些細な虫にまで悲鳴をあげるので、皆でさんざんからかってやった。
結局肝試しは途中で散歩と化した。コンビニまで歩き、全員分のアイスを買って帰宅した後、ろうそくを持ち出してきた例の“虫ビビリざこざこ男子”が、電気を消し「怖い話をしよう」と言い出したのである。ビビリのくせに。ビビリざこざこのくせに。
…そして彼は、普通に怖い話が下手くそであった…
ビックリするほどに誰も怖がらない。ろうそくに暗幕まで用意したのに、誰も怖がらない。かわいそうな程に誰も怖がらないのだ。
私の隣に座っていた関東住みのはとこ(2歳年下の弟)は、ざこざこ男子に対し「それ、意味怖かなんか?全然わかんない。すごい」と言う。感心しているところ悪いが、あいにく意味怖ではない。つまりろうそくや暗幕を持ち出し満を持して語った彼の話は、「意味がわかると怖い話」にすらなり損ねた、「意味わかんないし怖くない話」という、おおよそ「話」として聞くに値しないものだったのである。ちょうど茹ですぎた上にソースを何もかけないで食べるパスタと同じようなものだ。貧相で味もなく、キレが悪いクセにやたらと長いのである。
というわけで、ざこざこ男子発案の怪談会は、あえなく意味のない時間と化した。ただその例の弟だけは感心したままで、Z(ざこざこ男子の略)に何やら質問をしていた。
「わかった!Zくん、その脚掴んできた女が幽霊じゃなくて、ストーカーかなんかだったんでしょ!」
だから意味怖ではないというに。
ダダ滑りした直後に立て続けに的外れな質問をされるZはちょっと恥ずかしそうであった。そりゃその状況なら誰でも恥ずかしいだろうが、ビビリで口下手なクセに怖い話など披露するのが悪い。少なくとも私ならもうちょっとは怖くなった。口が上手いいとこの兄ならば、そのエピソードでも最大限の恐怖を植え付けられたことであろう。Zが助けを求めるように私をちらっと見ていたが、私は無視して暗幕を片付けていた。
さて、長々と書いてしまったが、ここまでが前置きである。この戦いは、この夜のおよそ1ヶ月後に、例の「あの話が意味怖だとずっと思っていた弟」とお茶をした時に聞いた、彼自身の体験の話なのである。