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夜空の醉いどれ夢ものがたり

#8

苺と花紙と風船

スマホが突然けたたましく鳴って、実央さんはそれをポケットから取り出した。
どうやら電話が来たらしい。
実央さんは画面に表示されている連絡先を確認すると、急に血相を変えて廊下へ飛び出していってしまった。

「えっ、実央さ…どうしたんでしょう」
「…心配あらへんて。あのバカ金髪、また何やポカやらかしたんやろ」

璃音さんはぶっきらぼうな様子でそう呟いて、廊下を一瞬見たあと、すぐにまたテーブルに向かった。

璃音さんはまた1つ風船を手に取って、強く息を吹き入れる。先ほどから、「Happy birthday」の文字やら、ハートや星形やら、多種多様な風船があっという間に膨れ上がり、リビングの隅にうず高く積まれていった。

「本番って、今夜…なんですよね。飾り付け、間に合うでしょうか…」
私は色とりどりの花紙を丁寧に折ったり編んだりして、イミテーションフラワーを作っていた。



現在、午前10時。
今朝は早起きして、大急ぎで朝食をとってからずっと作り続けているから、飾りも相当な量になっていると思う。
ただ、会場はとんでもなく広い。下見に行った時、私は腰を抜かした。
そんな広い場所をいっぱいに飾り付けられるか、と考えると、少々不安は残るもので。

材料を買った時は「こんな大量に買っても、使い切れるわけがない」と内心思っていた花紙は結局、全て使い切ることになりそうだった。

「あと1時間くらいで、碧と日瑠が来る。アイツらに任せたったら終わるやろ。1時になったら、昼メシついでに会場に直行して、2時間くらいで飾り付けを終わらせる。あとは1回家帰って、身支度したら[漢字]終[/漢字][ふりがな]しま[/ふりがな]いや」
璃音さんは、〝M〟の風船を膨らましたあと、そう言って笑った。



しばらくして、リビングに大きなダンボールを持った実央さんが戻ってきた。
「あっ、実央さん!さっきは何があったんですか?」
実央さんは頭を掻きながら、スマホを片手にテーブルに座る。
「スタジオの運営さんから連絡が来たんや。〝イチゴがまだ届いてへん〟言うて。確認したら、送り先に家の住所書いてしもてたわ。さっき届いた。ほら」

床に置いていたダンボールを開くと、そこには大粒のイチゴが。
「わっ!超美味しそう」
「今夜愛ちゃんも食べれるから。楽しみにしときや」
成人男性とは思えない人懐っこさを感じさせる彼…実央さんの実家は、苺農家なのだそうだ。



「じゃ、俺スタジオに直接届けてくるから、璃音車貸して」
「おう」
実央さんは、そう言って車の鍵を持ち、部屋を出ていった。
「もう少しですね。頑張ります!」
背伸びしてそう言う私を、璃音さんは〝C〟の風船を膨らましながら、笑って見ていた。

作者メッセージ

「こんばんは、お嬢さん」の3人。
(方言監修:関西住みの友人Tさん)

2025/03/29 19:00

団栗きんとん
ID:≫ soHtg8UkVbFiM
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