「わ…私が司会?なんで!もっと相応しい人がいるでしょうよ!
…よく分からないけど、なんか配信者の人も来るんでしょ?声のお仕事してる方がいるなら、その人の方が明らかに適任でしょ!」
夕暮れに包まれた、放課後のオレンジ色の教室。
私の右斜め前に座る彼女……陽鮫春華は、私が伝えた〝あること〟に対してしつこくゴネていた。
「それがね、その人は会の中でのメインパフォーマンスを務めるんだって。それで、春華の綺麗なアルトボイスが主催者に気に入られて、司会に抜擢…ってことらしいよ」
信じられない、と乱雑に前髪をかきあげ、春華は机に突っ伏した。艶やかな短めの黒髪を教室に差す西日が照らし、1枚の絵のような美しい風景を作り出していた。
我が親友ながら、なんという耽美さか。
やや見惚れてしまってからあわてて我に返り、彼女をなんとか説得しようと試みる。
「そんなに難しくないって!ただの司会だよ司会、台本読めば良いだけだって!」
「じゃあ酔雨がやってよ!」
「春華みたいな美人の代わりにはなれないよ」
「そんなことないから!酔雨もめっちゃ可愛いから」
うぐぐ…なかなかどうにも強情だ。もともと春華にはそういうところがあるのだ。
第一、入学初日に私に話しかけてくるほど社交性があるくせに、大勢の前に立つとなると弱い。生徒会役員に推薦された時も、演説が緊張するから…という理由で断っていたほどに。
そんな彼女にこの役を任せるのは相当難しいか…?と頭をひねっていたところで、あるアイディアが浮かんだ。
…待てよ、これはもういっそその性格を逆に利用すればいいのでは?
「…わかった、じゃあ司会の話はナシってことで。その代わり、他の仕事をやってもらうから」
私がそう言うと、春華は明らかにほっとしたらしかった。
「よかった…私、司会以外なら何でもやる!一生懸命頑張るから!で、何の仕事?」
「春華の仕事の代わりを配信者の人にやってもらわなきゃだから、春華はその人の代わり。
……パフォーマンス」
「っ…司会をやらせていただきます」
こうして、私の策略にまんまと嵌った哀れな子羊・陽鮫春華は、司会進行の役割を務めることになったのだった。
「ったってさ~、その“台本”は誰が書くの?私文才ないよ」
「心配しないで。そのあたりは私の仕事。なんならパーティー全体の構成考えたのも私」
春華は少しきょとんとしてから、すごい、と呟きながら小さく目を輝かせた。
「台本の草案はもうできてるんだ。なんてったって今日の古典の授業中に書いたからね」
「授業中!?…やめてあげて、古典の[漢字]日下部[/漢字][ふりがな]くさかべ[/ふりがな]先生泣いちゃうよ…」
ルーズリーフの束を持って、じっくりと目を凝らす春華。正直自信作だが、こうも熱烈な視線を向けられると少し照れる。
彼女の表情は、はじめに笑顔、次に驚いたような顔へと変わり、…やがて、かなり険しい顔になった。
「どう?結構自信あるんだけど。じゃ、春華これの読み上げお願」
「できるかああ!」
「…え?」
「いや、できるかこんなモン!どこからツッコめばいいか分かんないんだけど!?まず…なんで全部ラップなんだよ!何〝言葉を紡ぐその音はキラリ今から始めるパーティーのフィナリ〟って!」
「いいじゃんラップ。楽しそうで」
「できるかああああ!あと普通にラップの質も低いし!」
春華にそこまで言われては流石に修正せざるを得ず、心の中で日下部先生に猛烈に謝りつつ、ふたりで案を練っていった。
だいぶ傾いた西日の、柔らかで切なげな橙色の光に満たされた教室。
ふたり以外誰もいないその部屋に、笑い声とペンの音が響いていた。
…よく分からないけど、なんか配信者の人も来るんでしょ?声のお仕事してる方がいるなら、その人の方が明らかに適任でしょ!」
夕暮れに包まれた、放課後のオレンジ色の教室。
私の右斜め前に座る彼女……陽鮫春華は、私が伝えた〝あること〟に対してしつこくゴネていた。
「それがね、その人は会の中でのメインパフォーマンスを務めるんだって。それで、春華の綺麗なアルトボイスが主催者に気に入られて、司会に抜擢…ってことらしいよ」
信じられない、と乱雑に前髪をかきあげ、春華は机に突っ伏した。艶やかな短めの黒髪を教室に差す西日が照らし、1枚の絵のような美しい風景を作り出していた。
我が親友ながら、なんという耽美さか。
やや見惚れてしまってからあわてて我に返り、彼女をなんとか説得しようと試みる。
「そんなに難しくないって!ただの司会だよ司会、台本読めば良いだけだって!」
「じゃあ酔雨がやってよ!」
「春華みたいな美人の代わりにはなれないよ」
「そんなことないから!酔雨もめっちゃ可愛いから」
うぐぐ…なかなかどうにも強情だ。もともと春華にはそういうところがあるのだ。
第一、入学初日に私に話しかけてくるほど社交性があるくせに、大勢の前に立つとなると弱い。生徒会役員に推薦された時も、演説が緊張するから…という理由で断っていたほどに。
そんな彼女にこの役を任せるのは相当難しいか…?と頭をひねっていたところで、あるアイディアが浮かんだ。
…待てよ、これはもういっそその性格を逆に利用すればいいのでは?
「…わかった、じゃあ司会の話はナシってことで。その代わり、他の仕事をやってもらうから」
私がそう言うと、春華は明らかにほっとしたらしかった。
「よかった…私、司会以外なら何でもやる!一生懸命頑張るから!で、何の仕事?」
「春華の仕事の代わりを配信者の人にやってもらわなきゃだから、春華はその人の代わり。
……パフォーマンス」
「っ…司会をやらせていただきます」
こうして、私の策略にまんまと嵌った哀れな子羊・陽鮫春華は、司会進行の役割を務めることになったのだった。
「ったってさ~、その“台本”は誰が書くの?私文才ないよ」
「心配しないで。そのあたりは私の仕事。なんならパーティー全体の構成考えたのも私」
春華は少しきょとんとしてから、すごい、と呟きながら小さく目を輝かせた。
「台本の草案はもうできてるんだ。なんてったって今日の古典の授業中に書いたからね」
「授業中!?…やめてあげて、古典の[漢字]日下部[/漢字][ふりがな]くさかべ[/ふりがな]先生泣いちゃうよ…」
ルーズリーフの束を持って、じっくりと目を凝らす春華。正直自信作だが、こうも熱烈な視線を向けられると少し照れる。
彼女の表情は、はじめに笑顔、次に驚いたような顔へと変わり、…やがて、かなり険しい顔になった。
「どう?結構自信あるんだけど。じゃ、春華これの読み上げお願」
「できるかああ!」
「…え?」
「いや、できるかこんなモン!どこからツッコめばいいか分かんないんだけど!?まず…なんで全部ラップなんだよ!何〝言葉を紡ぐその音はキラリ今から始めるパーティーのフィナリ〟って!」
「いいじゃんラップ。楽しそうで」
「できるかああああ!あと普通にラップの質も低いし!」
春華にそこまで言われては流石に修正せざるを得ず、心の中で日下部先生に猛烈に謝りつつ、ふたりで案を練っていった。
だいぶ傾いた西日の、柔らかで切なげな橙色の光に満たされた教室。
ふたり以外誰もいないその部屋に、笑い声とペンの音が響いていた。
通報フォーム
この小説の著作権は団栗きんとんさんに帰属します