「へえ、決行は今夜なんだね」
君はそう言って、どんな花にも負けないほどにたおやかな優しさを湛えて、ふわりと微笑んだ。
「桜には、もうじき会えるよね」
「もうじき、ね。…でもね、私たちにはその〝もうじき〟を飛び越えちゃうことだってできるんだよぉ」
「わあ、ここだけ春だ」
君に連れてこられたその部屋は、陽光をいっぱいに取り込んだガラス張りの温室だった。
ドーム状の大きな天井から光の射す中央には噴水があって、キラキラと飛沫を散らしている。
温室いっぱいに若草と花々が敷き詰められていて、清々しい香りとぽかぽかの陽気の中で、誇らしげに七色の花を咲かせていた。
「ここはね、花の精と光の精と、水の精の祝福が集まる場所なんだ」
そう言う君は、地中にしっかりと根を張る、ごつごつとした黒い幹を撫でていた。
君の隣に立って、空を、振り仰ぐ。
枝の広がるそのいっぱいに、満開の桜が咲き誇っていた。
視界を埋め尽くす桜吹雪の先に、透明なクリスタルガラス越しの、淡い水色の空が覗いていた。
「さ、これを持って行こうか」
君が両腕に抱えた飴色の編みかごには、摘み取った八重の桜がいっぱい。
「そのままでも食べられるの?てっきり、塩漬けにするのかと思った」
「祝福の日には、しょっぱいのはお呼びでないよぉ」
「ちょっと早いけど、行こっか」
「場所はどこ?」
「場所はね…」
僕たちは連れ立っていった。
桜の淡い香りを、その光の部屋に残して。
君はそう言って、どんな花にも負けないほどにたおやかな優しさを湛えて、ふわりと微笑んだ。
「桜には、もうじき会えるよね」
「もうじき、ね。…でもね、私たちにはその〝もうじき〟を飛び越えちゃうことだってできるんだよぉ」
「わあ、ここだけ春だ」
君に連れてこられたその部屋は、陽光をいっぱいに取り込んだガラス張りの温室だった。
ドーム状の大きな天井から光の射す中央には噴水があって、キラキラと飛沫を散らしている。
温室いっぱいに若草と花々が敷き詰められていて、清々しい香りとぽかぽかの陽気の中で、誇らしげに七色の花を咲かせていた。
「ここはね、花の精と光の精と、水の精の祝福が集まる場所なんだ」
そう言う君は、地中にしっかりと根を張る、ごつごつとした黒い幹を撫でていた。
君の隣に立って、空を、振り仰ぐ。
枝の広がるそのいっぱいに、満開の桜が咲き誇っていた。
視界を埋め尽くす桜吹雪の先に、透明なクリスタルガラス越しの、淡い水色の空が覗いていた。
「さ、これを持って行こうか」
君が両腕に抱えた飴色の編みかごには、摘み取った八重の桜がいっぱい。
「そのままでも食べられるの?てっきり、塩漬けにするのかと思った」
「祝福の日には、しょっぱいのはお呼びでないよぉ」
「ちょっと早いけど、行こっか」
「場所はどこ?」
「場所はね…」
僕たちは連れ立っていった。
桜の淡い香りを、その光の部屋に残して。
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