一度射した透明な月光は再び雲に隠れ、薄暗がりの静寂の中に、炎だけがあかあかと灯っていた。
ククの夜目には、黒い小袖で目元を擦るリカが見えた。
彼女は天井の暗がりを振り仰ぎ、そのまま身体がびしょ濡れた子兎のように、ふるふると頭を振る。
やがてリカは顔を戻すと、瞑っていた目を開き、微笑んだ。
「リカ…様」
「そんなに不安げな顔をするんじゃない。…確かに私は、弱い。だが」
王女は軽やかに、ゆったりと棚箱に腰掛け、すぐ目の前に立つククの頬に白い手を添えた。
そしてその頬を引き、一気に顔に近づける。
「っ…!」
夜闇に光る赤い宝石のような瞳が眼前に迫り、ククは思わずたじろいだ。
幼いころから、ククはこれには弱い。その透き通るような凛々しげな瞳に吸い込まれ、何もかもが見透かされるような気がして身体が固まってしまうのだ。
先程まで静かに泣き腫らしていたとは思えないほど、その瞳は宵に星を宿すように、強く輝いていた。
「何が加護だ。何が祈りの火だ。そのろうそく一本をお前が消したから、この国は滅びるのか?
古来より神が、歴代の王が築いてきたこの国は、…私は、そんなに弱いと思うか」
「それは」
「お前が禁忌を犯したというのなら、私はそれを乗り越えてみせよう。
たとえ豊穣の女神の加護が無くたって、私は何度だってこの国と民とを守り抜いてみせよう。
…病める者も貧しい者も、弱きが幸せに生きることのできる国を作る。それができるのは、私のような弱い者だけなんだ」
ぱきり。
ヒビもなく、まっすぐに割れる水晶のように、玉音はそう言い切った。
ククの夜目には、黒い小袖で目元を擦るリカが見えた。
彼女は天井の暗がりを振り仰ぎ、そのまま身体がびしょ濡れた子兎のように、ふるふると頭を振る。
やがてリカは顔を戻すと、瞑っていた目を開き、微笑んだ。
「リカ…様」
「そんなに不安げな顔をするんじゃない。…確かに私は、弱い。だが」
王女は軽やかに、ゆったりと棚箱に腰掛け、すぐ目の前に立つククの頬に白い手を添えた。
そしてその頬を引き、一気に顔に近づける。
「っ…!」
夜闇に光る赤い宝石のような瞳が眼前に迫り、ククは思わずたじろいだ。
幼いころから、ククはこれには弱い。その透き通るような凛々しげな瞳に吸い込まれ、何もかもが見透かされるような気がして身体が固まってしまうのだ。
先程まで静かに泣き腫らしていたとは思えないほど、その瞳は宵に星を宿すように、強く輝いていた。
「何が加護だ。何が祈りの火だ。そのろうそく一本をお前が消したから、この国は滅びるのか?
古来より神が、歴代の王が築いてきたこの国は、…私は、そんなに弱いと思うか」
「それは」
「お前が禁忌を犯したというのなら、私はそれを乗り越えてみせよう。
たとえ豊穣の女神の加護が無くたって、私は何度だってこの国と民とを守り抜いてみせよう。
…病める者も貧しい者も、弱きが幸せに生きることのできる国を作る。それができるのは、私のような弱い者だけなんだ」
ぱきり。
ヒビもなく、まっすぐに割れる水晶のように、玉音はそう言い切った。