「私も皆も、あの子に期待をかけすぎていたのか。幼少の頃より王女のそばにいたお前は、どう思う?
私たちが思っていた以上にあの子は重圧を感じていて、…それで、逃げ出してしまったのだろうか」
ジマが、再び重々しくため息をついた。
違います、私のミスを隠蔽しようとしてくれてるだけです…!
先ほどセノに抱いたのと似たような言葉がククの頭に浮かぶが、もちろんそれを言うわけにはいかない。
とにかく今、ククがすべきことは。
…取り返しのつかない失敗をしてしまった自分をここまで庇ってくれる心優しきあの姫に対する誤解を、解くことだ。
カンテラがゆらゆらと小屋の暗がりに強い光を投げかけ、より濃度を増した闇が纏わりつくように動く。
しばらく目を閉じていたジマに、ククは声をかけた。
「リカ様は、王の責務を放棄したわけではありません」
「ほう、まるで確信でもしているかような口ぶりで言うのだな」
ジマが少し意外そうに片眉を上げ、ククを見遣る。
その瞬間ジマの容赦ない厳しい眼光が放たれていたが、ククは身じろぎをなんとか飲み込んで、しっかりした言葉を続けた。
「昨晩、私はリカ様から相談を受けました。私はもう少しで王になるが、トップとして、この国と愛する民の平和と安寧をしっかりと守っていけるか、不安だと。いつも気丈なあのリカ様が、あのように気弱なお顔をされるとは…と、私は心底驚いたのです」
これは、嘘である。
クク自身も、あまりに流暢な自らの嘘の才能に、少々恐れを抱き始めるほどの信憑性。
恐る恐るジマを見ると、その顔つきは険しいながらも真剣である。どうやら嘘だとバレてはいないらしい…とひとまず安堵して、ククは続きを話した。
「私のような者がアドバイスするのも何かとは思いましたが、目の前で不安そうになさっているリカ様が健気で、私はつい言ってしまいました。
“物事を良い方向へと導くためには、まずはその現状を知ることが大切なのではないでしょうか。現王であるお父君はその手腕がおありですが、今のリカ様には実際に国の現状を身を以て知る機会は少なかったのですから、仕方のないことでございましょう”と。
…もしかしたら昨日、私めがそう申し上げたばかりに…」
「王女は、自らの足で国の現状を学びに行った、ということか…?全ては国のため、ひいては国民の未来のために…!」
ジマは、感動した様子でそう呟いた。
…うん。
とりあえずこれで、リカの名誉は保たれたことだろう。
嘘の報告がうまくいき胸をなでおろしたククを、
…かたかた、かたり。
さきほどから天井裏で鳴っていた、物音を立てたその正体が、暗闇の中から見つめていた。
私たちが思っていた以上にあの子は重圧を感じていて、…それで、逃げ出してしまったのだろうか」
ジマが、再び重々しくため息をついた。
違います、私のミスを隠蔽しようとしてくれてるだけです…!
先ほどセノに抱いたのと似たような言葉がククの頭に浮かぶが、もちろんそれを言うわけにはいかない。
とにかく今、ククがすべきことは。
…取り返しのつかない失敗をしてしまった自分をここまで庇ってくれる心優しきあの姫に対する誤解を、解くことだ。
カンテラがゆらゆらと小屋の暗がりに強い光を投げかけ、より濃度を増した闇が纏わりつくように動く。
しばらく目を閉じていたジマに、ククは声をかけた。
「リカ様は、王の責務を放棄したわけではありません」
「ほう、まるで確信でもしているかような口ぶりで言うのだな」
ジマが少し意外そうに片眉を上げ、ククを見遣る。
その瞬間ジマの容赦ない厳しい眼光が放たれていたが、ククは身じろぎをなんとか飲み込んで、しっかりした言葉を続けた。
「昨晩、私はリカ様から相談を受けました。私はもう少しで王になるが、トップとして、この国と愛する民の平和と安寧をしっかりと守っていけるか、不安だと。いつも気丈なあのリカ様が、あのように気弱なお顔をされるとは…と、私は心底驚いたのです」
これは、嘘である。
クク自身も、あまりに流暢な自らの嘘の才能に、少々恐れを抱き始めるほどの信憑性。
恐る恐るジマを見ると、その顔つきは険しいながらも真剣である。どうやら嘘だとバレてはいないらしい…とひとまず安堵して、ククは続きを話した。
「私のような者がアドバイスするのも何かとは思いましたが、目の前で不安そうになさっているリカ様が健気で、私はつい言ってしまいました。
“物事を良い方向へと導くためには、まずはその現状を知ることが大切なのではないでしょうか。現王であるお父君はその手腕がおありですが、今のリカ様には実際に国の現状を身を以て知る機会は少なかったのですから、仕方のないことでございましょう”と。
…もしかしたら昨日、私めがそう申し上げたばかりに…」
「王女は、自らの足で国の現状を学びに行った、ということか…?全ては国のため、ひいては国民の未来のために…!」
ジマは、感動した様子でそう呟いた。
…うん。
とりあえずこれで、リカの名誉は保たれたことだろう。
嘘の報告がうまくいき胸をなでおろしたククを、
…かたかた、かたり。
さきほどから天井裏で鳴っていた、物音を立てたその正体が、暗闇の中から見つめていた。