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闇に堕ちる勇者 ~再現の魔人と喰魂の魔人~

#14

キルンvs.イーラ

​静寂が場を支配していた。
対峙するのは、二丁の魔双鎌を無造作に提げたキルンと、節々に凶悪な突起を備えた七節棍を構えるイーラ。
​キルンの頬を伝った汗が、乾いた砂の上に落ちた。その瞬間、均衡は砕け散る。
​先に動いたのはキルンだった。低空を滑るような踏み込み。イーラが放った七節棍の縦振りを、紙一重の旋回で回避する。懐に潜り込むと同時に、キルンはイーラの背後へと回り込んだ。
​死角からの、首を刈る一閃。
​イーラ「......っ!」
​イーラは咄嗟に上体を前へ倒したが、完全には避けきれない。魔双鎌の鋭利な刃がイーラのうなじを裂き、鮮血が舞った。約4mm。浅いが、確実な負傷だ。
​キルンは着地し、鎌を構え直す。
キルン「......速いな。今のを避けるか」
興味深げに呟くキルンに対し、イーラは傷口を指で拭い、その血を舐めとった。
​イーラ「痛ぇな......どうしてくれんだ?」
言葉とは裏腹に、イーラの口元には不気味な笑みが刻まれている。
その異様な気配にキルンが警戒を強めた瞬間――空気が爆ぜた。

​[太字][大文字]ヒュン![/大文字][/太字]

​鼓膜を突き刺すような風切り音と共に、七節棍がキルンの眉間を貫こうと迫る。
キルン「(速い……!?)」
キルンは首を僅かに傾け、その一撃を回避した。しかし、風圧だけで頬の皮が切れる。
​(……急にスピードが上がったな。負傷すればするほど強くなる能力か? だとすれば、どんなドM能力だよ)
​内心で毒づくキルンの思考を遮るように、イーラが七節棍を横に薙ぎ払った。頭部を粉砕せんとする大振りの一撃。キルンはその動きを見切り、再び背後へ回る。
​キルン「殺った!」
​先ほど刻んだ首の傷、そこへ二丁の鎌を突き立てようとしたキルンの動きが、直前で止まった。驚きで微かに目を見開き、全力で後方へ飛び退く。
​キルン「......傷が、治っている......?」
イーラ「ハッ、驚いたかァ?」
​イーラが狂ったように嗤う。その全身から、陽炎のような禍々しい魔力が立ち上っていた。
「これが憤怒の魔人の力!怒れば怒るほど身体スペックが上がる!パワーも、スピードも、回復力も!そして、俺が怒る限り、俺のスペックは上がり!回復力の向上で俺は死なねぇ!」

キルン(...厄介だな...いくら致命傷を残そうが、死なない...それどころか傷ついた怒りでパワーアップする。まともに殺り合えばこっちのスタミナ切れが先か...どうやって殺すかな...)

​キルンの思考を断ち切るように、イーラが地を蹴った。
イーラ「考えたって無駄だ! 痛みが...怒りが...俺を最強の魔人に変える!」
​七節棍が再びうなりを上げる。今度の連撃は先ほどまでとは別物だった。節の一つ一つが意志を持っているかのように動き、キルンの退路を網の目のように塞いでいく。
​キルンは二丁の鎌を必死に操り、死の包囲網を弾き飛ばしていくが、防戦一方だ。
キルン(……速すぎる。さっきまで見えていたはずの軌道が、今は残像すら捉えきれない)
​ガリッ、と耳障りな音が響く。
回避しきれなかった七節棍の先端が、キルンの脇腹をかすめた。浅い。
キルン「...まぁ仕方ないか。」
[太字][大文字]死ね[/大文字][/太字]
その瞬間、キルンは自らの支配下のスアーウルフ達を支配している回路を利用してスアーウルフ達に自死を強制させた。
スアーウルフ達に分散されていた喰魂の倍率。それがキルンへと戻り、キルンの魔力量が膨れ上がった。
それを見て警戒するイーラ。
イーラ「なんだ...?魔力量が膨れ上が...」
その瞬間、素早くジグザグに動いて距離を詰め、鎌を振るったキルン。

[太字][大文字]キィン![/大文字][/太字]

その鎌をギリギリ七節棍で防いだイーラ。
イーラ(スピードとパワーと魔力量が上がった。...だがそれだけじゃ俺は...)
真っ直ぐ地を蹴り向かうキルン。
イーラ「バカが!」
七節棍を振るい頭を狙う。

[太字][大文字]メキ...[/大文字][/太字]

キルン「グッ...」
それを咄嗟に右腕で防いだキルン。
イーラ「良い反応の速さだが右腕を失うとはとんだバ...」

[太字][大文字]グシャ...[/大文字][/太字]

イーラ「...え?」
イーラの思考が、その一瞬で停止し、七節棍を落とした。
手応えは確かにあった。憤怒によって極限まで強化された自らの七節棍は、キルンの右腕を容易く粉砕した。肉が爆ぜ、骨がひしゃげる『グシャ...』という生々しい感触が、棍を通じて掌に伝わってきた。
​右腕は使えない。勝った。そう確信した瞬間の、コンマ数秒の油断。
キルンはその瞬間にもう片方...左の鎌で下顎を突き刺したのだ。

イーラ(コイツ...!イカれてやがる!)

​キルン「さて、厄介な七節棍が無くなったことだし...我慢比べだな...?」
キルンの瞳が嗜虐的な色を帯びる。

次の瞬間、イーラの右腕が身体から斬り離された。
​「ぐ、あああああッ!!」
​イーラの精神が恐怖に染まった。
怒りという感情を、目の前の男への恐怖が塗りつぶそうとしていた。
その瞬間、イーラの魔力が急速に霧散を始める。
怒りを糧にするその魔人の力は、心が恐怖に支配された瞬間、その効果を失った。
​キルン「もう終わりか...呆気ないな。」
​キルンの冷ややかな声が響く。
その目から嗜虐的な色は消え、失望していた。
交差する二丁の鎌。
一丁は左手で、もう一丁は血に濡れた右腕に固定されたまま、イーラの首筋で十字を描いた。
​イーラ「あ、ま......っ」
​命乞いすら許さず、キルンは両腕を力一杯横に引き抜いた。

漆黒の闇の中、二つの赤閃が交わり、そして離れる。
イーラの頭部が虚空を舞い、血飛沫を飛ばす物言わぬ肉塊となって地面に転がった。
​キルンは膝から崩れ落ち、荒い息を吐きながら、ようやく右腕の魔力連結を解いた。
ガラン、と音を立てて鎌が落ちる。
キルン「疲れた...」

第14話「キルンvs.イーラ」終
次回 第15話「Side ガトス4」

2026/04/21 17:23

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