ツイてないわね...日程的に拐えるのが今日だったとはいえ、月に一度の幹部総会だなんて...
本当なら記憶の消去と同時に強力な催眠を掛けて私の家に連れていくつもりだったのですが...
でも!
幹部総会はもう終わりました♪
これであとは施設に帰った後、ゆっくり催眠を掛ければ...
あぁ...待ちきれません♪(※ここまで思考するまで約0.01秒)
アケーリス「ふふっ......ようやく終わったわ。無駄に長い演説に、中身のない報告書......本当に退屈だったけれど、それもようやくおしまい。」
彼女は廊下を軽やかな足取りで進む。
彼女の脳内では、すでに完璧なシナリオが出来上がっていた。
記憶を消され、自分が誰かも分からず、ただ縋る相手を求める赤子のようなキルン。
そこに、慈愛に満ちた『恋人』として現れる自分。
アケーリス「催眠の準備は完璧。彼が目覚めたとき、最初に目にするのは私。そして、起きた彼が世界で唯一愛し、依存するのも私......。あぁ、なんて素晴らしい計画かしら♪」
想像するだけで、背筋に甘い震えが走る。
彼を私の物にして、一生私の側に縛り付けておく。そのためなら、シャルの復活なんて単なる「ついで」の作業に過ぎない。
頬を染め、陶酔した表情を浮かべる彼女。
アケーリスは、キルンの意識がすでに覚醒し、施設を破壊して脱走していることなど、微塵も思っていない。
アケーリス「さて......記憶の消去は終わっている頃かしら? 一応、進捗を確認しておかないとね......!?」
(ノートパソコンを開き、状況を確認する)
画面に並んだデータを見て、私の指が止まった。
【警告:ERROR / S1-BLOCK DESTROYED】
【警告:生存反応喪失 ―― 研究員:100,000名】
【警告:S1部隊(魔人) ―― 200,000体 消滅】
【警告:Cエリア133番、隔壁消失、および内部圧力異常】
【警告:デーモニックハザード発生。全ロック強制解除。】
【警告:『喰魂の魔人』の反応を検知。】
画面をスクロールする。
そこには、血に塗れた施設の廊下で、首をねじ切られた10万人の研究員の死体の山と、もはや「ゴミ」のように積み上げられたS1魔人たちの残骸が映し出されていた。
アケーリス「...い...いない......? 記憶も魔力もないはずの彼が、自力で脱走した?...いえ、そんなはずはない。」
彼女の顔から余裕が消え、急激に青ざめていく。
しかし、その思考は歪んだ方向へと加速した。
アケーリス「...まさか、彼の仲間?」
彼女の脳裏に、キルンの周りにいたであろう仲間たちの顔が浮かぶ。あるいは、記憶消去の隙を突いて、別の幹部が掠め取っていったのか。
アケーリス「誰かが、私のキルン君を連れ去った......? 私の計画を邪魔して、あの子をどこかへ連れ出したの? ......誰?女?......まさか、あの国の......
いえ、落ち着きなさい、私。危うく嫉妬で視界が曇るところだったわ。データは嘘をつかない。
誰かが連れ出した? いいえ、それにしては研究員の死に方が効率的すぎるわ。首を捻り、心臓を穿ち、武器を奪い......。これは誘拐ではなく、単独の蹂躙。
彼の仲間には何の情報も与えていない。だとすれば...実験によりアクシデントが起き、彼が目を覚まして脱出?まだそちらの方があり得る。だとするなら、そうなった原因は?...あの不純物?...だとすれば失敗したわね。」
沸騰しかけた脳が、数秒の静寂を経て急速に冷却されていく。
彼女の指先が、再び目にも止まらぬ速さでキーボードを叩き始める。
散らばる破片を繋ぎ合わせ、一つの「正解」を導き出した。
■ 推論:アケーリスの分析
不純物(キフィア)の誤算: 「ただの別人格」だと思っていた不純物が、予想以上にキルンの精神の基底部に根を張っていた可能性。
衝撃による早期覚醒: 分離の衝撃が、記憶消去のプロセスを完了させる前に意識を浮上させた。
魔双鎌の適合: 失敗作だと思っていた人工鎌が、記憶を失い「空」になったキルンを「完璧な器」として選別した。
アケーリス「これなら辻褄が合う。研究員の携帯から映像が見れれば...良かった......まだ彼等の携帯は生きてる。」
画面に映し出されるのは、凄惨な施設内の動画。
そして、彼女は見た。
キルンが手にしている、本来そこに存在してはいけないはずの武器を。
アケーリス(......SS1-00950。『喰魂の魔双鎌』!? まさか、あの適合率0%の失敗作を使いこなしているというの? ...いや、彼は昔から良く人を惹き付ける...魔人になれるかどうかはその魔導武装に気に入られるかどうか。
...喰魂の魔双鎌に気に入られた?あり得る。となると、また彼に話して捕獲するのが最善。
最悪は...
(ノートパソコンの画面がアレンとガトスの写真を映す。)
彼等と合流してしまうこと。彼女たちに先に捕まって、もしも記憶を取り戻してしまえば、もう同じ手は通じない。それだけじゃなく、警備が厳重になり、成功確率が限りなく低くなる。
となれば...合流する前に捕まえるか、合流出来ないように彼女たちを殺すか...殺しましょう。幸いあそこは施設の一つ。あと二つの施設に大部分の研究員とサンプル達がいるから損失は少ない。なにがなんでも彼女たちを消し、キルン君を捕まえて催眠...)
(※ここまで思考するまで0.1秒)
アケーリス(..................)
(キルン君......浮気......してないでしょうね?
.........だから!違う...そうじゃなくて...!
もう!彼の事になるとどうも思考が極端になってしまう...
き...切り替えなければ...!
でも...こんなことになるならキルン君に対して危険を侵してでももっと早く手を出すべきだった!
いや...しかし、ダメよ!
私の弱点が増えれば組織に付け込まれる可能性も...
けれど、もし彼女達と遭遇して記憶を取り戻してしまえば彼が完全に奪われてしまう!
...であれば、一部の予定を変更して近日中に動かなければ―――)(※ここまで思考するまで約5秒)
第9話「side アケーリス」終
次回 第10話「side ガトス2」
本当なら記憶の消去と同時に強力な催眠を掛けて私の家に連れていくつもりだったのですが...
でも!
幹部総会はもう終わりました♪
これであとは施設に帰った後、ゆっくり催眠を掛ければ...
あぁ...待ちきれません♪(※ここまで思考するまで約0.01秒)
アケーリス「ふふっ......ようやく終わったわ。無駄に長い演説に、中身のない報告書......本当に退屈だったけれど、それもようやくおしまい。」
彼女は廊下を軽やかな足取りで進む。
彼女の脳内では、すでに完璧なシナリオが出来上がっていた。
記憶を消され、自分が誰かも分からず、ただ縋る相手を求める赤子のようなキルン。
そこに、慈愛に満ちた『恋人』として現れる自分。
アケーリス「催眠の準備は完璧。彼が目覚めたとき、最初に目にするのは私。そして、起きた彼が世界で唯一愛し、依存するのも私......。あぁ、なんて素晴らしい計画かしら♪」
想像するだけで、背筋に甘い震えが走る。
彼を私の物にして、一生私の側に縛り付けておく。そのためなら、シャルの復活なんて単なる「ついで」の作業に過ぎない。
頬を染め、陶酔した表情を浮かべる彼女。
アケーリスは、キルンの意識がすでに覚醒し、施設を破壊して脱走していることなど、微塵も思っていない。
アケーリス「さて......記憶の消去は終わっている頃かしら? 一応、進捗を確認しておかないとね......!?」
(ノートパソコンを開き、状況を確認する)
画面に並んだデータを見て、私の指が止まった。
【警告:ERROR / S1-BLOCK DESTROYED】
【警告:生存反応喪失 ―― 研究員:100,000名】
【警告:S1部隊(魔人) ―― 200,000体 消滅】
【警告:Cエリア133番、隔壁消失、および内部圧力異常】
【警告:デーモニックハザード発生。全ロック強制解除。】
【警告:『喰魂の魔人』の反応を検知。】
画面をスクロールする。
そこには、血に塗れた施設の廊下で、首をねじ切られた10万人の研究員の死体の山と、もはや「ゴミ」のように積み上げられたS1魔人たちの残骸が映し出されていた。
アケーリス「...い...いない......? 記憶も魔力もないはずの彼が、自力で脱走した?...いえ、そんなはずはない。」
彼女の顔から余裕が消え、急激に青ざめていく。
しかし、その思考は歪んだ方向へと加速した。
アケーリス「...まさか、彼の仲間?」
彼女の脳裏に、キルンの周りにいたであろう仲間たちの顔が浮かぶ。あるいは、記憶消去の隙を突いて、別の幹部が掠め取っていったのか。
アケーリス「誰かが、私のキルン君を連れ去った......? 私の計画を邪魔して、あの子をどこかへ連れ出したの? ......誰?女?......まさか、あの国の......
いえ、落ち着きなさい、私。危うく嫉妬で視界が曇るところだったわ。データは嘘をつかない。
誰かが連れ出した? いいえ、それにしては研究員の死に方が効率的すぎるわ。首を捻り、心臓を穿ち、武器を奪い......。これは誘拐ではなく、単独の蹂躙。
彼の仲間には何の情報も与えていない。だとすれば...実験によりアクシデントが起き、彼が目を覚まして脱出?まだそちらの方があり得る。だとするなら、そうなった原因は?...あの不純物?...だとすれば失敗したわね。」
沸騰しかけた脳が、数秒の静寂を経て急速に冷却されていく。
彼女の指先が、再び目にも止まらぬ速さでキーボードを叩き始める。
散らばる破片を繋ぎ合わせ、一つの「正解」を導き出した。
■ 推論:アケーリスの分析
不純物(キフィア)の誤算: 「ただの別人格」だと思っていた不純物が、予想以上にキルンの精神の基底部に根を張っていた可能性。
衝撃による早期覚醒: 分離の衝撃が、記憶消去のプロセスを完了させる前に意識を浮上させた。
魔双鎌の適合: 失敗作だと思っていた人工鎌が、記憶を失い「空」になったキルンを「完璧な器」として選別した。
アケーリス「これなら辻褄が合う。研究員の携帯から映像が見れれば...良かった......まだ彼等の携帯は生きてる。」
画面に映し出されるのは、凄惨な施設内の動画。
そして、彼女は見た。
キルンが手にしている、本来そこに存在してはいけないはずの武器を。
アケーリス(......SS1-00950。『喰魂の魔双鎌』!? まさか、あの適合率0%の失敗作を使いこなしているというの? ...いや、彼は昔から良く人を惹き付ける...魔人になれるかどうかはその魔導武装に気に入られるかどうか。
...喰魂の魔双鎌に気に入られた?あり得る。となると、また彼に話して捕獲するのが最善。
最悪は...
(ノートパソコンの画面がアレンとガトスの写真を映す。)
彼等と合流してしまうこと。彼女たちに先に捕まって、もしも記憶を取り戻してしまえば、もう同じ手は通じない。それだけじゃなく、警備が厳重になり、成功確率が限りなく低くなる。
となれば...合流する前に捕まえるか、合流出来ないように彼女たちを殺すか...殺しましょう。幸いあそこは施設の一つ。あと二つの施設に大部分の研究員とサンプル達がいるから損失は少ない。なにがなんでも彼女たちを消し、キルン君を捕まえて催眠...)
(※ここまで思考するまで0.1秒)
アケーリス(..................)
(キルン君......浮気......してないでしょうね?
.........だから!違う...そうじゃなくて...!
もう!彼の事になるとどうも思考が極端になってしまう...
き...切り替えなければ...!
でも...こんなことになるならキルン君に対して危険を侵してでももっと早く手を出すべきだった!
いや...しかし、ダメよ!
私の弱点が増えれば組織に付け込まれる可能性も...
けれど、もし彼女達と遭遇して記憶を取り戻してしまえば彼が完全に奪われてしまう!
...であれば、一部の予定を変更して近日中に動かなければ―――)(※ここまで思考するまで約5秒)
第9話「side アケーリス」終
次回 第10話「side ガトス2」