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キルンの呪術師生活

#5

勝利と和解

ここに来る前に、夜蛾先生から呪術について、予め聞いていた。

『領域展開』
それぞれの術師の中にある生得領域(いわゆる心象風景。詳細は後述)を「結界」という形で体外に創り出して敵を閉じ込め、その結界に術師本人の術式を付与する事で術式に基づく攻撃を必中とする結界術の一種。
能力としては、より「閉じ込める」事に特化している結界であり、例えるならば空間支配能力的な代物で、発動と同時に術者の周囲の空間が術者の領域へと変化する。その為に領域習得の条件としては、単に呪術師としての能力や実力だけでなく結界術の素質も要求され、これが領域を使える呪術師が少ない大きな理由の一つ。領域展開を行う絶大なメリットは主に2つ挙げられる。

1つは「環境要因による術者のステータス上昇」。
領域の中はいわば「術者の精神世界」もしくは「術者の術式の中」。
術者自身が最も行動しやすい言わばホームグラウンドのような環境になっており、より洗練された120%の潜在能力を遺憾なく発揮できる。

もう1つは「領域内で発動した術者の術式の絶対命中」。
術式が付与された領域の中にいるという事は「既に術式が当たっている」ということになる為、領域内での術式に基づく攻撃は必ず当たる。
例えば、式神を具現化して攻撃する術式であれば「既に式神が攻撃した状態」で具現化する。このため攻撃を受けた側からすれば、突如として現れた式神によって攻撃されたような状態になる。
また、この必中効果によって本来なら相手に直接触れなければいけないタイプの術式であっても、領域内においては遠距離から発動して相手を攻撃する事が可能になる。
また、その他のメリットとして[太字]敵の防御に使用されている術式や、敵の領域の中和作用がある[/太字]事が挙げられる。領域内は濃い呪力で満たされており、他者の術式を中和することが可能である。濃い呪力で満たされているため、呪力に狙いを定め発動する術式を撹乱することも可能である。
「領域展開への対処法は自身も領域を展開する事」と言われる所以はこの中和作用に由来する。

領域展開。俺にはまだ術式がないから、それは出来ない。けれど重要なのはそこじゃない。先程もいったように、領域内は濃い呪力で満たされ、[太字]敵の防御に使用されている術式や、敵の領域の中和作用[/太字]がある。
術式を付与する必要はない。最底限、彼の術式を中和できれば良い。
イメージは出来ている。行動に移すだけだ。

『領域展延』。領域の持つ「術式の中和効果」のみを利用するもので、五条のように自身を術式で防御している者に対し自身の攻撃を届かせたり術式に基いた攻撃を防いだりといった事が可能。
しかし、五条はあまり深く警戒していなかった。この芸当が出来る者は今の術師に存在しない。そもそも五条を含む現代の術師にはその知識すら無い。だから、想像できなかった。

それを、キルンは自らの発想力で思い付き、即座に実行した。

キルン(……領域そのものを、薄い膜のように体に纏わせる。)
​五条の無限が空間を支配しているなら、その空間そのものを俺の呪力で塗り潰すのではなく、俺の表面だけを領域の中和の特性でコーティングすればいい。
『蒼』の吸引力がキルンを飲み込もうとしたその瞬間、キルンは全魔力を呪力へ変換し、極限まで圧縮して全身に張り巡らせた。
​五条「(……? 消えた?)」
​五条の六眼が捉えていた『蒼』の呪力の残滓が、一瞬で無に転じたように見えた。だが違う。あまりに高密度に、そしてあまりに静かにキルンの体に密着した領域が、周囲の術式をことごとく中和しているのだ。
五条に一歩ずつ近づく。無限を軽く突破して。
​五条「なっ……!?」
​初めて、五条悟の顔に驚愕が走る。
必殺の術式が、キルンの体に触れる直前で霧散していく。
アキレスと亀のパラドックスは崩壊した。俺の拳は、もはや「無限」に阻まれることなく、その有限の距離を真っ直ぐに突き進む。
​キルン「捕まえたぞ、五条!」
​五条は咄嗟に身を引こうとするが、体勢を崩し、加速を利用して低く潜り込む。
​五条「(速い……術式を、中和してやがるのか!?)」
​五条が空中に逃れようと跳躍する直前、俺の右手が彼の右足首をガッシリと掴んだ。
​キルン「逃がすかよ。」
五条「ちょっ、おまっ……!!」
​掴んだ瞬間、さらに「展延」の出力を上げ、五条の足を保護している無下限の衣を完全に剥ぎ取る。そのまま、ありったけの力で、五条の足を不自然な角度へグイッと捻り上げた。
​五条「いっ、ってぇぇえええええ!!?!?!?」
​静寂の演習場に、最強(の卵)の情けない絶叫が響き渡る。
​五条「待て待て待て! 吊る! 吊るって! アキレス腱が悲鳴あげてんだけど!?」
キルン「あ、悪い。つい力が入りすぎた。」
​俺が手を離すと同時に、五条は片足でケンケンしながら地面をのた打ち回った。
それまで呆然と見ていた夏油と家入が、慌てて駆け寄る。
​夏油「……悟、大丈夫かい?」
家入「あーあ、無下限貫通されてやんの。ダッサ。」
五条「硝子お前……っ、い、痛てて……今の何だよキルン! 俺の術式、完全に死んでたんだけど!?」
​地面に座り込み、必死にふくらはぎを揉んでいる五条を見下ろし、俺はニッと笑って手を差し出した。
​キルン「言っただろ、突破できるって。……で? 約束通り、名前で呼んでくれるんだよな? 五条。」
​五条は差し出された手を忌々しそうに見つめた後、ふいっと顔を背けて、小さく、だが確かな声で溢した。
​五条「……分かったよ。キルン。……クソ、足つった……マジで痛い……。」

2026/02/21 15:46

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