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食物戦記

#7

ト、驀進愉快な戦場列車

 まもなく、ホームに黒煙を撒き散らしながら、巨大な列車が通過していった。
列車砲[漢字]糖[/漢字][ふりがな]ドー[/ふりがな]ラは、大地を揺るがし、全速力で目的地まで向かう。それでも、到着までにはかなりの時間を求められそうだ。敵が迅速に展開していれば、あっち側にとって一帯の掌握は確実となり、我が方の前線は大きく後退することとなる。
「それだけは食い止めねばならない。」
全ての乗員の切符を確認したプレッツェルの車掌は、機関室にやって来て叫んだ。
「ええっ。そうしたいのはっ。山々ですけれどもっ。何分、燃料が足りないものでっ。」
せっせと火室に石炭をぶち込みながら、同じくプレッツェルの機関士は答える。
「それをどうにかできんのか?!」
車掌も必死である。そこへ、車内販売ごっこをしている兵士がやって来た。
「いらんかね、いらんかね。たちまち元気になっちまうエナドリだよ。」
「!」
車掌はその瞬間に閃いた。
「それだ!それを全部くれ、この通りだ!」
車掌は、取り出した財布の中身をひっくり返す。兵士が勘定を始める前に、その手からエナドリを全てひったくって、手当たり次第に火室に放り込んだ。
「わああああぁぁぁぁぁ!何をするでありますか!」
火室の窓から覗く炎がみるみるエナドリ色に変わっていくのを目の当たりにした機関士は、とち狂って卒倒しそうになった。だが、漂うきついエナドリの匂いが、彼の気絶を許さなかった。
「到着予定時刻を極限まで早めろ!」
 煙突からエナドリ色の煙を噴き出す機関車が、石炭で動いていた時とは比べ物にならない程力強く、重くて長い編成の列車を牽引する。列車中にエナドリの成分が染み渡り、それを活発にさせた。今や列車の速度は某食品配達サービスをも上回り、たちまち最前線に到達した。プレッツェルとおにぎりに奇襲を仕掛けたピロシキたちは、迫り来る陸上最大の怪物に驚いた。その速度に。その大きさに。そして……それが向かう先には線路の続きが無いことに!
 駅長は一つ大きな過ちを犯していた。敵襲があったのは、線路の敷設工事現場。すなわち線路が途切れている場所であり、そこに列車を走らせようものならば。
「止まれぇぇぇぇぇ」
車掌は叫ぶ。それでも列車は止まらない。エナドリをキめた列車は速度を保ったまま、唖然としていたいくつかのピロシキを地平の果てまで跳ね飛ばし、そしてだだっ広い草原に投げ出された。
 列車の中で待機していた砲兵らは衝撃で壁に打ち付けられたり、床に転がったりしながらも、どうにか立て直して、巨大な砲塔に駆け込んだ。
「どうやら味方は全滅したらしい……。だが、貴様らの砲撃に味方が巻き込まれることもないと考えれば、撃ち易くなるだろう。弔い合戦と行こうじゃないか!」
砲撃を指揮する隊長は叫んだ。瞬間、砲口から二万ミリリットルの砲弾が飛び出す。唸る砲弾の螺旋は、列車を取り囲もうとしていたピロシキの一群を吹き飛ばし、地面を大きくえぐった。遅れてやって来た敵の攻撃機も、列車に据え付けられたやはり巨大な高射砲に、アウトレンジから一方的に撃ち落とされた。
 その後、全滅したプレッツェル=おにぎり工兵部隊は、列車砲の乗員らによって丁寧に在庫処分された。砲撃によって部隊が壊滅したピロシキたちのことはわからない。派手に脱線した列車砲は片付けようがないため、そのまま対空砲兼一帯のプレッツェル軍の拠点として転用されることとなった。
 こうして、自由州を巡る国同士の対立が正式な戦争となって初の戦いは、プレッツェルの勝利で終わった。ここからさらに、自由州を求めて争う関係は複雑化していく……。

作者メッセージ

読んでいただき感謝です。
筆者はエナドリを飲んだことはありませんが、なんか元気になるやつとは知っています。

2025/03/01 15:18

黒田清兵衛・活動縮小中
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PG-12 #暴力表現戦争

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