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食物戦記

#6

ヘ、衝突

 青々としたりょくちゃ草原に、一本の黒い線が果てしなく伸びている。第三プレッツェル帝国(プレッツェル国)管轄の南自由州鉄道だ。以前からこの鉄道は存在したが、この度の戦争の為、延線や防衛力の強化が図られている。線路の先、今のところの終点に、幾つものプレッツェルたちが群がっていた。
「エッサホイサ。」
掛け声に合わせ、線路の敷設作業が行われている。
「ソーランソーラン。」
プレッツェルたちに混じって、いくつかのおにぎりたちも作業を手伝う。言わずもがな、おにぎり国とプレッツェル国の提携関係のため、異なる食べ物らが前線で協力しているのだ。
「やあ、午前中で数百メートルは進んだぞ。さてここいらで、一旦休むか。」
全員からため息がもれ、その辺に座ってしばしの休憩となった。
「あ、おいお前。枕木がそろそろ無くなるから、本国に発注しといてくれ。」
「了解!」
彼らは一応全員が工兵即ち兵士である上ここは前線なのだが、休憩の様子を見れば、全く戦時中とは思えぬほどのどかな昼下がりだった。上官から命ぜられたプレッツェルの一つが、電信設備の設けられている小屋に駆け出した。森のそばの小屋に。
 森のそばの小屋に。森の茂みからほんの僅かに、銃口が覗く。丁字の照準はプレッツェルに定められ、すでに装填された岩塩の弾丸は、発射の時を今か今かと待っている。何も知らないプレッツェルと銃口の間に一瞬、究極の虚無が張りつめた。
「今のは……。」
休憩を中断して、食べ物工兵たちは少し緊張した。
「あいつがやらかしたんだろ。まだ半熟のガキのくせに、きっと銃を触ったんだな。可愛い奴だが、叱ってやらねばならん。」
上官は茶化した。すぐに緊張はほぐれ、工兵らは休憩を再開した。上官は、彼の愛しの部下のために、説教に向かった。
 再び銃口は白煙を上げる。
「お、おい、まさか…………。」
今度は全員が、今起こっていることを悟った。
「敵襲!」
一つのおにぎりが鐘に飛びつき、非常事態を伝える。カンカンカン!金属の振動は、それだけで全てを伝達し、線路の遥か向こうまで木霊した。
 同じく鐘を合図にして、無数のピロシキ突撃歩兵が茂みから飛び出した。
「資本主義者はしねーっっ!」
いくつかのプレッツェル、およびおにぎりは反撃しようとしたが、奇襲だったため陣形など作れず、簡単に部隊は全滅してしまった。
 一方その頃。よく響く鐘の音は数分かけて、南自由州鉄道の始点・プレッツェル駅に到達した。
「今の音は……。」
駅長は首を傾げる。だが、すぐにその音源で何が発生したかに気づき、一般旅客用の運転見合わせを特別に決定した。代わりに……。
「頼んだぞ、ドーラ。我が南自由州鉄道の社運は、君に懸かってる。」

作者メッセージ

読んでいただき感謝です。今日はちょっと、読みやすいと思います。
次回もお楽しみに。

2025/03/05 11:10

黒田清兵衛・活動縮小中
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PG-12 #暴力表現戦争

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