ハンバーガー国大統領は怒っている。いずれ自由州進出の橋頭堡にしようと考えていた陣地をおにぎり軍に占領され、自国同様自由州を獲得したいおにぎり国に抜け駆けを許す格好になったからだ。大統領は現在、今後のハンバーガー国の国際社会での立ち回りを論ずる会合に出席しているのだが、意見を戦わせる学者らなど気にもせず、ずっとそのことを考えていた。ああ、国家の威信を落としたハンデは大きい。きっと、次期選挙に響くだろう。それに、建国以来の大失態を晒したのは自分だと後世に残る可能性は否めない。なお気分は害され、ご自慢の綺麗に重ねられたバンズやパティも徐々にずれていった。
学者らは大変不機嫌そうにしている大統領のオーラに怖気付き、会議も停止しかけていた頃、大統領補佐官が、大統領のずれかかった具材を整えながら彼に耳打ちした。
「閣下。これを好機と捉えるのでございます。おにぎり国は確かに我々の一歩先を行きましたが、それは彼の国にとっても決して良いことばかりでは無いでしょう。学者様は、決して閣下を落胆させません。今一度お気持ちを整理なさり、彼らの意見に耳を傾けられてはいかがですか。」
「……そういうものかな。」
「そうですとも。」
まだ納得し切ってはいないものの、幾分落ち着いた大統領は、その顔色を伺っている学者らに向き直った。
「すまんかった、続けてくれ。」
「は、はい、ええと。」
一人の学者は少し慌てながらも、持論を展開した。
……まず、大御握帝国が我が国よりも早く自由州において行動を開始したと言うのは、揺るがぬ事実であります。しかしものは考えようです。他国も自由州を狙っていたところで、おにぎり国が抜け駆けをしたと言うのですから、当然他国も反発するでしょう。そこで、我が国の出番です。まもなく催されるでありましょう国際会議において、我が国は何かしらの理由を以て、おにぎり国を侵略行動を開始した断罪されるべき国家と主張し、さらに国連憲章を以て、おにぎり国に経済制裁を課すことや、自由州の解放のための多国籍連合の結成(暫定的に連合軍とでも称しましょう)を提案します。きっと多くの国が参画することでしょう。いち早くこの枠組みを”我が国が”提案することにより、我が国はこれらの中心的存在になり得ます。連合軍に属する事が予想される国家は、試算でおよそ二十五カ国です。軍事学者との共同調査によれば、これらの軍事力の総合はおにぎり側を容易く上回り、戦勝は十分可能性があります。そうすると戦後処理において、戦争に多大な貢献をした我が国は優位に立つ事ができます。
おにぎり側と決定的に対立する構図を作ること。経済制裁及び連合国の結成の提案並びにそれらの中枢となること。これによって我が国を勝利へと導き、おにぎり国の早とちりを有効活用して戦後の自由州を好きなようにする。以上が私の考えるところであります……。
「私はこれに反対します。」
ある別のハンバーガーが挙手した。
「あなたの意見には、『きっと』とか『でしょう』とか『可能性』とかが多すぎる。不確定的要素を楽観視した愚策だ。到底受け入れられるものではない。」
「しかし、それらのすべては過去の歴史の証明や念密な調査によって、ほぼそうなる事が確定していると結論付けられているのです。例えば、九割方起こり得る物事は『十割』とは言えないが、決して小さい数字ではない。」
「国家の大事にはわずかな負の場合も無視できない。数字云々ではなく、予想外に備えた安全策こそが至高だと言っているのだ。わかったか、青二才。」
「何だとっっ。貴様こそ、青菜よりも青い青二才だっ。」
「黙れ!十分な反駁無しに相手を否定することしか出来ぬ奴は学者ではなく、従ってここにいる権利はない。直ちに退出しやがれ!」
「一人合点の定義付けを行う貴様こそ退出だっ。先程のセリフ、そっくりそのままお返ししてやるっっ。」
「まあ、まあ、落ち着け。」
しばらく論戦を聴いていた大統領は、それがただの口論になり切ってしまう前に、それを止めた。
「私は気に入ったぞ、その提案。」
「し、しかし……。」
「思うのだが、国家の大事であるからこそ、大博打を打つべきでは無いのか。悠長にしていたら、ライスボールとの差はますます広がる。確かな効果がありそーな、見たとこイイ感じのその案を、採用したい。」
「さすがは閣下。先見の明がお有りでいらっしゃる。」
「うむ。本日はありがとう、諸君。これを以て解散とする。」
「そ、そんなぁ。」
いつまでも悲嘆に暮れる安全志向の学者を尻目に、大統領と、すっかり彼に懐いた冒険主義的学者、そして大統領補佐官は、会議室を後にした。
果たしていつまで、自由州進出はおにぎり国の独壇場であるのだろうか。打倒おにぎりを掲げる超大国・合衆ハンバーガー国は動き出した。その策略は、のちに数多くの国家を巻き込んだ大戦争を引き起こす……。
学者らは大変不機嫌そうにしている大統領のオーラに怖気付き、会議も停止しかけていた頃、大統領補佐官が、大統領のずれかかった具材を整えながら彼に耳打ちした。
「閣下。これを好機と捉えるのでございます。おにぎり国は確かに我々の一歩先を行きましたが、それは彼の国にとっても決して良いことばかりでは無いでしょう。学者様は、決して閣下を落胆させません。今一度お気持ちを整理なさり、彼らの意見に耳を傾けられてはいかがですか。」
「……そういうものかな。」
「そうですとも。」
まだ納得し切ってはいないものの、幾分落ち着いた大統領は、その顔色を伺っている学者らに向き直った。
「すまんかった、続けてくれ。」
「は、はい、ええと。」
一人の学者は少し慌てながらも、持論を展開した。
……まず、大御握帝国が我が国よりも早く自由州において行動を開始したと言うのは、揺るがぬ事実であります。しかしものは考えようです。他国も自由州を狙っていたところで、おにぎり国が抜け駆けをしたと言うのですから、当然他国も反発するでしょう。そこで、我が国の出番です。まもなく催されるでありましょう国際会議において、我が国は何かしらの理由を以て、おにぎり国を侵略行動を開始した断罪されるべき国家と主張し、さらに国連憲章を以て、おにぎり国に経済制裁を課すことや、自由州の解放のための多国籍連合の結成(暫定的に連合軍とでも称しましょう)を提案します。きっと多くの国が参画することでしょう。いち早くこの枠組みを”我が国が”提案することにより、我が国はこれらの中心的存在になり得ます。連合軍に属する事が予想される国家は、試算でおよそ二十五カ国です。軍事学者との共同調査によれば、これらの軍事力の総合はおにぎり側を容易く上回り、戦勝は十分可能性があります。そうすると戦後処理において、戦争に多大な貢献をした我が国は優位に立つ事ができます。
おにぎり側と決定的に対立する構図を作ること。経済制裁及び連合国の結成の提案並びにそれらの中枢となること。これによって我が国を勝利へと導き、おにぎり国の早とちりを有効活用して戦後の自由州を好きなようにする。以上が私の考えるところであります……。
「私はこれに反対します。」
ある別のハンバーガーが挙手した。
「あなたの意見には、『きっと』とか『でしょう』とか『可能性』とかが多すぎる。不確定的要素を楽観視した愚策だ。到底受け入れられるものではない。」
「しかし、それらのすべては過去の歴史の証明や念密な調査によって、ほぼそうなる事が確定していると結論付けられているのです。例えば、九割方起こり得る物事は『十割』とは言えないが、決して小さい数字ではない。」
「国家の大事にはわずかな負の場合も無視できない。数字云々ではなく、予想外に備えた安全策こそが至高だと言っているのだ。わかったか、青二才。」
「何だとっっ。貴様こそ、青菜よりも青い青二才だっ。」
「黙れ!十分な反駁無しに相手を否定することしか出来ぬ奴は学者ではなく、従ってここにいる権利はない。直ちに退出しやがれ!」
「一人合点の定義付けを行う貴様こそ退出だっ。先程のセリフ、そっくりそのままお返ししてやるっっ。」
「まあ、まあ、落ち着け。」
しばらく論戦を聴いていた大統領は、それがただの口論になり切ってしまう前に、それを止めた。
「私は気に入ったぞ、その提案。」
「し、しかし……。」
「思うのだが、国家の大事であるからこそ、大博打を打つべきでは無いのか。悠長にしていたら、ライスボールとの差はますます広がる。確かな効果がありそーな、見たとこイイ感じのその案を、採用したい。」
「さすがは閣下。先見の明がお有りでいらっしゃる。」
「うむ。本日はありがとう、諸君。これを以て解散とする。」
「そ、そんなぁ。」
いつまでも悲嘆に暮れる安全志向の学者を尻目に、大統領と、すっかり彼に懐いた冒険主義的学者、そして大統領補佐官は、会議室を後にした。
果たしていつまで、自由州進出はおにぎり国の独壇場であるのだろうか。打倒おにぎりを掲げる超大国・合衆ハンバーガー国は動き出した。その策略は、のちに数多くの国家を巻き込んだ大戦争を引き起こす……。