いつだったか、これも歴史を変えたのは確かだと思う。暗黒砂糖の木曜日とか言ったな。世界の金融の中心で、カブ価が急下落したんだ。多くの国がそこと関わりを持ってたから、みんな不況へまっしぐら。どっかの[漢字]共産[/漢字][ふりがな]ギョウザん
[/ふりがな]主義の国はそうでもなかったらしいけど。そしてブロック経済さ。どこの国も、他の国と互いに信じ合えなくなったんだな。そんな雰囲気の中に飛び込んだあの知らせこそが、本当に歴史を変えたんだ……。
[大文字]速報!何処の国にも領有されざる「自由州」にて希少資源発見[/大文字]
[斜体]「『自由州』を確保すれば、現在の不況を脱出できるのみならず、自国中心の国際社会の新秩序を築ける可能性がある。」[/斜体]
[明朝体]国連が声明発表 憲章が定めるように どんな国家も帰属が定まらない地域を自国に編入できない 国連がその名の下に 委任統治を行う[/明朝体]
全世界総貧乏な中で資源の埋蔵が報告されれば、どこの国だってそれに飛びつくさ。しかも、どこの国にも属さない場所だなんて聞いたら尚更だ。この後は言うまでも無い。
世界大戦が始まる。
[水平線]
肥沃な大地は眠り、時折風が草原を撫でる音程度しか聴こえぬほど、静まり返った夜の自由州。ここらが砲撃とか銃撃とかでやかましくなるのはもう少し後の話だが、とにかく今宵は静かなのだ。厚い雲が月を殆ど覆い隠してしまったため、誰も密かに行われている侵攻の準備の様子に気が付かなかった。わずかな雲の隙間から覗いた月は、バランの茂みを掻き分け前進するおにぎりの隊列をぼんやりと照らした。
おにぎり軍。正式な名は「大御握帝国軍」だ。お茶碗およそ七百万杯分の総兵力を誇るこの軍隊を保持する大御握帝国(おにぎり国)もまた、世界恐慌によって苦しみ、それ故資源発見の朗報に飛びついた国の一つなのである。今や世界中の国家が不況からの脱出を願って、自由州を獲得せんと躍起になっている。その中でもいち早く行動を開始したのがおにぎり国だった。
沈黙の隊列の中に、ささやき声が聞こえた。
「これは……。『特別軍事作戦』なんですよね……。」
出来立てのおにぎり兵が言った。
「そうだ。畏れ多くも慈悲深い陛下は、我々に重要な仕事を与えられた。」
飯が冷えたおにぎり兵は答えた。
「自由州に居住するおにぎり系食物の保護のためだ。」
「それって。」
「そう言うことだ。わかるな。」
「はい。」
この作戦が何を意味しているのか、出来立ての、若いおにぎり兵は薄々気づいていた。
「陛下のために。祖国のために。」
自分らが何を犯そうとも、
「我々は正義だ。神国大御握帝国だ。」
それは償うべき罪ではない。
「まもなく作戦開始である。」
心配することはない。
「握り飯に栄光と」
おいしさ有れ。
[/ふりがな]主義の国はそうでもなかったらしいけど。そしてブロック経済さ。どこの国も、他の国と互いに信じ合えなくなったんだな。そんな雰囲気の中に飛び込んだあの知らせこそが、本当に歴史を変えたんだ……。
[大文字]速報!何処の国にも領有されざる「自由州」にて希少資源発見[/大文字]
[斜体]「『自由州』を確保すれば、現在の不況を脱出できるのみならず、自国中心の国際社会の新秩序を築ける可能性がある。」[/斜体]
[明朝体]国連が声明発表 憲章が定めるように どんな国家も帰属が定まらない地域を自国に編入できない 国連がその名の下に 委任統治を行う[/明朝体]
全世界総貧乏な中で資源の埋蔵が報告されれば、どこの国だってそれに飛びつくさ。しかも、どこの国にも属さない場所だなんて聞いたら尚更だ。この後は言うまでも無い。
世界大戦が始まる。
[水平線]
肥沃な大地は眠り、時折風が草原を撫でる音程度しか聴こえぬほど、静まり返った夜の自由州。ここらが砲撃とか銃撃とかでやかましくなるのはもう少し後の話だが、とにかく今宵は静かなのだ。厚い雲が月を殆ど覆い隠してしまったため、誰も密かに行われている侵攻の準備の様子に気が付かなかった。わずかな雲の隙間から覗いた月は、バランの茂みを掻き分け前進するおにぎりの隊列をぼんやりと照らした。
おにぎり軍。正式な名は「大御握帝国軍」だ。お茶碗およそ七百万杯分の総兵力を誇るこの軍隊を保持する大御握帝国(おにぎり国)もまた、世界恐慌によって苦しみ、それ故資源発見の朗報に飛びついた国の一つなのである。今や世界中の国家が不況からの脱出を願って、自由州を獲得せんと躍起になっている。その中でもいち早く行動を開始したのがおにぎり国だった。
沈黙の隊列の中に、ささやき声が聞こえた。
「これは……。『特別軍事作戦』なんですよね……。」
出来立てのおにぎり兵が言った。
「そうだ。畏れ多くも慈悲深い陛下は、我々に重要な仕事を与えられた。」
飯が冷えたおにぎり兵は答えた。
「自由州に居住するおにぎり系食物の保護のためだ。」
「それって。」
「そう言うことだ。わかるな。」
「はい。」
この作戦が何を意味しているのか、出来立ての、若いおにぎり兵は薄々気づいていた。
「陛下のために。祖国のために。」
自分らが何を犯そうとも、
「我々は正義だ。神国大御握帝国だ。」
それは償うべき罪ではない。
「まもなく作戦開始である。」
心配することはない。
「握り飯に栄光と」
おいしさ有れ。