おにぎり国の代表団が搭乗する飛行機が、寿司共和国(寿司国)のアナゴ空港に到着した。降機した代表団は写真撮影もそこそこに、首都サーモンに向かうべく専用のバスに乗り込んだ。
サーモンの産業奨励館にて。
「それでは、これより大御握帝国と寿司共和国の提携関係に関する会合を始めたいと思います。」
待ち構えた記者団のカメラからシャッターが浴びせられる。それが鳴り止むと、いよいよ意見の提案が開始された。
「これからの我々の協力は必至でありますが、現在の国際情勢を鑑みるに、旧来のような単なる同盟関係では自由州戦争を乗り切れぬものと思われます。そこで我々は時代に合わせた新たな協力の姿勢を模索していくべきであり、本日はこれについての詳細を決定していくものとします。」
おにぎり国はこれまでにも、プレッツェル国やピッツァ王国と同盟を結んでいるが、今回の寿司国との会合においては少し事情が異なるようだ。この世界で寿司国といえば技術大国であり、回転寿司型高速道路の開通やサラダ油圧動力機関の実用化など、様々な技術革新とそれに伴う経済発展が行われてきた。おにぎり国は資源・物資・人員で圧倒してくる合衆ハンバーガー国並びにピロシキ連邦とオマケの諸外国に対抗するために、技術を持った寿司国に擦り寄ってきたのだった。
「……これを持っておにぎり国側からの、技術提供に関する提案を終了します。次に寿司国側からの提案を行います。」
寿司国側からは、技術提供の見返りにおにぎり国がその軍事力で寿司国の防衛を代行すること(寿司国は技術こそあれど軍隊を持たない)や、おにぎり国が自由州で得た権益のうちいくらかを分前として差し出すことが提案された。
「それでは決議に移ります。」
実際はこの会合の結末など初めから決まっていたようなものであり、特に意見の妥協も無く、署名を以て全面的な合意となった。
これで、公の会合は終了した。
「それでは、代表の皆様はこちらへ。」
案内に従って、両国の代表は立ち上がり、別室へと移動した。ここからは非公開の会合が始まる。
その前に、休憩の時間が取られた。ここは、おにぎり国代表の部屋。
「こっちこそが本命なのです。事は大方予想通りに運ぶはずです、良い取引になることを願いましょう。」
その通り、おにぎり国にとってはこの非公開の会合こそが目当てであった。
「成功すれば我が国は究極の切り札を手に入れることになりますね。」
「ええ、『ファットマン計画』……!」
非公開の会合が始まった。冒頭で寿司国の研究者たちが、議題の新兵器について説明を行う。
「……『[漢字]食べ過ぎ男[/漢字][ふりがな]ファットマン[/ふりがな]』は、イリコニウム239が持つ瞬間的かつ圧倒的爆発力および持続的な人口日光の放射と、爆弾内部の大量の水がそれに熱せられ水蒸気になることで、超直射日光・高温多湿な環境を作り出し、被曝した全ての食べ物の保存状態を最悪にして[漢字]鮮度をなくす[/漢字][ふりがな]死に至らせる[/ふりがな]全く新しい新型爆弾です。未だかつて無いほどの大規模かつ強力な兵器であるため、単なる戦術兵器の枠組みを超えた全く新しい運用を要求する上、実用化段階に漕ぎ着けておらず研究の出資も難しいのが課題です。ですが、完成すればきっと、その保有国は軍事的・政治的なアドバンテージを得ることでしょう。」
「……。」
代表団は驚き、考え込んだ。当初の想定と異なり、まさかあの寿司国が開発に難航していることや、それに伴い出資を求めてくることをたった今知ったからだ。予想以上に大きな買い物となる。だが、ここで下手に断ってしまえば、永遠に強国への切符を失うかもしれないのだ。寿司国とはただの技術的な提携関係即ち売り手と買い手の関係であり、信頼できる友人同士のような同盟関係にはないのだ。ここで新技術に意欲を示して懐かせなければ、もしかするとハンバーガーなどの敵国にそれを提供してしまうかもしれない。しかし、こちらが多額の出資をしてまで買わねばならぬ品物なのか。扱いには癖があるとかあの研究者も言っていたし、そもそも金を出してやったところで完成が間に合わねば大損である。負担と対価をてんびんに掛けても、どうにも釣り合っているようには思えない。
代表団は意を決した。
「買いません。」
「そうですか……。あなた方ならばきっと芳しい反応をしてくださると期待していましたのに。いえ、失礼しました。今回はご縁がなかったということで。」
未練がましく研究者は言ったが、情で動くものではないのが外交だ。彼が最後に言った通り、今回は縁がなかったことにしてまた出直すしかない。
ひとまずおにぎり国と寿司国の関係は、一般的な技術とその見返りを相互に提供し合う、というところに落ち着いた。恐ろしく強力な新型兵器は買い上げられることなく、開発は中止になり、闇に葬り去られた……。
かのようにも思われた。
サーモンの産業奨励館にて。
「それでは、これより大御握帝国と寿司共和国の提携関係に関する会合を始めたいと思います。」
待ち構えた記者団のカメラからシャッターが浴びせられる。それが鳴り止むと、いよいよ意見の提案が開始された。
「これからの我々の協力は必至でありますが、現在の国際情勢を鑑みるに、旧来のような単なる同盟関係では自由州戦争を乗り切れぬものと思われます。そこで我々は時代に合わせた新たな協力の姿勢を模索していくべきであり、本日はこれについての詳細を決定していくものとします。」
おにぎり国はこれまでにも、プレッツェル国やピッツァ王国と同盟を結んでいるが、今回の寿司国との会合においては少し事情が異なるようだ。この世界で寿司国といえば技術大国であり、回転寿司型高速道路の開通やサラダ油圧動力機関の実用化など、様々な技術革新とそれに伴う経済発展が行われてきた。おにぎり国は資源・物資・人員で圧倒してくる合衆ハンバーガー国並びにピロシキ連邦とオマケの諸外国に対抗するために、技術を持った寿司国に擦り寄ってきたのだった。
「……これを持っておにぎり国側からの、技術提供に関する提案を終了します。次に寿司国側からの提案を行います。」
寿司国側からは、技術提供の見返りにおにぎり国がその軍事力で寿司国の防衛を代行すること(寿司国は技術こそあれど軍隊を持たない)や、おにぎり国が自由州で得た権益のうちいくらかを分前として差し出すことが提案された。
「それでは決議に移ります。」
実際はこの会合の結末など初めから決まっていたようなものであり、特に意見の妥協も無く、署名を以て全面的な合意となった。
これで、公の会合は終了した。
「それでは、代表の皆様はこちらへ。」
案内に従って、両国の代表は立ち上がり、別室へと移動した。ここからは非公開の会合が始まる。
その前に、休憩の時間が取られた。ここは、おにぎり国代表の部屋。
「こっちこそが本命なのです。事は大方予想通りに運ぶはずです、良い取引になることを願いましょう。」
その通り、おにぎり国にとってはこの非公開の会合こそが目当てであった。
「成功すれば我が国は究極の切り札を手に入れることになりますね。」
「ええ、『ファットマン計画』……!」
非公開の会合が始まった。冒頭で寿司国の研究者たちが、議題の新兵器について説明を行う。
「……『[漢字]食べ過ぎ男[/漢字][ふりがな]ファットマン[/ふりがな]』は、イリコニウム239が持つ瞬間的かつ圧倒的爆発力および持続的な人口日光の放射と、爆弾内部の大量の水がそれに熱せられ水蒸気になることで、超直射日光・高温多湿な環境を作り出し、被曝した全ての食べ物の保存状態を最悪にして[漢字]鮮度をなくす[/漢字][ふりがな]死に至らせる[/ふりがな]全く新しい新型爆弾です。未だかつて無いほどの大規模かつ強力な兵器であるため、単なる戦術兵器の枠組みを超えた全く新しい運用を要求する上、実用化段階に漕ぎ着けておらず研究の出資も難しいのが課題です。ですが、完成すればきっと、その保有国は軍事的・政治的なアドバンテージを得ることでしょう。」
「……。」
代表団は驚き、考え込んだ。当初の想定と異なり、まさかあの寿司国が開発に難航していることや、それに伴い出資を求めてくることをたった今知ったからだ。予想以上に大きな買い物となる。だが、ここで下手に断ってしまえば、永遠に強国への切符を失うかもしれないのだ。寿司国とはただの技術的な提携関係即ち売り手と買い手の関係であり、信頼できる友人同士のような同盟関係にはないのだ。ここで新技術に意欲を示して懐かせなければ、もしかするとハンバーガーなどの敵国にそれを提供してしまうかもしれない。しかし、こちらが多額の出資をしてまで買わねばならぬ品物なのか。扱いには癖があるとかあの研究者も言っていたし、そもそも金を出してやったところで完成が間に合わねば大損である。負担と対価をてんびんに掛けても、どうにも釣り合っているようには思えない。
代表団は意を決した。
「買いません。」
「そうですか……。あなた方ならばきっと芳しい反応をしてくださると期待していましたのに。いえ、失礼しました。今回はご縁がなかったということで。」
未練がましく研究者は言ったが、情で動くものではないのが外交だ。彼が最後に言った通り、今回は縁がなかったことにしてまた出直すしかない。
ひとまずおにぎり国と寿司国の関係は、一般的な技術とその見返りを相互に提供し合う、というところに落ち着いた。恐ろしく強力な新型兵器は買い上げられることなく、開発は中止になり、闇に葬り去られた……。
かのようにも思われた。