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自殺描写あり

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形骸

#3

2

目の前で、顧問の先生が持つ指揮棒が鋭く空を切る

音楽室を鳴らしていた合奏の音が止まった

顧問「今のところ、全体的にもう少し音を揃えましょう

   ○○さんのピッチが一番安定しているから、みんなそこに合わせてください」

先生は、私の方を見て、満足げに頷いた

先生の指示を最後に、今日の全体部活は終了となった

私は自分のトロンボーンを膝の上に乗せ、マウスピースを外して水分を拭き取った

スライドをロックし、丁寧に磨いてから、棚の定位置にある紺色のハードケースへと収める

カチリ、と金具が閉まる音が、なんだかやけに大きく響いた気がした

部長「これでミーティングを終わります」

みんな「ありがとうございました」

未羽「帰ろ〜!」

みんなが一斉に動き出す

みんなが私の方を向く

里奈「終わった?帰ろ!」

この学校は寄り道が禁止されているから

部活が終わればみんなで真っ直ぐ、並んで帰るのがいつもの決まりだった

私はカバンを手に取り、いつものように柔らかく微笑んでみんなの輪に加わった

 校門をくぐると、夕暮れのオレンジ色の光が、私たちの影を長く地面に引き延ばしていた

校門のすぐ前の交差点で、千歳さんが足を止めて振り返る

千歳「じゃあ、私はこっちの方向だから。また明日ね」

里奈「うん、千歳さんまた明日!」

里奈が元気に手を振り、千歳さんは小さく手を挙げて一人だけ別方向の道を歩いていく

残った私たちは、広い通学路に広がってゾロゾロと歩き出す

未羽「ちょっと木村、合奏、タイミングズレすぎ!」

未羽はバレー部から転部してきて以来、すっかり毎日楽しそうに部活へ来ている

日向も、その横で声を上げて笑っていた

ほのか「そういえば◆◆、おすすめしたアニメ見てくれた?」

少しおとなしいほのかが、独特のテンポで私に視線を送ってくる

●●「見たよ、結構好き、笑」

そういうと、ほのかは嬉しそうに目を細めた

里奈が笑い、陽菜が優しく微笑み、蓮がいじられ、6月に入った3人も輪に馴染んでいる

総勢7人の、賑やかで愛おしい下校の風景

その輪の中に、私もちゃんと混ざって、タイミングよく相槌を打って、みんなと同じように笑ってみせる

世界はどこまでも平穏で、温かい

学校には大好きな友達がこんなにたくさんいて、部活も上手くいって、不満なんてないはずだった

なのに、胸の真ん中にある冷たい空洞が、風に吹かれているような感覚になる

みんなの楽しそうな笑い声が耳に届くたびに、防音ガラスの向こう側に引き離されていくような感覚

みんなが私を愛してくれて、みんなが私を「仲間」だと信じてくれている

だからこそ、死にたいなんて、消えてしまいたいなんて、口が裂けても言えるわけがない

こんなに恵まれた環境にいて何が不満なんだと、自分でも自分を殴りつけたくなる

でも、苦しい。幸せなはずなのに、息ができないくらい苦しい

「じゃあね、また明日」大きな十字路や曲がり角に来るたびに、みんな手を振って別の道へと外れていく

最後に完全に一人になった瞬間、私の顔からすべての表情が、剥がれ落ちるように消え失せた

いっそ明日、目が覚めなければいいのに

私の座っていた音楽室の椅子も、通学路の思い出も、私という存在ごと最初からなかったことにできたら

そんな贅沢で、誰にも言えない最低な願いを抱えながら、家路についた

2026/06/23 23:08

しゅーりっく
ID:≫ 00vSbP4v70HbQ
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ヒューマンドラマ病み自殺描写あり

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