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目の前で、顧問の先生が持つ指揮棒が鋭く空を切る
音楽室を鳴らしていた合奏の音が止まった
顧問「今のところ、全体的にもう少し音を揃えましょう
○○さんのピッチが一番安定しているから、みんなそこに合わせてください」
先生は、私の方を見て、満足げに頷いた
先生の指示を最後に、今日の全体部活は終了となった
私は自分のトロンボーンを膝の上に乗せ、マウスピースを外して水分を拭き取った
スライドをロックし、丁寧に磨いてから、棚の定位置にある紺色のハードケースへと収める
カチリ、と金具が閉まる音が、なんだかやけに大きく響いた気がした
部長「これでミーティングを終わります」
みんな「ありがとうございました」
未羽「帰ろ〜!」
みんなが一斉に動き出す
みんなが私の方を向く
里奈「終わった?帰ろ!」
この学校は寄り道が禁止されているから
部活が終わればみんなで真っ直ぐ、並んで帰るのがいつもの決まりだった
私はカバンを手に取り、いつものように柔らかく微笑んでみんなの輪に加わった
校門をくぐると、夕暮れのオレンジ色の光が、私たちの影を長く地面に引き延ばしていた
校門のすぐ前の交差点で、千歳さんが足を止めて振り返る
千歳「じゃあ、私はこっちの方向だから。また明日ね」
里奈「うん、千歳さんまた明日!」
里奈が元気に手を振り、千歳さんは小さく手を挙げて一人だけ別方向の道を歩いていく
残った私たちは、広い通学路に広がってゾロゾロと歩き出す
未羽「ちょっと木村、合奏、タイミングズレすぎ!」
未羽はバレー部から転部してきて以来、すっかり毎日楽しそうに部活へ来ている
日向も、その横で声を上げて笑っていた
ほのか「そういえば◆◆、おすすめしたアニメ見てくれた?」
少しおとなしいほのかが、独特のテンポで私に視線を送ってくる
●●「見たよ、結構好き、笑」
そういうと、ほのかは嬉しそうに目を細めた
里奈が笑い、陽菜が優しく微笑み、蓮がいじられ、6月に入った3人も輪に馴染んでいる
総勢7人の、賑やかで愛おしい下校の風景
その輪の中に、私もちゃんと混ざって、タイミングよく相槌を打って、みんなと同じように笑ってみせる
世界はどこまでも平穏で、温かい
学校には大好きな友達がこんなにたくさんいて、部活も上手くいって、不満なんてないはずだった
なのに、胸の真ん中にある冷たい空洞が、風に吹かれているような感覚になる
みんなの楽しそうな笑い声が耳に届くたびに、防音ガラスの向こう側に引き離されていくような感覚
みんなが私を愛してくれて、みんなが私を「仲間」だと信じてくれている
だからこそ、死にたいなんて、消えてしまいたいなんて、口が裂けても言えるわけがない
こんなに恵まれた環境にいて何が不満なんだと、自分でも自分を殴りつけたくなる
でも、苦しい。幸せなはずなのに、息ができないくらい苦しい
「じゃあね、また明日」大きな十字路や曲がり角に来るたびに、みんな手を振って別の道へと外れていく
最後に完全に一人になった瞬間、私の顔からすべての表情が、剥がれ落ちるように消え失せた
いっそ明日、目が覚めなければいいのに
私の座っていた音楽室の椅子も、通学路の思い出も、私という存在ごと最初からなかったことにできたら
そんな贅沢で、誰にも言えない最低な願いを抱えながら、家路についた
音楽室を鳴らしていた合奏の音が止まった
顧問「今のところ、全体的にもう少し音を揃えましょう
○○さんのピッチが一番安定しているから、みんなそこに合わせてください」
先生は、私の方を見て、満足げに頷いた
先生の指示を最後に、今日の全体部活は終了となった
私は自分のトロンボーンを膝の上に乗せ、マウスピースを外して水分を拭き取った
スライドをロックし、丁寧に磨いてから、棚の定位置にある紺色のハードケースへと収める
カチリ、と金具が閉まる音が、なんだかやけに大きく響いた気がした
部長「これでミーティングを終わります」
みんな「ありがとうございました」
未羽「帰ろ〜!」
みんなが一斉に動き出す
みんなが私の方を向く
里奈「終わった?帰ろ!」
この学校は寄り道が禁止されているから
部活が終わればみんなで真っ直ぐ、並んで帰るのがいつもの決まりだった
私はカバンを手に取り、いつものように柔らかく微笑んでみんなの輪に加わった
校門をくぐると、夕暮れのオレンジ色の光が、私たちの影を長く地面に引き延ばしていた
校門のすぐ前の交差点で、千歳さんが足を止めて振り返る
千歳「じゃあ、私はこっちの方向だから。また明日ね」
里奈「うん、千歳さんまた明日!」
里奈が元気に手を振り、千歳さんは小さく手を挙げて一人だけ別方向の道を歩いていく
残った私たちは、広い通学路に広がってゾロゾロと歩き出す
未羽「ちょっと木村、合奏、タイミングズレすぎ!」
未羽はバレー部から転部してきて以来、すっかり毎日楽しそうに部活へ来ている
日向も、その横で声を上げて笑っていた
ほのか「そういえば◆◆、おすすめしたアニメ見てくれた?」
少しおとなしいほのかが、独特のテンポで私に視線を送ってくる
●●「見たよ、結構好き、笑」
そういうと、ほのかは嬉しそうに目を細めた
里奈が笑い、陽菜が優しく微笑み、蓮がいじられ、6月に入った3人も輪に馴染んでいる
総勢7人の、賑やかで愛おしい下校の風景
その輪の中に、私もちゃんと混ざって、タイミングよく相槌を打って、みんなと同じように笑ってみせる
世界はどこまでも平穏で、温かい
学校には大好きな友達がこんなにたくさんいて、部活も上手くいって、不満なんてないはずだった
なのに、胸の真ん中にある冷たい空洞が、風に吹かれているような感覚になる
みんなの楽しそうな笑い声が耳に届くたびに、防音ガラスの向こう側に引き離されていくような感覚
みんなが私を愛してくれて、みんなが私を「仲間」だと信じてくれている
だからこそ、死にたいなんて、消えてしまいたいなんて、口が裂けても言えるわけがない
こんなに恵まれた環境にいて何が不満なんだと、自分でも自分を殴りつけたくなる
でも、苦しい。幸せなはずなのに、息ができないくらい苦しい
「じゃあね、また明日」大きな十字路や曲がり角に来るたびに、みんな手を振って別の道へと外れていく
最後に完全に一人になった瞬間、私の顔からすべての表情が、剥がれ落ちるように消え失せた
いっそ明日、目が覚めなければいいのに
私の座っていた音楽室の椅子も、通学路の思い出も、私という存在ごと最初からなかったことにできたら
そんな贅沢で、誰にも言えない最低な願いを抱えながら、家路についた