君の瞳が茜色に染まるとき。
#1
プロローグ
「瀬名」
空が茜色に染まる。遠くから聞こえてくる合唱部の歌声と共に、私を呼ぶその声が静かに鼓膜を揺らした。
大人びている低い声。それでいてどこか幼さも感じさせるような、そんな声。私が大好きな、私を呼ぶ声。
「‥‥‥」
パシャッ。
軽快なシャッター音と共に振り返った私は、じっと君を見つめた。
カメラ越しの、君の目を。
私の目には君が映っていて、君の目には私が映っているのだろうか。
そんなことはあり得ないと分かりきっているのに。期待している自分がいた。
「久しぶりだね、瀬名」
カメラから顔を外した君は、ふわっと笑いかけてきた。
その仕草だけで私の心はこんなにも弾んでしまうというのに。
その感情を隠すように私は顔を作る。
「‥‥久しぶり、碧」
声が少し、震えた気がした。バレなかっただろうか。
君は‥‥碧は、私を静かに、じっと見つめる。何もかも、私の心までも見透かしてしまいそうなその瞳で。
耐えきれず、私は目を逸らした。現実から目を背けるように。
お願い。私を見ないで。この感情に気づかせないで。
そんな言葉が私の中に渦巻いている。
「瀬名、あのさ」
「ごめん、私、行かなきゃだから」
碧の言葉を遮り、私は足早にその場を去った。
‥‥何、してるんだろう。
息を切らしながら、自分に心の中で問いかける。
でも、答えなんか出てこない。存在しない。私は受け入れられないから。誰もが受け止めるべき現実を。
誰もいない廊下に立って、一人、静寂に包まれた廊下に立ち尽くしている。
「…‥もう、終わったことじゃん」
自分で自分に言い聞かせ、到底動きそうにない体を無理やり動かして私は帰路についた。
歩きながらも、私の心は渦巻いている。立ち止まったまま。
ぐるぐると回っている。
毎日に雲がかかっているよう。
私の日常から、君という名の光が消えたあの日から。
空が茜色に染まる。遠くから聞こえてくる合唱部の歌声と共に、私を呼ぶその声が静かに鼓膜を揺らした。
大人びている低い声。それでいてどこか幼さも感じさせるような、そんな声。私が大好きな、私を呼ぶ声。
「‥‥‥」
パシャッ。
軽快なシャッター音と共に振り返った私は、じっと君を見つめた。
カメラ越しの、君の目を。
私の目には君が映っていて、君の目には私が映っているのだろうか。
そんなことはあり得ないと分かりきっているのに。期待している自分がいた。
「久しぶりだね、瀬名」
カメラから顔を外した君は、ふわっと笑いかけてきた。
その仕草だけで私の心はこんなにも弾んでしまうというのに。
その感情を隠すように私は顔を作る。
「‥‥久しぶり、碧」
声が少し、震えた気がした。バレなかっただろうか。
君は‥‥碧は、私を静かに、じっと見つめる。何もかも、私の心までも見透かしてしまいそうなその瞳で。
耐えきれず、私は目を逸らした。現実から目を背けるように。
お願い。私を見ないで。この感情に気づかせないで。
そんな言葉が私の中に渦巻いている。
「瀬名、あのさ」
「ごめん、私、行かなきゃだから」
碧の言葉を遮り、私は足早にその場を去った。
‥‥何、してるんだろう。
息を切らしながら、自分に心の中で問いかける。
でも、答えなんか出てこない。存在しない。私は受け入れられないから。誰もが受け止めるべき現実を。
誰もいない廊下に立って、一人、静寂に包まれた廊下に立ち尽くしている。
「…‥もう、終わったことじゃん」
自分で自分に言い聞かせ、到底動きそうにない体を無理やり動かして私は帰路についた。
歩きながらも、私の心は渦巻いている。立ち止まったまま。
ぐるぐると回っている。
毎日に雲がかかっているよう。
私の日常から、君という名の光が消えたあの日から。