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「トモダチ」

「Aです!これからよろしくね!」
「Sだよ。よろしく」
AちゃんとSちゃんは近所の同級生で、小学校に上がってから初めての友達だった。
小学校に入って初めてできた友達。
クラスはみんな違ったけれど、私たちは毎日一緒に学校に行って、一緒に帰った。






...いつからだろう二人の態度が変わったのは。






私が二人の元へ駆け寄ると走り方を笑うようになった。






一人だけ違う道を帰らさせられるようになった。






私を見てヒソヒソと話し、クスクス笑うようになった。






待ち合わせ場所に来なくなった。






「ストーカーだ!」といって私から笑いながら逃げるようになった。






でも、気にしていなかった。
友達ってそんなものなのかなぐらいにしか思っていなかった。
いつも二人と一緒にいたから、それが普通になっていた。
なぜか分からないけど、二人が楽しそうなら別にいいか。
それぐらいだった。


そう、あの出来事があるまでは…。








ある日、私達はマンションのAちゃんの家で遊んでいた。
するとAちゃんとSちゃんが何かをコソコソ話したあと私に言った。
「ねえ、そこの洗面所に入って。」
「なんで?」
私は聞いた。
「ほらいいからいいから。」
そう言われ、なされるがままに私は洗面所に足を踏み入れた。
洗面所に入った瞬間、部屋が暗くなった。驚いて振り返るとドアが閉まっていた。急いで出ようとしたが扉はびくともしなかった。
どうやら反対側から二人がかりでドアを押さえつけているようだった。
「ねえ、だしてよ!」
その言葉に返ってきたのは二人の笑い声だった。
暗くて怖くて、でも電気がどこにあるのかもわからなくて、二人の力に勝てるはずもなく、私はどうすることもできなかった。
「お願いだして!ねえ!お願い!」
泣きながらそう言うしかなかった。
ドアの隙間から漏れてくる光が洗面所の鏡に反射して私の顔を鏡に写した。涙が反射して光っていた。明るい外の部屋と、暗い洗面所。外から聞こえてくる笑い声と私の泣き声。同じ家の中に全く違う2つの空間があった。まるで私だけがその場で孤立している状態を表しているかのようだった。しばらくして、二人の力が一瞬緩んだ。その隙に私は、ドアを開けて外に出た。後ろから二人がなにか言う声が聞こえたけど、振り向かずに部屋から飛び出した。エレベーターを待つ時間すら焦れったくて、二人に追いつかれたくなくて、非常階段を駆け下り、雨が降る中、傘もささず無我夢中で家まで走った。涙なのか雨なのかもわからないほど私の顔はびしょびしょだった。
わたしは走りながら今までのことを思い返していた。
「私、二人に遊ばれてたんだ。」
そう思うと今まで気にならなかったことも全部嫌がらせに思えてきた。
もしかしたら、今までは気にしてなかったんじゃなくて、悪意に気づかないふりをしていたのかもしれない。気づいてしまったら、傷ついてしまうのが怖くて。
泣いて帰った私を見てお母さんが事情を聞いてくれた。
後日、二人が謝りに来た。
「そんなつもりはなかったんだ。」
「そんなに嫌な思いしてると思わなかったの。」
普通に考えれば、私は泣いていたのに、それを見て嫌な思いをしてないと思ったはずはないのだが、その時私はきっとまた前みたいに仲良くできると信じていた。




...でも、いつまでも嫌がらせはなくならなかった。




それでも私は二人と一緒にいた。


何度も謝られるたびに「次こそは」って期待して許した。



そんな毎日が続いていたある日のこと、Aちゃんの転校が決まった。
「また、お手紙送ってね。」
そう言って私とSちゃんに引っ越し先の住所を書いた手紙をくれた。






もちろん私が手紙を送ることはなかった。





Aちゃんが引っ越すと、Sちゃんは私に構うようになった。
「一緒に学校行こう!今までごめんね。Aちゃんが怖くて、逆らえなかったの。」
私はその言葉を信じた。
そこからは二人でいつも登下校をした。Sちゃんは昔みたいに嫌がらせをしてこなくなって、
「あぁ、ほんとにAちゃんに逆らえなかっただけだったんだ。」


そのうちそう思うようになっていた。

そんなある日のことだった。いつもの待ち合わせ場所にSちゃんが来なくなった。
はじめの頃は「風邪でも引いたのかな」ぐらいに思って毎日待っていた。

でも何週間もそんなことが続いて、流石におかしいなと思い始めた。
ある日、いつもより早い時間に家を出た。



そして私はそれを後悔した。
少し先にSちゃんがいた。
でも私を待っていたわけじゃなかった。
友だちと楽しそうに話しながら、学校に行っていた。

別に、他の友達と学校に行ってるのが嫌だったわけじゃない。

ただ、


ほんの一言でいいから教えてほしかった。



そしたら、別に一人で学校に行ったのに。



信じて、ずっと待ってた私が馬鹿みたい。





次の日から、私はSちゃんより早い時間に家を出るようになった。

一人で歩く学校への道はいつもより長く感じた。

そんな日常が当たり前になりかけていたときだった。
ひょこっとSちゃんが待ち合わせ場所にはやく来るようになった。
理由は分かっていた。
一緒に行っていた友達は先輩で、その子が卒業してしまって一緒に行く友達がいなくなったからだった。
わたしがSちゃんにとって都合の良い存在なんだということはなんとなく分かっていた。
Sちゃんのことを許したわけでもなかった。
でも、、、





一人で歩く道はなんだかさみしくて、
気づいたらまたSちゃんと学校に行くようになった。


ある日、歩いてた私に唐突にSちゃんが
「みのりちゃん歩き方キモーい」
と言った。
いつもと同じほんの冗談ぐらいのつもりだったんだろう。
でも私はいつものように笑えなかった。
いつも馬鹿にしてくるSちゃんの態度にいらついていた。
もう、笑って流すのは限界だった。

「じゃあ、一人で行けば?キモい人となんて一緒に歩かなきゃいいじゃん。」

そう言って私は彼女を置いて歩いた。
もとから彼女に合わせてゆっくり歩いていただけで、普通に歩けば私のほうが速かった。
何をされても本人に直接反論したり、反抗したことはなかった。
だから彼女も初めて見る私の態度に驚いたようでその場に固まっていた。
しばらくして、彼女はハッとして泣きながら私に謝ってきた。
意味がわからなかった。


なんでそんなことで泣くのか。


今まで散々私のことをハブったのに、自分が一人になるのは嫌だなんて。


そんな彼女の姿がなんだか滑稽に見えて笑えてきた。



「昔と逆だな」そんなことをかんがえながら、私は泣きつく彼女を無視して歩いた。
一度突き放したらなんだかもう彼女のことがどうでも良くなって、一人の道も平気になった。
今までがまんしてずっと苦しんでいたなんて馬鹿みたい。
はじめからこうすればよかったんだ。

ずっと、「なんで彼女たちは私に執着するんだろう」と思っていた。

でも、



もしかしたら、彼女たちがわたしに執着していたんじゃなくて、「初めての友達」という関係に執着していたのはわたしの方だったのかもしれない。

そう考えると、なんだかバカバカしくなった。

ずっと二人の顔色を伺って、
何も悪いことしてないのに、
ビクビクして。


私は一体何を恐れていたんだろう。


一人になりたくなくてずっと我慢してたけど、


一人になった今のほうがずっと幸せな気がする。


それに、友達は他にもいるんだから。
なんで友達の中のたった一人のためにあそこまで必死になっていたんだろう。
ずっと下ばかり向いていたから気づかなかったけれど、
空を見上げると






























青い空がどこまでも続いていた。

作者メッセージ

女の子が「トモダチ」という言葉から開放され、未来へ進んでいく。そんな明るいラストにしました。

2025/03/23 20:46

iruka
ID:≫ 1c7soqvjNksF6
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