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あいかとるかと、誰にも見えない空の下で

#5

おはよう、ふつうの日

ぽかぽかした春の朝。
藍佳がおそるおそるキッチンの戸を開けると――

「…………お、おはよう……あ、藍佳……」
るかが、ちいさな声で、でもちょっぴり誇らしげに立っていた。
パジャマの上にエプロンをくしゃっと着て、
フライパンを……ふりながら、あたふたしていた。

「え、えっと……きょ、今日からね……その……っ」
るかは顔を真っ赤にしながら、もじもじ、目をそらした。

「も、もう……病院も、点滴も……なくて……だ、だから……っ」
「その……っ、こ、こういうこと、できるように……なったの……っ」

藍佳は、なにも言わずにるかの頭をなでた。
あったかくて、ほっとするその手に、
るかは思わず目を閉じて、こくんと小さくうなずいた。

「た、卵焼き……すこし焦げちゃったけど……た、食べてくれたらうれしい……かも……っ」

その日の朝ごはんは、ちょっぴり苦くて、
でも、ふたりにとっては、まるでごほうびみたいな味だった。

2025/07/04 12:17

藍瑠
ID:≫ 21UXd1371f91U
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