あたしの名前は[漢字]爰川[/漢字][ふりがな]ここがわ[/ふりがな]アイラ。
1ヶ月前にここ「エイレネ警備隊」に入隊した、華の19歳だ。
そんなあたしは今、記念すべき初の夜勤中である。
夜勤といっても、夜中に街をパトロールするわけじゃない。
警備隊本部の頑丈な建物のなかで、ぬくぬく事務作業をするだけだ。
もちろん通報が入ったら出動するけれど、先輩によると「夜勤で通報が入ることはまずない」らしい。
そんなこと言われたらフラグみたいでちょっと気にかかるけれど、まあ経験豊富な先輩が言うのだから間違い無いだろう。
そう、きっと間違いない……
[太字]ビーッ[/太字] [太字]ビーッ[/太字]
間違いないはず、なんだけど。
[大文字]『一般市民からの通報が入りました。場所は3区の〇〇××。路地裏にて、被害者が倒れた状態で発見されました。通報者の医療従事者による情報では、”脈はなく、明らかに死亡している“とのことです。救急隊・警備隊の皆さんは直ちに現場へ向かって下さい』[/大文字]
嘘でしょ先輩。マジかよ。
アイラは愕然とした顔でしばらく固まった後、ハッとして身支度を始めた。
[水平線]
警備隊所有の飛行バイクに乗って現場を見下ろすと、群がる野次馬とそれを抑える救急隊員とで、辺りはかなり騒がしかった。
飛行バイクから飛び降りたアイラは、側にいた救急隊員の男性に話しかけられた。
「おい、アンタ警備隊員か?」
「はい、そうっス」
「……他に隊員は?」
「夜勤中なもんで。恐らく、あたし一人かと」
「そうか……」
「何かあったんっスか?」
「うちの検死官によるとな、今回の死体……多分、フォーミュラの連中によるものらしい」
「え」
「銃で殺されてるんだがな。何だか、狙って殺したような感じじゃあなくて……”道ですれ違って、衝動的に殺した“みたいな銃痕なんだ。急所を狙ってるわけでもなく、かといってわざと外しているわけでもなく……まあ、単にメチャクチャ銃のコントロールが悪い奴かもしれねぇんだが。何せこのあたり、フォーミュラの根城があるって言われてるだろ? だから、フォーミュラの奴が何かの欲求を埋めるために殺したんじゃねえのかってワケよ」
「……」
アイラは黙り込んだ。
フォーミュラについての知識は、人並みにはある。
人外だけで構成された危険極まりない犯罪集団で、警備隊とも幾度も交戦している団体だ。
その戦闘能力は、かなり高いとされている。
運動神経には自信があるが、流石に一人で犯罪集団の人間を追う気にはならない。というか、あたしはまだ入隊1ヶ月目だ。警備隊員の中ではひよっこもひよっこなあたしが、警備隊のベテランたちが手を焼いている犯罪集団に敵うわけがないのだ。
「そうっスね……もう少しで他の警備隊員も出動してくると思うんで、それまで待機して、他の隊員が到着次第犯人の痕跡を追おうと思います」
「その必要はないよ」
驚いて後ろを振り向くと、野次馬の中から一人、こちらに歩み寄る者がいた。
救急隊員たちが必死に野次馬たちを取り押さえているというのに、その間を抜けてスルリとこちらに向かってくる。
その少年は、子供のような顔立ちをしていた。
身長はアイラよりも高かったが、なんとなく顔が幼い。
暗く長い緑の髪の隙間から、青くて丸い瞳がこちらを覗いている。
その少年を見て、さっきまで話していた救急隊の男がえらく慌てた様子で言った。
「こっ、これはこれは警備隊隊長殿、如何なされましたか!?」
「え、隊長!?」
隊長って……この子のこと!?
アイラは首を激しく左右させて、救急隊員と「隊長」と呼ばれた少年を交互に見遣った。
よく見れば、少年の服の胸元に、何やら勲章が付いている。
服装自体は、そこらの野次馬と変わらないシンプルな服なのに。
というか、隊長なのになんで制服着てないんだこの子。
「君は爰川アイラだね? 1ヶ月前に入隊した」
「っえ、はい……よくご存知っスね……」
「隊員の名前は覚えとくでしょ、普通は」
隊員の名前覚えるより先に制服を着ろよ。
アイラは内心ツッコんだ。
いつの間にか、救急隊員は他の救急隊員たちの中に消えていた。
「あの……隊長? でいいんっスかね?」
「うん。僕がエイレネ警備隊隊長……朱雀悠希だよ」
「なぜ隊長がここに?」
「たまたま通りかかったもんだから」
「はあ……?」
「そんなことより、行くよ?」
そう言って隊長は、黒いマントを[漢字]翻[/漢字][ふりがな]ひるがえ[/ふりがな]し歩き出した。
アイラは慌てて後を追った。
「待って下さい! 行くって……どこにっスか?」
隊長は怪訝そうな顔をして、さも当然のことを言うかのような声色で言い放った。
「どこにって……犯人を追いにだよ」
1ヶ月前にここ「エイレネ警備隊」に入隊した、華の19歳だ。
そんなあたしは今、記念すべき初の夜勤中である。
夜勤といっても、夜中に街をパトロールするわけじゃない。
警備隊本部の頑丈な建物のなかで、ぬくぬく事務作業をするだけだ。
もちろん通報が入ったら出動するけれど、先輩によると「夜勤で通報が入ることはまずない」らしい。
そんなこと言われたらフラグみたいでちょっと気にかかるけれど、まあ経験豊富な先輩が言うのだから間違い無いだろう。
そう、きっと間違いない……
[太字]ビーッ[/太字] [太字]ビーッ[/太字]
間違いないはず、なんだけど。
[大文字]『一般市民からの通報が入りました。場所は3区の〇〇××。路地裏にて、被害者が倒れた状態で発見されました。通報者の医療従事者による情報では、”脈はなく、明らかに死亡している“とのことです。救急隊・警備隊の皆さんは直ちに現場へ向かって下さい』[/大文字]
嘘でしょ先輩。マジかよ。
アイラは愕然とした顔でしばらく固まった後、ハッとして身支度を始めた。
[水平線]
警備隊所有の飛行バイクに乗って現場を見下ろすと、群がる野次馬とそれを抑える救急隊員とで、辺りはかなり騒がしかった。
飛行バイクから飛び降りたアイラは、側にいた救急隊員の男性に話しかけられた。
「おい、アンタ警備隊員か?」
「はい、そうっス」
「……他に隊員は?」
「夜勤中なもんで。恐らく、あたし一人かと」
「そうか……」
「何かあったんっスか?」
「うちの検死官によるとな、今回の死体……多分、フォーミュラの連中によるものらしい」
「え」
「銃で殺されてるんだがな。何だか、狙って殺したような感じじゃあなくて……”道ですれ違って、衝動的に殺した“みたいな銃痕なんだ。急所を狙ってるわけでもなく、かといってわざと外しているわけでもなく……まあ、単にメチャクチャ銃のコントロールが悪い奴かもしれねぇんだが。何せこのあたり、フォーミュラの根城があるって言われてるだろ? だから、フォーミュラの奴が何かの欲求を埋めるために殺したんじゃねえのかってワケよ」
「……」
アイラは黙り込んだ。
フォーミュラについての知識は、人並みにはある。
人外だけで構成された危険極まりない犯罪集団で、警備隊とも幾度も交戦している団体だ。
その戦闘能力は、かなり高いとされている。
運動神経には自信があるが、流石に一人で犯罪集団の人間を追う気にはならない。というか、あたしはまだ入隊1ヶ月目だ。警備隊員の中ではひよっこもひよっこなあたしが、警備隊のベテランたちが手を焼いている犯罪集団に敵うわけがないのだ。
「そうっスね……もう少しで他の警備隊員も出動してくると思うんで、それまで待機して、他の隊員が到着次第犯人の痕跡を追おうと思います」
「その必要はないよ」
驚いて後ろを振り向くと、野次馬の中から一人、こちらに歩み寄る者がいた。
救急隊員たちが必死に野次馬たちを取り押さえているというのに、その間を抜けてスルリとこちらに向かってくる。
その少年は、子供のような顔立ちをしていた。
身長はアイラよりも高かったが、なんとなく顔が幼い。
暗く長い緑の髪の隙間から、青くて丸い瞳がこちらを覗いている。
その少年を見て、さっきまで話していた救急隊の男がえらく慌てた様子で言った。
「こっ、これはこれは警備隊隊長殿、如何なされましたか!?」
「え、隊長!?」
隊長って……この子のこと!?
アイラは首を激しく左右させて、救急隊員と「隊長」と呼ばれた少年を交互に見遣った。
よく見れば、少年の服の胸元に、何やら勲章が付いている。
服装自体は、そこらの野次馬と変わらないシンプルな服なのに。
というか、隊長なのになんで制服着てないんだこの子。
「君は爰川アイラだね? 1ヶ月前に入隊した」
「っえ、はい……よくご存知っスね……」
「隊員の名前は覚えとくでしょ、普通は」
隊員の名前覚えるより先に制服を着ろよ。
アイラは内心ツッコんだ。
いつの間にか、救急隊員は他の救急隊員たちの中に消えていた。
「あの……隊長? でいいんっスかね?」
「うん。僕がエイレネ警備隊隊長……朱雀悠希だよ」
「なぜ隊長がここに?」
「たまたま通りかかったもんだから」
「はあ……?」
「そんなことより、行くよ?」
そう言って隊長は、黒いマントを[漢字]翻[/漢字][ふりがな]ひるがえ[/ふりがな]し歩き出した。
アイラは慌てて後を追った。
「待って下さい! 行くって……どこにっスか?」
隊長は怪訝そうな顔をして、さも当然のことを言うかのような声色で言い放った。
「どこにって……犯人を追いにだよ」