そんな約束を交わした直後、これだ。
ここで死んだら魔王様に申し訳ない。天国にいるあいつも俺のことを馬鹿にするだろう。それはもう、盛大に。
目の前の兵士と睨み合いながら色々考えた挙句、俺は「このままグネグネと策を講じていても、何の意味もない」ということを悟った。つまりは、考えることを諦めたのである。
人生、結局は強行突破しかないのだ。
かくして俺は、リザベルを抱えた手に力を込め、兵士たちが群がる正面に突っ込んで行った。
[水平線]
兵士たちが闇雲に振り回す剣が、体のあちこちを掠める。
走りながら俺は、リザベルを結界魔術で覆うことに成功した。
しかし、流石に自分ごと覆う余裕はない。
耳元でリザベルが[漢字]啜[/漢字][ふりがな]すす[/ふりがな]り泣く声が聞こえたが、慰めている余裕もない。
仮に余裕があったとしても、幼児というものに不慣れな俺では、慰めることなど不可能だろう。
切られながら、とにかく走った。
耳元で響く泣き声を見て見ぬふりしながら、走った。
走った——
[水平線]
「ここまで来たら、もう、大丈夫、かっ………」
ドサリ。
俺はリザベルをゆっくり地面に降ろした後、地面に倒れ込んだ。
ここは、魔国周辺を取り囲む大森林の中。
本来なら強力な魔物が[漢字]蔓延[/漢字][ふりがな]はびこ[/ふりがな]る危険地帯だが、勇者たちが魔国に入ってくる際に壊滅させたのだろう。魔物の気配はなかった。満身創痍の俺の元に、魔物がリザベルを襲いにやってくる危険はない。
そんなことよりも、今は自分の心配だ。
ひとつひとつの傷は浅いが、何せ量が多い。
負荷の重い結界魔術を使い続けたせいか、これだけの傷を完璧に治すだけの魔力はもう残っていなかった。
とりあえず、気休め程度に初級の治癒魔術をかけておくことにする。
上裸になって腹の傷を指差し確認していると、突如耳をつんざくような衝撃が走った。
「びゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
生き残りの魔物が襲ってきたのかと思ったが、違った。
リザベルが、声を張り上げて泣いている。
「っリ、リザベル様?」
「マ゛マ゛、どごいっぢゃっだの……う、うわ゛ぁぁぁぁぁ!!!」
まあ、そうなるか。
そりゃそうだ。幼い子供が、何が何やら分からないうちに親元を離され、見知らぬ男に負ぶわれ、荒れ狂う戦場の中を駆け抜けてきたら、まず正気ではいられないだろう。
しかし、今この状況でこうも大声を出されては困る。
凄く困る。
生き残っている魔物が、いないとは限らないこの状況で……
「ガァァァアアアアアァァァァァ!!!!」
俺は、恐る恐るリザベルの方を向いた。
リザベルは早くも気を取り直したのか、泣き声は号泣ではなく啜り泣き程度にまで抑えられている。
では、この咆哮は一体……?
その時、俺とリザベルのいる場所に、巨大な影が差した。
ここで死んだら魔王様に申し訳ない。天国にいるあいつも俺のことを馬鹿にするだろう。それはもう、盛大に。
目の前の兵士と睨み合いながら色々考えた挙句、俺は「このままグネグネと策を講じていても、何の意味もない」ということを悟った。つまりは、考えることを諦めたのである。
人生、結局は強行突破しかないのだ。
かくして俺は、リザベルを抱えた手に力を込め、兵士たちが群がる正面に突っ込んで行った。
[水平線]
兵士たちが闇雲に振り回す剣が、体のあちこちを掠める。
走りながら俺は、リザベルを結界魔術で覆うことに成功した。
しかし、流石に自分ごと覆う余裕はない。
耳元でリザベルが[漢字]啜[/漢字][ふりがな]すす[/ふりがな]り泣く声が聞こえたが、慰めている余裕もない。
仮に余裕があったとしても、幼児というものに不慣れな俺では、慰めることなど不可能だろう。
切られながら、とにかく走った。
耳元で響く泣き声を見て見ぬふりしながら、走った。
走った——
[水平線]
「ここまで来たら、もう、大丈夫、かっ………」
ドサリ。
俺はリザベルをゆっくり地面に降ろした後、地面に倒れ込んだ。
ここは、魔国周辺を取り囲む大森林の中。
本来なら強力な魔物が[漢字]蔓延[/漢字][ふりがな]はびこ[/ふりがな]る危険地帯だが、勇者たちが魔国に入ってくる際に壊滅させたのだろう。魔物の気配はなかった。満身創痍の俺の元に、魔物がリザベルを襲いにやってくる危険はない。
そんなことよりも、今は自分の心配だ。
ひとつひとつの傷は浅いが、何せ量が多い。
負荷の重い結界魔術を使い続けたせいか、これだけの傷を完璧に治すだけの魔力はもう残っていなかった。
とりあえず、気休め程度に初級の治癒魔術をかけておくことにする。
上裸になって腹の傷を指差し確認していると、突如耳をつんざくような衝撃が走った。
「びゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
生き残りの魔物が襲ってきたのかと思ったが、違った。
リザベルが、声を張り上げて泣いている。
「っリ、リザベル様?」
「マ゛マ゛、どごいっぢゃっだの……う、うわ゛ぁぁぁぁぁ!!!」
まあ、そうなるか。
そりゃそうだ。幼い子供が、何が何やら分からないうちに親元を離され、見知らぬ男に負ぶわれ、荒れ狂う戦場の中を駆け抜けてきたら、まず正気ではいられないだろう。
しかし、今この状況でこうも大声を出されては困る。
凄く困る。
生き残っている魔物が、いないとは限らないこの状況で……
「ガァァァアアアアアァァァァァ!!!!」
俺は、恐る恐るリザベルの方を向いた。
リザベルは早くも気を取り直したのか、泣き声は号泣ではなく啜り泣き程度にまで抑えられている。
では、この咆哮は一体……?
その時、俺とリザベルのいる場所に、巨大な影が差した。