「実は僕今、足をちょっと怪我してるんだ……もし負担じゃなかったら、負ぶってくれないかい?」
二人で迷路のように入り組んだ路地を歩いていると、隊長がいきなりそんなことを言い出した。
見れば確かに、右足を引き摺っている。顔色もかなり悪い。
まあまあ速いスペースで歩いてきたので、少し申し訳ないことをしたかなと思った。
「分かりました」
あたしが隊長に背を向けて屈み込むと、隊長が遠慮なく背中にのしかかってきた。
「ありがとう。うちの警備隊にこんな優しい子がいるなんて……エイレネの将来は安泰だね」
「持ち上げすぎっスよ」
そんなことを言い合いながら、隊長の指示通りに路地を駆けた。
そういえば、なぜ隊長は犯人の居場所を知っているのだろうか。
「隊長、なんでそんなに正確に場所が分かるんっスか? 血痕とかが残ってるわけでもなさそうですし……」
「まあそこは、隊長の勘ってやつだよ、うん。気にしないで」
訊いたあたしが馬鹿だった。
さっき初めて会って、まだ隊長のことはよく分からないけれど、ただの「良い人」じゃないことだけは分かった。こんな質問、そう易々と答えてくれる訳がないのだ。
あたしは隊長に質問を投げかけることを諦めて、黙々と走った。
[水平線]
「た、隊長……足はやっぱりまだ痛むんスか……?」
「うん。申し訳ないけれど、もう少し負ぶっていてくれないかな?」
「……」
正直に言おう。
疲れた。
体力には自信のある方だったのだが、流石に男一人負ぶって走り続けるのは疲れる。
隊長は細身に見えたが、負ぶってみると意外と筋肉質で重かった。俗に言う細マッチョというやつだろうか。
というかマッチョ云々以前に、そもそも隊長の方があたしより身長が高い。自分よりも身長が高い人間を負ぶい続けるのは無理があるというものだ。
「ああ、ごめん。見失った」
「……へ?」
「犯人、見失っちゃったかも」
「……マジすか」
「大マジです」
あたしは途方に暮れて、隊長を負ぶったまま立ち止まった。
[水平線]
「あ」
「今度はどうしたんっスか?」
「一人、こっちに向かってくる……ほら、よく聞いてみてよ。足音がしない?」
「えぇ……?」
困惑しつつ耳を澄ましてみる。
ダッダッダッダッダッダッダッダ……
その瞬間、あたしは後ろに引っ張られた。
どうやら隊長があたしの背中から飛び降り、あたしの襟元を掴んで後ろに下げたらしい。
「グルルゥゥウウゥ……」
そして私の目の前には、幾つもの猛獣を組み合わせたキメラのような怪物が、前傾姿勢でこちらを睨んでいた。
二人で迷路のように入り組んだ路地を歩いていると、隊長がいきなりそんなことを言い出した。
見れば確かに、右足を引き摺っている。顔色もかなり悪い。
まあまあ速いスペースで歩いてきたので、少し申し訳ないことをしたかなと思った。
「分かりました」
あたしが隊長に背を向けて屈み込むと、隊長が遠慮なく背中にのしかかってきた。
「ありがとう。うちの警備隊にこんな優しい子がいるなんて……エイレネの将来は安泰だね」
「持ち上げすぎっスよ」
そんなことを言い合いながら、隊長の指示通りに路地を駆けた。
そういえば、なぜ隊長は犯人の居場所を知っているのだろうか。
「隊長、なんでそんなに正確に場所が分かるんっスか? 血痕とかが残ってるわけでもなさそうですし……」
「まあそこは、隊長の勘ってやつだよ、うん。気にしないで」
訊いたあたしが馬鹿だった。
さっき初めて会って、まだ隊長のことはよく分からないけれど、ただの「良い人」じゃないことだけは分かった。こんな質問、そう易々と答えてくれる訳がないのだ。
あたしは隊長に質問を投げかけることを諦めて、黙々と走った。
[水平線]
「た、隊長……足はやっぱりまだ痛むんスか……?」
「うん。申し訳ないけれど、もう少し負ぶっていてくれないかな?」
「……」
正直に言おう。
疲れた。
体力には自信のある方だったのだが、流石に男一人負ぶって走り続けるのは疲れる。
隊長は細身に見えたが、負ぶってみると意外と筋肉質で重かった。俗に言う細マッチョというやつだろうか。
というかマッチョ云々以前に、そもそも隊長の方があたしより身長が高い。自分よりも身長が高い人間を負ぶい続けるのは無理があるというものだ。
「ああ、ごめん。見失った」
「……へ?」
「犯人、見失っちゃったかも」
「……マジすか」
「大マジです」
あたしは途方に暮れて、隊長を負ぶったまま立ち止まった。
[水平線]
「あ」
「今度はどうしたんっスか?」
「一人、こっちに向かってくる……ほら、よく聞いてみてよ。足音がしない?」
「えぇ……?」
困惑しつつ耳を澄ましてみる。
ダッダッダッダッダッダッダッダ……
その瞬間、あたしは後ろに引っ張られた。
どうやら隊長があたしの背中から飛び降り、あたしの襟元を掴んで後ろに下げたらしい。
「グルルゥゥウウゥ……」
そして私の目の前には、幾つもの猛獣を組み合わせたキメラのような怪物が、前傾姿勢でこちらを睨んでいた。