ぷす、ぷすり…
黒いすすが、廊下を歩くケイトの頭上にくゆっていた。
彼女は今まで図書室にいたのである。少し調べたいことがあって本を探していたのだが、そこに自称・ケイトの婚約者であるジョン・シャドーがあらわれたため、少々厄介なことになってしまった。
彼は同い年であるケイトに熱を上げているのだが、その絡み方が少し…いや、だいぶうざったい。
ただ本人に全く悪気はなく、そう厳しく拒絶するわけにもいかないがために、彼の存在は余計にケイトの癪に障る。
そういうわけで、不機嫌な感情の証である“すす”は、とめどとなく彼女の頭上からゆっくり立ち上っているのであった。
ケイトの部屋に、重厚な扉の音が響いた。
静かな…いや、やけに静かすぎる室内に、ケイトはその表情のわからない真っ黒な顔の上で、怪訝そうに眉をひそめた。
「エミリコ?いるの?」
いつもの静かな声を少し張って、ケイトは部屋の奥に向かってそう呼びかける。
するとすぐに「わわっ!いますいます!少し待っていてください!」と、慌てたような返事が返ってきた。
「…後ろ手に持っているのは、何?」
奥の方から出てきたエミリコは、清潔なエプロンを掛けた服から伸びた腕にバケツをひっかけたまま、その手を何かを隠すように後ろで組んでいる。
「あ…あのぉ…」
エミリコが、定まらない視線を彷徨わせた。
ケイトのすすが、少し揺らぎながらくすぶっていた。
黒いすすが、廊下を歩くケイトの頭上にくゆっていた。
彼女は今まで図書室にいたのである。少し調べたいことがあって本を探していたのだが、そこに自称・ケイトの婚約者であるジョン・シャドーがあらわれたため、少々厄介なことになってしまった。
彼は同い年であるケイトに熱を上げているのだが、その絡み方が少し…いや、だいぶうざったい。
ただ本人に全く悪気はなく、そう厳しく拒絶するわけにもいかないがために、彼の存在は余計にケイトの癪に障る。
そういうわけで、不機嫌な感情の証である“すす”は、とめどとなく彼女の頭上からゆっくり立ち上っているのであった。
ケイトの部屋に、重厚な扉の音が響いた。
静かな…いや、やけに静かすぎる室内に、ケイトはその表情のわからない真っ黒な顔の上で、怪訝そうに眉をひそめた。
「エミリコ?いるの?」
いつもの静かな声を少し張って、ケイトは部屋の奥に向かってそう呼びかける。
するとすぐに「わわっ!いますいます!少し待っていてください!」と、慌てたような返事が返ってきた。
「…後ろ手に持っているのは、何?」
奥の方から出てきたエミリコは、清潔なエプロンを掛けた服から伸びた腕にバケツをひっかけたまま、その手を何かを隠すように後ろで組んでいる。
「あ…あのぉ…」
エミリコが、定まらない視線を彷徨わせた。
ケイトのすすが、少し揺らぎながらくすぶっていた。