「…どうしましょう」
主であるケイトは外出中。優美な家具や調度品の並ぶ高貴な部屋の、大きなクローゼットの前で、
……掃除をしていた「生き人形」エミリコは、へたり込んでうなだれていた。
ここは、「顔のない一族」の暮らす貴族の館、“シャドーハウス”。
「[漢字]御影様[/漢字][ふりがな]おかげさま[/ふりがな]」と呼ばれる彼らは文字通り全身がすすのように真っ黒であり、そんな貴族たちにはそれぞれ、いわば「顔がわり」兼使用人である“生き人形”がひとりずつ仕えている。
この部屋の主であるケイト・シャドーは、一族の娘のひとり。まだ幼いながら非常に聡明な少女である。当然、彼女に仕える生き人形・エミリコも、そんなケイトを敬愛していた。
「ケイト様が特に気に入っていらしたお洋服だったのに…」
エミリコは小さく、その落ち着いた色合いの美しいドレスを胸に抱き寄せた。
ブロンドのハーフツインテールと白いリボンが揺れる。赤らんで歪んだ童顔に浮かんだ涙でにじんだ視界に、クローゼットの木目だけがやけにはっきりと見えた。
エミリコは、先ほど棚の上の掃除をしている際、床にあったホウキにつまずいてころんだ拍子に、掛けてあったドレスを破いてしまったのである。
主であるケイトは外出中。優美な家具や調度品の並ぶ高貴な部屋の、大きなクローゼットの前で、
……掃除をしていた「生き人形」エミリコは、へたり込んでうなだれていた。
ここは、「顔のない一族」の暮らす貴族の館、“シャドーハウス”。
「[漢字]御影様[/漢字][ふりがな]おかげさま[/ふりがな]」と呼ばれる彼らは文字通り全身がすすのように真っ黒であり、そんな貴族たちにはそれぞれ、いわば「顔がわり」兼使用人である“生き人形”がひとりずつ仕えている。
この部屋の主であるケイト・シャドーは、一族の娘のひとり。まだ幼いながら非常に聡明な少女である。当然、彼女に仕える生き人形・エミリコも、そんなケイトを敬愛していた。
「ケイト様が特に気に入っていらしたお洋服だったのに…」
エミリコは小さく、その落ち着いた色合いの美しいドレスを胸に抱き寄せた。
ブロンドのハーフツインテールと白いリボンが揺れる。赤らんで歪んだ童顔に浮かんだ涙でにじんだ視界に、クローゼットの木目だけがやけにはっきりと見えた。
エミリコは、先ほど棚の上の掃除をしている際、床にあったホウキにつまずいてころんだ拍子に、掛けてあったドレスを破いてしまったのである。